お月さまと美味しいお酒

@ramia294

第1話

 今年も新酒の季節になりました。


 一生懸命作ったので、とても美味しく出来ました。


 日頃の感謝を込めて、お月さまにお届けしました。


 お月さまは、大喜び。


 ひとくち飲むと、とても良い香りが、口の中いっぱいに広がります。


 喜んだお月さまは、もうひとくち。


 さらに、良い香りが、増えていきます。


 甘いお酒の中から、いろいろな味が顔を出します。


 もうひとくち飲むと、楽しい気持ちが、湧き出てきます。

 

 お月さまは、止まらなくなりました。


 もうひとくち、もうひとくちと、頂いたお酒を全て呑んでしまいました。


 その日は、満月。


 でも、お月さまは、足元が、フラフラしています。


 お日さまが、心配そうに、沈んでいきました。


 星たちも、瞬きながら、見守っています。


 今夜は、顔の赤いお月さま。


 いつも黄色が、橙色に変わっています。


 今夜は、空高くまで、登っていけそうもありません。


 ついに、まん丸お月さまが、かけ始めました。


 予定外の月食に、地上は大慌て。


 お天気お姉さんも、大慌て。


 天文学者は、逃げ出しました。


 夜も日付が変わる頃、酔いが醒めはじめたお月さまは、徐々に姿を現しました。


 元のまん丸に戻る頃、光も黄色くなりました。


 お天気お姉さんも安心しました。

 

 逃げ出した天文学者も戻ってきました。


「飲み過ぎちゃた」


 お月さまは、恥ずかしそうに言いました。


 地上も空も元通り。


 人も動物も安心して、眠りにつきました。



          終わり


 

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