*第96話 諸行無常
「くそっ!なんて奴らだ!」
まさか退却する羽目になるとは思わなかった。
圧倒的な戦力でダモンの城を攻め落とす筈であった。
あの男だ!
カルアンの接近戦で戦況が変わり、その撃墜から戦局が傾いてしまった。
エルサーシアの娘たちが狂った様に大魔法を連発した。
防ぎ切れずに戦乙女の大半が消滅した。
巻き添えを食った兵士数万が灰になった。
凄まじい破壊力だった。
「あれが本物の聖女の力なのか・・・」
やはり作り物では歯が立たないのか?
このままでは戦線を維持する事が出来ない。
援軍を要請しても到着までに数週間は掛かる。
「間に合うか?どうする?どうすれば良い!」
「ここで死ねば宜しいのですわ。」
「誰だ!今なんと申した!無礼者!」
「ご機嫌
「おっ!お前は~!」
大聖女なのか?
でもその恰好は?
そのでかいリボンは何だ?
ロンミルの頭は疑問に支配された。
「はぁ~もう面倒くさいですわ。」
「な!に?」
「『
呪文を唱え終わると同時に霧と成ってロンミルは消滅した。
存在を消去されたのだ。
降り注ぐのは雨では無い。
雷撃の嵐。
無数の破裂音は重なり、混ざり合い、その空間を満たす振動は、
最早、音であると認識する事が困難である。
「終わったかしら?ルルナ。」
「えぇ、終わりましたよ、サーシア。」
「ではバルドーへ参りましょう。」
「オバルトは後回しで良いのですか?」
「えぇ、最後で良いわ。」
ゲートを開きバルドー帝国の帝都上空に移動する。
「『
何の警告も無く、いきなり大魔法の発動。
目に映る範囲の全ての物質が結合を維持する事が出来ずに
細かい
生物も非生物も等しく風に舞った。
挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16818093076472570960
「初めて見ましたよ。」
「何を?」
「サーシアが本気で怒っている所。」
「あら?私は怒っているのかしら?」
「えぇ、そうと自覚の出来ないくらいに。」
「そう・・・」
「次はキーレントですね。」
かの地には王太子ウイリアムが居る。
「いいえ、キーレントはフリーデル閣下にお任せしますわ。」
「あぁ、なるほど。ではオバルトですか?」
「今日はもう疲れたわ。明日にしましょう。」
「どうせなら近い方が良いでしょう。王都のレイサン邸へ行きましょうか?」
「そうね・・・そうするわルルナ。」
レイサン邸に到着したエルサーシアはそのまま寝込んでしまった。
無理をし過ぎたのだ。
***
ダモン討伐軍の全滅。
バルドー帝国の帝都壊滅と王朝の消失。
それが大聖女たった一人によって為された。
世界は恐怖した。
各国は一斉にダモンを支持し、オバルト王国に絶縁を通知して来た。
王国元老院はナコルキンの王座を剥奪し、王位は当面の間、空位とした。
離宮の一つに
最終的な処分はエルサーシアにお伺いを立ててからと相成った。
ウイリアムもまた王太子を廃されて、別の離宮に軟禁されている。
元老院の代表がエルサーシアと面会する事が出来たのは夏の終わり。
降節も間近になってからであった。
「如何で御座いましょうか?」
元老院としては、ナコルキンはこのまま離宮で生涯を終え、
孫カイザルの成長を待って王位に付ける案を提案した。
「彼らには死んで頂きますわ。私が致しますから、どうぞお構いなく。」
「そ!それは!
「あら?どうしてかしら?カルアンが死んだのよ?」
そう、この私から愛しい人を奪ったのだ。
生かして置ける筈が無いではないか。
「お母様、お話が有ります。」
リコアリーゼが看病の為に来ている。
「なぁに?アリーゼ。」
「もう許してあげて下さいませ。」
「あら?どうして?」
「ビリジアンヌ様に命乞いをされました。
あまりにもお泣きになられるので、
つい、引き受けてしまいましたの。」
相変わらずリコアリーゼはお人好し・・・
でも今回ばかりは駄目だよアリーゼ。
いくら娘に甘々のサーシアでも、
必殺の”娘のお願い”も効かないよ~
「そう、仕方が無いわね。宜しいでしょう。
もう終わりに致しましょう。」
効くんかぁ~~~い!
後にダモン事変と称される一大事は、こうして終結した。
第三部 激動編 完
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