先輩の苦悩


(マジか、しまった――)


オレは痛恨のミスを犯した。後輩の独立祝いに、なにか思い出に残る物を贈ってやろうと考えたのだ。


金も地位も名誉も手にしたアイツが、今さらほしいものなどない。ならばあえて「要らないもの」を贈ってやろう。どんな顔するか楽しみだぜ。


そこで「もっとも不要、かつ、処分に手間のかかるもの」を選んでやった。それがケトルベルだ。運動嫌いのアイツが筋トレなんかするはずがない。しかも16キロのケトルベルはそう簡単に捨てることもできない。なおかつ不法投棄しないよう、アイツの会社名まで刻んでやったんだ。


事務所の片隅にデーンと居座るケトルベルを、忌々しく眺めるアイツの顔を想像するだけで片腹痛いわ!



――これこそ完璧な計画だとほくそ笑んだ。これでアイツに勝てると思ったんだ。それがなぜこんなことに…。



独立開業からわずか3か月。後輩の会社はすでに10億円の利益を叩きだしていた。さらに久しぶりに会ったヤツは心なしか男らしく見えたし、満ち溢れる自信というかオーラまで感じた。かつては「卑屈」や「陰険」という単語が似合う、頭がいいだけの嫌われ者だった。それが今じゃ完全なる勝ち組に――。



クソッ、オレはなんというミスを犯してしまったのだ!!!


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チーム・バチスタFINAL~ケトルベルの効用~ URABE @uraberica

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