第三章 揺れる天秤
*第66話 お父様
デーデルン大公国の東部沿岸から船で半日沖へ向かった所に、
断崖絶壁に囲まれた孤島が在る。
唯一の船着き場には監視塔が
島の出入りは厳重に管理されている。
ここは監獄島ナイカトラズ。
入ったが最後、死んでも出る事は叶わない。
<ひゃひゃひゃ!暗いのぉ~>
<かび臭いよ~>
「うふふふふ。まったく予想外だね。うふっ!」
それは突然の事だった。
研究所にデーデルン軍の兵士が数十人で押しかけて来た。
有無も言わさずにカヒを捕らえそしてこの監獄島に収監したのだ。
<年寄りには酷じゃわぃ、ふぉふぉふぉ。>
「うふふ、ドルフが来たら待遇改善を要求しないといけないね。」
<泣かないでねカヒ。>
「大丈夫だよ、ソイラン。泣かないよ。うふふ。」
地下牢の壁にカヒの声だけが跳ね返る。
「ま~た独り言げな、気色悪かね~」
「頭いかれちょるごたるけん。」
当然だが監視兵の二人にはデコー老人とソイランの声は聞こえない。
「
何べん言わせると!ほんなごとしぇからしかぁ!」
鉄の扉を警棒で叩きながら監視兵が怒鳴りつけた。
挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16818023212341461681
「おや、それは済まなかったね。気を付けるよ、うふふふふふふ。」
<ひゃひゃ、気の短い奴らじゃのぉ。>
<怒られちゃったね、カヒ。>
(なぁに、構わないさ。)
***
何所へ行ったのか?と散々に探し廻り、どうやら大聖女の所に居るらしいと
報告を受けてデーデルン大公ドルフはブチッと切れた!
「なんばしよ~とや!あの馬鹿ちんがぁ!もう甘い顔はせんたい!
ぼてくりこかしちゃるけん!」
直ぐ様にカヒを捕らえる様に命じて姉妹が戻って来るのを待つ事にした。
「情の深かおなごやけん、よう見捨てらんめぇもん。」
彼女達はエルサーシア同様に身内に対する愛情が非常に強い性質をしている。
若草姉妹が制御不能である事に
姉妹が親として慕っているカヒを人質にして、
彼女達を命令に従わせようと考えた。
***
「ねぇ、そろそろ帰らないとお父様に叱られるんじゃない?」
やっと気が付いたかな?
「そうねぇ、一度、帰りましょうか?」
「今度はお父様も連れて来ましょう!」
いやぁ~それはちょっと・・・
「それが良いわ!」
だからそれは駄目だってぇ~
「今の内におしっこ済ませなさい、エイミー。」
「はぁ~い!」
ちょっと里帰りのつもりだった。
出来れば父親も連れて来て、みんなで仲良く此処で暮らせば
それが一番良いと思った。
若草の姉妹はそれきり戻っては来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます