*第49話 誰も寝てはならぬ!

十二支精霊を総動員して調査した結果、

九か所の栽培施設と一か所の精製工場が見つかった。


その殆どがクビーラ公爵の領地内にある。

カヒの協力者は彼に間違いないだろう。

それだけ判れば充分だ。


ただ・・・


「ウーグス谷が・・・」

まさかそんな・・・

シオンは絶句してしまった。


追われて逃げたとは言え、生まれ故郷は懐かしい。

仲の良かった友達も居る。

谷が嫌で出たのではないのだ。


「ルルナ様!オラも!オラもでってけろ!」

「覚悟は出来ていますか?事と次第では谷を焼き払いますよ?」


「えがねし。」

良い筈が無い。

しかし自分の知らない内に谷が焼かれるのは嫌だ。


「私も行きますわよ。」

「アリーゼ様!」

「お友達ですもの、放っては置けないわ。」


(いざと言う時は私がルルナを止めてあげる)

そっと耳打ちして呉れた。


出来るなら救いたい。


谷を。

あの人を。


********


「閣下!またやられました!」

「閣下!もう駄目です!」

側近のピンポとコパンが悲鳴を上げる。

昨日と今日で四か所の施設が破壊された。


まずい!

此処に居たら殺される!

精製工場は領都に在る。

来るに決まっている。


「当座の資金だけで良い!早く積み込むのだ!」


証拠など見つからない筈だと高をくくっていた。

知らぬ存ぜぬを通せば良いと。


甘かった!


奴らにはそんなもの通用しない。

疑われた時点で有罪なのだと、ようやく気が付いた。


密輸がバレてからまだ一週間だぞ!

なんで此処まで来る?

早過ぎる!

裏切り者でもいるのか?


「閣下!準備が出来ました!」

「すぐに出発だ!」

「ど、何所へ参りましょう?」

「ウーグス谷だ!あそこへ行け!」


あの施設はまだ収穫が始まっていない。

見つかってはいないだろう。

奴らが帰るまで隠れていよう。


甘ぁ~~~~~~い!

知ってるよぉ~~ん!


「カヒめ!こうなると分かっておったな!」

密輸が露見ろけんしたとの一報が入ると、しれっとバルドーに帰って行った。

”情報を収集する”とかなんとか言いながら。


ワシは公爵だぞっ!

くそっ!

領地軍はあっと言う間に壊滅した。

幾百幾千の雷撃が兵を襲ったと言う。


間違いない、精霊王だ!

竜巻は無かったようだから、大聖女は来ていないのだろう。

揃っていたら兵だけで無く、街が消し飛んでいた所だ。

とにかく逃げろ!


ウーグス谷へと逃げ込んだクビーラ公爵は、

男衆を集めて奥山の施設にこもった。

そして彼らにテロポンを使った。


「良いな!しっかりと見張るのだぞ!

昼も夜もだ!誰も寝てはならぬ!」


*******


3日目の朝。

見張りの者が空を指さした。

朝焼けの光の中に浮かぶ影は・・・


二体の鋼鉄の化け物だった!


シュコォ~~~う、うだるぅ~~~

シュコォ~~~シュコォ~~~さすがにこの季節では熱いわね

シュコォ~~~なすて着るだべが?

シュココココォ~~~いやぁカッコ良いかなぁ~って

シュコシュコォ~~~はんかくせだやぁ~~~


「気が済みましたか?さっさと降りて脱いで下さい。」


シュココォ~分かったわよ

シュコんだす


着地してドスンッ!

倒れた・・・グワッシャァ~ン!


シュココココォ~~~お願い脱がして~~~

シュコシュコォ~~~助けてけろ~~~


「あははは!前と一緒だぁ~!」

「アリーゼって馬鹿なの?」


ハニーは実に楽しそうに笑い、サリーちゃんは呆れている。

手早く潜水服を解体して二人を引きずり出す。


「ふわぁ~」

「えやぁ~まいねまいね。」


「あはっ!見て見てぇ!変なのがきたよぉ~」


見張りの内の一人が近づいて来る。

真っ赤に血走った目で、

全身をぶるぶると震わせている。

あれは?まさか?


「ジ・・・ジオンンン~」


「ジャンゴ・・・

 おさ・・・

 おさ・・・

 どすたべがぁ~?」

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330668448773213


「ご・・・ごろず・で・げろ~」

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