*第50話 シオンの答え

「ジオンンン・・・殺じでげろ~~~~」


まだ心が残っている内に・・・

涙が流れている間に・・・


「そうですか。では死なせてあげましょう。」

ルルナが指先を向ける。


「待でけろ!ルルナ様!待でけろ!

お願ぇだぁ!殺さねでけろ~~~!」

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330668509787102


ジャンゴをかばい立ちふさがるシオンに言い聞かせるようにルルナは言う。


「かなりの量のテロポンを打たれています。

生きながらえたとしても、酷い後遺症に苦しむ事になりますよ?」


まともな日常生活が出来るかどうか。


「だども、だども生ぎで欲すだよぉ!」

「ジオンンン、まいねじゃぁ~もうまいねじゃぁ~。」

「ジャンゴ~!そったらへずねごと言わねでけろやぁ~!」


堪らずジャンゴに抱き着いた。

二人して崩れ落ちる。


「が、堪忍ずでげろ~ジオンンン。」

「えがね、もうえがね。」

「オ、オダァ~、オダァ~」

「オラが側さ付えで世話すだよぉ。」

「ジオンンン~~~」


「許してあげてルルナ。お願いよ。」

構えたままの指先を、そっと包み込む。

「はぁ~・・・アリーゼのお願いなら 仕方が無いですねぇ。」


ルルナ姉さぁ~ん!捕まえたよぉ~!離せ~~~!ワシは公爵じゃぞぉ~~~!


ハニーがクビーラ公爵を逆さ吊りで連行して来た。

もちろん伝統の亀甲縛りで。


地面に放り投げる。ポイッ!ドサッ!

「ウゴッ!」


「貴方のせいでカップにひびが入りましたよ。」

「な!何の事じゃ!」

「新しい注文も受けて貰えないし。」

「何を言っている!」


「万死に値すると言っているのですよ。」


お前如きの命などロイペの茶器に比べたら

塵芥ちりあくたほどの価値も無いのだ!


「選ばせてあげましょう。私の最大限の譲歩です。

少しでも長く生きていられる様にゆっくりと殺して欲しいですか?

それとも一瞬で死にたいですか?」


「死にたく無い!死にたく無い!死にたく無い~~~~~!」


「それは聞けませんね。何事にもけじめは必要なのですよ。」

「テロポンからは手を引く!知っている事は全部話す!」

「テロポンなど、どうでも良いのですよ。」


そう!勘違いしてはいけない。

ルルナは正義を執行する為に来たのでは無い!


「トキシラズと呉須ごすが品切れなのです!」

100%私情だ!


「だから何の話だ!」

「トキシラズと呉須だと言っているでしょう?

頭が悪いのですか?馬鹿なのですか?」


「いや、それは解っている!ワシに何の関係があるのだっ!」

あぁ~逆なでしちゃったぁ~


電撃一閃バシィッ!

太腿に穴が開く。


「ぎゃぁぁぁ~~~!!!」


ビクンビクンと地べたを跳ねる。


「さっきのは取り消します。じっくりとなぶり殺しです。」

「ま!待ってくれ!

トキシラズも呉須も普通に買えるじゃないか!」


「え?」


「なんならワシが買ってやる!いくらでも買ってやるからぁ~!

助けてくれぇ~~~~~」


「今なんと言いましたか?」

「ワシが買ってやる!」

「その前ですよ!」

「普通に売っている!」


そうなのだ!

輸入が停止されているだけで、コイントに来れば簡単に手に入る。

今回のようにゲートを使って、さっと来て買って、

さっと帰れば済む事だ。


気が付かなかったよぉ~ん


「あぁ~・・・こほんっ!話を聞きましょう?」

「と!取引をしようではないか!」

「ほぉ~どんな?」

「ワシはあちこちに顔が利く。トキシラズだろうが呉須だろうが、

コイントの物なら最高級の品を用意できる。

なんでも言ってくれ!」


「いいでしょう、それで許してあげます。

ウーグス谷からも手を引きなさい、

今日からこの谷は私の庇護下に入ります。」


「承知した!」


********


それから数日して山の様に積まれた貢物みつぎものを乗せた荷馬車が

ゲートをくぐった。

ジャンゴを始めとした谷の中毒患者は教会の療養所に入院させた。

一旦は回復しても生涯に渡りリハビリを続けなければならない。

断続的にフラッシュバックが来るのだ。


シオンはジャンゴを支え、共にウーグス谷を復興させると決めた。


「そう、貴方はその道を選ぶのね。

困った時は遠慮しないで私達に甘えなさい、貴方はもう身内よ。」

「サーシア様!」

「でも精霊院はちゃんと卒業なさいな。」

「わがたす。」


谷はレイサン家の支援を受けて復興中だ。

クビーラ公爵も協力をしている。


「お茶にしましょう、ルルナ。」

「えぇ。」

「安物のお茶器でも良くてよ?」


それなら割れても気にしないし。


「私のサーシアに安物なんか使わせられませんよ。」

「まぁ、私のルルナったらぁ~」


とっても仲の良い二人である。

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