人生はそう、甘くないんだな

@huyunokaori

第1話

人生は甘くない。


そう思ってるのは、きっと私だけではないはず。


社会人1年目、早坂 莉央(はやさか りお)23歳。

どこにでもある一般的な総合商社のOLだ。


大学3年生の時に初めて付き合っていた彼氏とは喧嘩の絶えない日々にうんざりし、これから就職活動となるとストレスは増えるばかりだと予想して早めに別れを切り出した。

当時の彼氏は私のことが、思った以上に大好きだったようで泣いて別れを止められた。

だが、今思えば私はそこまで好きじゃなかったのだろう。たった半年の交際だったとはいえ思い出もいくつかあった。

それなのにも関わらず、こんなにあっさり別れを切り出すことが出来たし全然引きずらなかった。

恋愛なんてこんなもんかなぁ。

私はこの先好きな人とか出来るのだろうか?

果たして人を愛することが出来るのだろうか?


ふとした時にそんなことを考えては、

社会人1年目の私の忙しさでもみ消される。

そんな毎日が今では当たり前であった。


「早坂さん、おはよ。今日の契約書何時までにできるかな?」


「はい、もうすぐ終わるところです。14時には提出できるかと。確認の程、よろしくお願いいたします。」


「そんなにかしこまらないで、助かるよ。ありがとう」


この人は私の上司、高木 慎也(たかぎ しんや)

仕事はできるようで、28歳という若さで課長というから驚きだ。皆に平等に接し、感謝の気持ちをサラッと口にする、そして何より容姿端麗。スラッと通った鼻筋に綺麗な二重で笑ったらくしゃっとシワができる目元。薄い唇に綺麗な歯並び。足が長くモデルさんですか?って言いたくなるくらいスタイルがいい、身長は180cm以上はある。きっと、漫画の中でヒロインの王子様役が実在するならこんな人物なのだろう。

あくまで冷静に分析してる私。

高木課長に惚れてる同期だっているし…


それはともかく、今頼まれた仕事をこなさくちゃ。


私は作業にとりかかり約束の時間に

契約書を作って高木課長に提出へ向かった。

「できました。確認お願いします。」



「ありがとう。…………ばっちりじゃん、仕事覚えるの早いね」


高木課長は無邪気な顔をしてくしゃっとした笑顔を見せた。


「いえ、先輩が優しく教えてくれたので。」


「先輩って、三浦?」


「そうです。」


「ふーん、三浦って優しいんだ〜」


??????え

何、どういうこと???

返していい返事が全く浮かばない。


「あ、はい。優しいです。」


「良かったね」


???????私の頭の中には

大量にハテナが浮かんだ。

こういう時どうやって返せばいいの?

社会人難しすぎる。

高木課長は、なんだかそっぽを向いた様子で

自分のパソコンへと目を戻した。


「そ、それでは失礼します。」


私は頭を下げたきり高木課長には

顔を向けることは出来ずそのまま後にした。

頭の中にはハテナがのこったままだ。


一体高木課長はなにを考えているの…

どう質問に返せば正解だったの?

冷静に戻った私はイライラしてきた。

平和に送りたい社会人生活、

それは簡単じゃなさそうな予感がする。

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