*第38話 後を継ぐ者たち

「ルイスール閣下の差し金ですわね。」


オバルト王国元老院議員ルイスール・ターラム大公。

改革派の中心人物として大きな発言力を持つ。


「そうなんだ、私は新参者だから断り辛くてね。」

フリーデルも新設の大公家当主として元老院の一員である。


彼らは賭け事をする為に集まったのでは無い。

あれはついでの余興だ。

本題は元老院がフリーデルに下した密命である。


「御免なさいねサーシア。」

申し訳なさそうにタチアーナが詫びる。

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330667555166328


「気にしないでチャーミィ。

私もそろそろ頃合ころあいだと思っていたの。」


各国に出回って被害が拡大しつつあるテロポン。

その出所がカーラン王国である事が確定した。

だがそこからが問題だ。


相手がマフィアや麻薬カルテルならば合法的に協力を求め、

壊滅作戦を実行すれば良い。

しかし今回は王国自体が主犯なのだ。


表立って動けば国際問題になる。

ややもすれば戦争になってしまうだろう。

それは避けたい。

しかし放っては置けない。


「で、私になんとかして欲しいのね。」

聖女、特に大聖女エルサーシアは治外法権の権化だ。

誰も文句が言えない。

制御不能の自然災害として扱われる。


「直接に頼むのが怖いからデルに押し付けたのよ!」

チャーミィが子供みたいに膨れっ面をする。

「頼りにされていると思えば良いじゃないか。」

大人だなぁ~フリーデルは。

あの馬鹿王子が立派に成長したなぁ~


「私は面倒臭い事は嫌いよ。」

そう、エルサーシアが動くと言う事は単純に破壊すると言う事だ。


「もちろん分かっているよ。存分に暴れて構わないそうだよ。」

それを期待されているのだよ。


「そうでは無いの。そろそろ後進に道を譲ろうと思うの。」

おやまぁ!引退宣言か?


「アリーゼに?」

「えぇ、あの子なら大丈夫よ。」


リコアリーゼは七歳で初陣を飾った。

帝国軍の戦艦を撃沈しまくった。

実績は申し分ない。


「シモーヌ、アリーゼとシオンを呼んで来て頂戴な。」

「シオンも呼びますのん?」

「えぇ、お願いね。」


「シオンは普通の女の子よ?」

「いいえチャーミィ。あの子はもうレイサン家の人間よ。」


聖女一家と関りのある人物。

世間はそういう目で彼女を見る。

利用しようと近づく者は多いだろう。


自分の身を守れる力を持たなければ荒波の中で溺れてしまう。

レイサン家の一員として、ひ弱なままで居る事は許されない。


「師匠~!呼んで来ましたでぇ~」

リコアリーゼ、シオン、そしてシモーヌの息子リョーマンも居る。


「あら、リョーマンは呼んでいないわよ?」

「それなんですけどね師匠。

ウチもそろそろ引退しよか思てますねん。」

「あら!そうなの?」


「へぇ、実はそのぉ~二人目が~」

「まぁ!おめでたですの?」

「恥ずかしながらぁ~えへへへ。」


リョーマンは御庭衆頭マイクの息子として

物心の付いた頃から訓練を受けている。

精霊との親和性も高く、精霊言語も堪能たんのうだ。

まだ9歳ではあるが戦闘力は充分だ。


「大丈夫かしら?リョーマン。」

「ええ仕事しまっせ!師匠!」

調子の良さはシモーヌ譲りだ。


「久し振りのカチコミですわね!お母様!」

「えぇ、そうよ!」

リコアリーゼの目が、らんらんと輝いている。

お祭り好きはエルサーシア譲りだ。


「あんのぉ~何の話すだべが?」

何も知らない無垢な少女に今、試練の嵐が訪れる。


「新・ウルトラ遊撃隊の出陣よ!」

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