*第2話 取り憑かれた男
いくら食べても空腹で
どんな贅沢にも満たされず
手にしたものは価値を失う
最高級の衣装に身を包み
肥え太り
大勢に
真実の鏡はその者の干からびた
卑しい姿を映すだろう
かの命の
**************
オバルト金貨200枚。
大層な金額である。
ユバルが用意した支度金を前にして、
コイント貴族のトリオゴは更に欲が出た。
「これじゃぁ
「
やっぱりそう来たかとユバルは身構えた。
上乗せを要求されるのは予想していた。
だから準備していた額の半分を見せたのだ。
トリオゴは中央貴族の外交部に顔が利く、
オバルト王国に設置した花嫁募集の窓口から
優先的に話を貰える。
但し、それなりの返礼を担当者にしなければならない。
「
「もう100枚だば用意すてらっせ。」
残りの100枚は用心して隠す。
「えがえが、すても話すさ聞いとるがの、
お
痛い所を突かれた。
調べられていたのかと少し焦る。
「
「そいじゃがの、舞姫が娘でねが?」
「んだす。」
「めんごい娘がや?」
「んだすな。」
にやりと笑ったトリオゴが身を乗り出す。
「さる公爵閣下と面識さあるべな、
舞姫が娘だば大喜んびだべさ。」
公爵ならば男爵位の徐爵が出来る。
覚え
「お任せすてけろ。」
*********
シオンの母ケイコールは踊り子である。
夫は演舞場の支配人。
家族全員が観光で収入を得ている。
地主の意向により農地は潰され、
その場所には宿屋が建っている。
地主でもある演舞場のオーナーは村長だ。
ここで働く以外に生きる
「あ、あんまりだぁ~
オラえやだぁ~
貴族が愛人さなるくれぇなら死ぬべさ。」
挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330664778418026
「
ユバルに呼び出された父エダンが戻り、
悲痛な顔で告げたのは、シオンを高位貴族の愛人に
差し出せと言うものだった。
想い人に捨てられて、唯でさえ壊れそうな心に
これでもかと石を投げる。
人は何所まで残酷になれるのだろう?
「
「
「とと様ぁ~
「もう返事さすたでば、どもなんねべさ。」
涸れたと思っていた涙が
まるで命が
この涙が尽きる時、心も死んでしまえば良いのにと
シオンは思った。
もう悲しむのは嫌だ・・・
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