*第68話 さな子

山梨県甲府市にある清運寺せいうんじと言うお寺に、千葉さな子の墓は在る。

墓石に掘られた「坂本龍馬室」の文字。


実際には婚約までしていたのに捨てられた。

龍馬の妻となったのは、おりょうだった。

龍馬は女癖の悪い男だったのだ。


それでも龍馬を思い続けて独身のまま生涯を終えた。


北辰一刀流ほくしんいっとうりゅう免許皆伝。

恋と剣術に萌えた人生であった。


***


「と、言うわけでおます。」

場所を室内に移してサナの告白を聞いた。


「どうして言わなかったの?」

「いやまさか他にもいてはるなんて思わんかったさかい。

その・・・言うのが怖わ~て。」


だよねぇ~

気が触れたと思われるよね~


「まぁ、ウチも師匠が違う世界から来はったて聞いたんは2年前やさかいなぁ。」


そう言えば教えて無かったな~

まぁ、シモーヌになら知られても大丈夫だな!

って事で、転生者であると打ち明けたのが2年前。


大して驚きもせず、

「へぇ、そうですかいな。」

さもありなんと世間話の様に聞いていた。

非常識には慣れてしまったシモーヌである。


「違う世界から来たのでは無いわよ。

前世の記憶を持って生まれて来たのよ。」


「似たようなもんですがな。」


「ウ、ウチはお母ちゃんの子やで!」

「当たり前やがな、ウチが産んだんやさかい。」


目が覚めたら異世界だった。

思えば寂しい人生だった。


(もう女たらしはこりごりだ!今度こそ素敵な恋をするぞっ!)

心に誓うサナであった。


「それにしても幕末の時代の人よね?」

「ライブラリからロードしたのでしょう。

適性の有る人物のデータは保存してますから。」


「連絡は来なかったの?精霊新聞は?」

「あれは事後報告ですからねぇ。まぁ、理由は推測できますけれど。」


この世界に聖女の居る事が、今では当たり前になっている。

少しずつ系統を増やしても良い段階に入ったのであろう。

また系統が増える事で、近親交配を回避する利点もある。


「なるほどねぇ、じゃぁ行きましょうか。」

「へ?何所へですのん?」

「モスクピルナスよ。」


「何しに行きますのん?」

「精霊契約をするのよ。」

「誰がですのん?」


「サナに決まっているでしょう?」


***


「ト!」

「と?」

「ト!ト!ト!」

「???」


「トモッ!トモッ!トモエちゃんでぇ~っす!」

オサムちゃんみたいな奴が出た!

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16818023212489471186


手甲脚絆てっこうきゃはん胴鎧どうよろい

長い薙刀なぎなたを振りかざし、勇ましいけど何故かミニ!


だって精霊だもの・・・


「誰?」

「多分ですけれど、巴御前ともえごぜんじゃないですかね。」

「和風で攻めて来たわね。」


「ワフ~って何ですのん?」

「前世の私が暮らしていた国の風俗よ。」

「パンチラせなあきまへんのでっか?」

「えぇ、そうよ。」


そんなわけあるかいっ!


どっせぇ~い!おりゃぁ~!ブンッ!ブンッ!ブンッ!

清盛はどこじゃぁ~~~!グルグルグルビュン!

出てこぉ~~~い!ブンッ!ブンッ!ブンッ!ブンッ


様子が変ですわね。義仲様ぁ~~~

実在の人物をコピーしたから記憶の一部が義仲様はいずこに居わしめすかや~~~

受け継がれたのかも知れませんね。ワラワは此処に居りまする~~~


「トモエちゃんでぇ~~~っす!」

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