夢を追う彼女とその後を追う俺

御厨カイト

夢を追う彼女とその後を追う俺


「はぁ、すげえなアイツは……」


俺はテレビの画面を見ながらそんなことを呟く。



テレビに映っているのは秋に行われるとても大きなファッションショー。

別に俺はファッションとかに興味があるわけではないのだが、俺の彼女がそのファッションショーでモデルとして出るらしい。

だから俺は彼女の番が来るのを今か今かと待っている。



このファッションショーでモデルとして出ると決まった時の彼女の顔は忘れられない。

あの電話をもらった時の顔は未だに。


元々読モとして活動していた彼女。

そこからちゃんとしたモデルとして頑張りたいと言って、色々なところのオーディションを受けていた。

読モとしてやっていた経験もあったからかすぐ色々な雑誌でモデルとして活躍し始めた。


色々な仕事をして忙しそうな彼女だったが本人はそれで満足していないようで、「あの有名な○○のファッションショーにモデルとして歩くんだ!」とすごく息巻いていたことを覚えている。

それでオーディションを受けた結果、こうなったという訳だ。



彼氏ながらもとてもすごいなと思う。

ホント彼女が俺なんかに告ってきたのが不思議なくらいに。


彼女と出会ったのは確か大学2年の時。

その時彼女は大学1年で、読モとして有名であったからか入学当初からすごく人気があった。

常に彼女の周りには人がいる感じだった。


と言ってもファッションとかモデルにまったくの興味が無かった俺は全くと言って彼女に靡かなかった。

友人が「あの子可愛いよな。」と言っても「ふーん……」という感じ。


だけど何が理由かでそうなったかは覚えていないが、二人で話す機会があったんだ。

と言ってもほんの10分ぐらいだったけど。


でも話した印象は何と言うか高飛車な感じじゃなくて、とても丁寧だった感じだったことを覚えている。

まぁ、初対面の人と話すわけだから当たり前だと思うけどね。


それに話すのも楽しかった。

自分がおしゃべりなだけあって引かれるかと思ったが、凄く相打つとかも打ってくれて話しやすかった。

アニメとか漫画の話も通じるようでそこも好印象。


そんな感じで今まで興味ないと思っていた彼女のことが少し気になるようになっていった。

だけどそれは向こうもそうだったようで良く話しかけてくれるようになった。


そして、ある日彼女から告白されて今に至る。


なかなか付き合うまでが早かったがそれでも今の今まで続いているのだから相性が良かったのだろう。


そんなことを思っていると、とうとう彼女の番が来た。

今年のトレンドとか言う服装を着て、ステージ上をキリッとした顔で歩く。

……なんだかいつもの彼女とは違う表情でドキッとする。

それに夢を叶えてるという感じを見ていて感じる。


………自分も負けてらんねえな。

確かに夢を叶えたという点では彼女に先を越されてしまったが俺も別に諦めたわけじゃない。


それに彼女が出来たんだ。

彼氏である俺が出来なくてどうする。




………それに夢を叶えてからって決めただろう。

彼女にプロポーズするのは。



「やんねえとな」


俺はキラキラと輝いているように見える彼女を見ながら、仕事道具であるカメラを磨き、そう呟いた。










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