*第37話 もう駄目だ!からの~

「やっと・・・抜けた・・・」

つづら折れの坂道。

分かれ道、迷い道。

一本でも道を間違えれば御終いだった。


だが不思議な事に分岐点には真新しい看板が立てられていて、

「カイエント城はコチラ!」

と書いて有る。


通常なら怪しむ所だが、ミラームにそんな余裕は無かった。

素直に従った。


山間部を抜け出て田園地帯を走る。

あまり速度は上がらない。

疲労が頂点に達している。


西の空がぼんやりと紫色になっている。

マズイ!

夜明けが近い!


恐らくあと一回が限界だろう。

それでも行くしかない。

ミラームは魔法を発動させた。


*********


遠く山並みの影を光が縁取る。

夜明けが訪れようとしている。


チュ~チュチュチュ~!来ましたよぉ~!


街道のずぅ~っと向こうに人影が小さく見える。

もう魔法を使う体力も無い様だ。

フラフラと歩きながら、時折に片膝を付き、

そしてまた歩き出す。


行く手に一本の川が流れている。

橋を渡ればゴロニャートン州の首都ノーベルンだ。

橋のたもとには一同ずらっと勢ぞろい。

何故かネフェルには黒いローブが着せられている。


「あぁ!殿下!あのようなお姿に!」

ミラームはボロ布の様になっていた。

「おいたわしや・・お労しや・・・」

ネフェルは泣きながらも見つめ続けている。


愛する人の傷ついた姿に胸が裂けそうになりながらも、

自分の為に来てくれた事が嬉しい。


やがて朝日が顔を出す。

歩いては倒れ、また起き上がり歩く。

もはや気力だけで動いている。

太陽が山から昇ったら時間切れだ。


ミラームが崩れ落ちた!

「殿下ぁ~!あぁ~!」

「ネ・・・ネフェル・・・」


互いに声の届く所まで来ている。

しかしもう動けない。

限界を超えてしまった。


「私の勝ちですわねサーシア。」

「さぁ、それはどうかしら?」

「あれはもう無理よ。」

「うふふふふ。」


不気味に薄ら笑いを浮かべながら、

エルサーシアがネフェルに近寄る。


「これを御覧なさいな!ミラーム殿下!」


そう言うや否や、ネフェルの黒いローブを剥ぎ取る。

下着姿のネフェルが荒縄で縛られている。

もちろん亀甲縛りだ!


ハニーが良い仕事をしている。

もういろんな所が食い込んでいる。


「ネフェル~~~!」

ミラームがった!

走れエロス!

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330667500048516


「うぉ~~~!『ハヨカケール!』」

体勢も何も無い。

放り投げられたように転がりながら、

橋を越えてネフェルの足元に飛び込んだ。


「殿下ぁ~~~!」

ひっしと抱きしめる。


「あぁ・・・ネフェル・・・

僕は間に合ったのだろうか?」

「えぇ、えぇ、殿下。間に合いましたわ。」


「反則よ!」

「底力を引き出しただけですわ。」

「こんな手を使うなんて・・・」


ミラーム・カーラン

もうすぐ13歳。

思春期まっしぐらであ~る。

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