*第27話 アンタッチャブル

陸軍諜報部室長ネリオット・エース大佐

諜報部主任捜査官ワイアトール・アープ少佐

諜報部捜査官ドコ・ホルディー中尉


オバルト王国の闇を見続ける者達である。


「間違い無い様だな。」

「えぇ、テロポンです。」

「勘弁してよぉ~」


キーレント討伐で王国軍を苦しめたテロポン兵。

恐れを知らず、致命傷を負いながらも前進する、

魑魅魍魎ちみもうりょうの軍隊。


テロポンとは麻黄の実から抽出した、

エフェドリンを原料とする覚醒剤である。

強烈な興奮作用と中毒性で人をけだものに替える。


エルサーシア率いるズボンの騎士隊によって生産拠点を破壊され、

すっかり鳴りを潜めていた。


しかしどうやら場所を変えて復活したようだ。

アヘンの流通経路に乗る形で出回っている。

ここ最近の城下で起こる猟奇的な事件の背景に、

テロポンが絡んでいるのは確実だ。


「王都だけでは無い、主要都市の殆どで同様の事件が発生している。」

「お縄にした奴を締めてみましたけどねぇ、

ありゃ駄目ですねぇ。

完全にお釈迦しゃかになってますよぉ。」


まともに話が通じない。

薬が切れると狂乱状態となり、

牢獄の壁に頭を打ち付けて死んでしまう。

入手経路を聞き出す事など不可能だ。


「外交部からの情報では、我が国だけでは無いらしい。

特に酷いのはデカシーランドだ。」


「あそこは取り締まりが緩いからぁ。」

「報告が無いのはハイラムとカーランだけだ。」

「ハイラムは守りが固いですからルート自体が在りませんよ。」


「そうなるとカーランに出回って無いのが不自然だな。」

「妖しいですねぇ。」


「ドコはカーランに潜入してくれ。

ワイアトール、お前は貴族階級の洗い出しだ。」

「了解しました。」

「あそこは暑いんだよなぁ。」


*********


労働者の町キュポーラ。

大人用玩具の店“トイザンス”の奥の部屋で、

三人の男女が話し込んでいる。


一人はドコ、遊び人風の派手な男はハイラム人のトニール。

そしてバルドー人のサユーリン。

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330666818012626


二人ともドコの配下だ。


「カーランのハイラム商会には話を通したざんす。」

潜伏先など、色々と世話になる。

「私も準備出来たわ。」


サユーリンには男爵夫人を装い社交界で情報を集めて貰う。

ドコは商人にふんする。

ジュリアナ・サンドル男爵夫人と宝石商カルロだ。


カルロの娘であるジュリアナが男爵に見染められて夫人と成った。

と言う設定である。


サンドル男爵は諜報部の協力者である。

色々と貸しがあるのだ。

貴族院に婚姻の届け出までしてある。

用意周到だ。


父親は宝石の買い付けに。

娘は夫と共に観光旅行と言う訳だ。


「さぁ!掘って掘ってぇ!掘りまくるよぉ!」


「あんたが言うと違う意味に聞こえるよ。」

「どっちもだよぉ~ん!」


ドコ・ホルディー43歳独身。

花婿募集中!!




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