*第74話 海外公演でおます

「デカシーランドですかいな?」

「えぇ、そうよ。」

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16818023213347022828


デカシーランドっちゅうのんは、ジンムーラ大陸の

いっちゃん南の端っこにありますねん。


22年前までバルドー帝国の植民地でしたんやけど、

独立して共和国になりましてん。

この世界で唯一の民主国家やそうですわ。


ウチのお母ちゃんの故郷ですねん。

ちゅうても行った事おませんけど。


なんでも七つの州の代表が連邦政府たらで合議して

国を動かしとるそうですわ。

ほいで国王の代わりに大統領がおる。


どっかで聞いた話やなぁ思たら、前世のメリケン国がそうでしたわ。

ペリーはんのお国ですな。


「大統領からの招待なのよ。

お姉様方はあまり乗り気では無いのだけれど、

陛下からのお口添えだから断れないわね。」


「そいでサラーラ様に白羽しらはの矢っちゅうわけですかいな。」

「そう言う事よ。」


コブシ歌劇団にはトップスターの所属する百合組と、

新人で構成された鈴蘭組がおます。

全員が貴族のお嬢様ですわ。


しかも二百年以上続く家柄やないと入れまへん。

伝統と格式を重んじますねん。

せやさかい外国で公演するんはその国の王室から招待が有った時ですねん。


大統領っちゅうても平民でっしゃろ?

誰に向かって言うとんねんワレぇ!

てなもんですわ。


ところがぁ~や!


去年の夏に王太子のナコルキン殿下が即位しましてん。

先代王が高齢でドンならんくなってしもて譲位しはったんですわ。

そん時に王冠を新調しましてんけど、それに飾る宝石を

デカシーランドが献上したんですわ。


目ん玉くらいデカいギヤマンダイヤモンドですわ。

出ますねん、あそこは。

エッグぃのんが。


そらもうナコやん大喜びですわ。

ルビーやらサファイヤやらでギラギラしとる、

そのど真ん中にバチコ~ンっと嵌めて戴冠式ですわいなぁ。


大統領も招待してましたわ。

ネイサン・パレットたら言うてましたな。

お母ちゃんの知り合いやねんて。

レジスタンス時代の同士やったそうですわ。


「あの根暗の策士さくしが大統領やで。世の中どう転ぶや判らんわ。」


お母ちゃん曰く。

何を考えてけつかるか判らんっちゅう事ですわ。

噂ではえらい独裁政権やっちゅう話でっせ。

あっちゃこっちゃで暴動が起きとる言うやおまへんか。

そんなとこで公演なんか出来まんのかいな?


さすがに百合組の派遣なんて出来まへんがな。

ほいで鈴蘭組におはちが回って来たっちゅうわけですわ。


え?

大丈夫かやて?


なぁ~~~んも心配いりまへん。

なんせ今の鈴蘭組には聖女が二人とそれを護衛する聖人が二人居てますねん。


聖女は、まずサラーラ様でっしゃろ。

ほいでエイミーはん。

護衛はウチと、もう一人は兄ちゃんですわ。


国の一つや二つ、ドォ~ンのバァ~ンでギャァ~ン言わしたりますがな!


言い忘れてましてんけど、エイミーはんも歌劇団に入りましてん。

エイミーはんはサラーラ様にベッタリで、もうまるで恋人同士みたいですわ。


いや、ひょっとしたらホンマに・・・

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