ハーレム系ラブコメ主人公♂に転生したら性別が転生前♀な上にメインヒロインの性別が反転してるんですが!?

うにどん

本編

「レン!! 会いたかった!!」


 15歳になった私と幼馴染は村にやってきた神官から魔術師の素質があると見出され、魔術学園に入学した。

 その入学式前、校門をくぐり抜けた時、見知らぬふんわりとした触り心地良さそうなハニーブラウンの髪にスカイブルーの眼をした、どこぞの貴族いや王子様みたいな男子生徒に声をかけられた。


「えっと、貴方は・・・・・・?」


「え? 僕の事を忘れ・・・・・・、そうか、あの時はあんな格好してたからしょうがないか。


 クリスって言えば解る?」


「え!?」


 クリスという言葉を聞いて、私を驚愕した。


 だって、私の知ってるクリスは『女の子』だったから。


――――――


 それは突然だった。

 五歳の誕生日、私の頭の中に前世の記憶が流れたのは。


 前世の私は女性向けコンテンツよりも男性向けコンテンツが好きなオタク女だった。

 兄の影響もあるが 一番の理由は二次元の可愛い女の子が好きだったからだ。

 特にロリ系、暗殺者として育てられ主人公に助けられた結果、主人公の事をお兄ちゃんと呼んで慕うロリッ娘は最高!! 至高!!

 そんな感じで私は我が道でオタクライフを楽しみ、あるイベントで出会った男性と恋に落ち、結婚、子宝にも恵まれ、色々とあったけど、最期は子供や孫達に囲まれながら天寿を全うした。

 よくある異世界転生ものと違って、事故ではなく天寿を全うした私が転生した場所は、前世でハマっていた異世界を舞台とするハーレム系ラブコメ『後に最強と称えられる魔術師の学園生活は波瀾万丈だった件』の世界だった。


 この流れだと、当然、ヒロインの内の一人に転生したと思うじゃん?


 なんで主人公なんだよ!!!!!!


 そう、私は主人公に転生していた。

 しかも、性別は転生前のまま!!


 これはないでしょ!?

 酷すぎない!?

 せめて、性別は原作通りでいいじゃん!!

 いや、それはそれで困るかも。それだったら、これで良かったのか?

 いやいや、これハーレムものだぞ? 良いのか? 逆ハーレムじゃなくてハーレム!! 百合ハーレムってのもあるのは知ってるけど・・・・・・、それは良いかもしれない。

 沢山の二次元美少女に囲まれる、イイ。


「レン? どうしたの?」


 ヒロインの一人、一途な家庭的幼馴染枠のルシャが話しかけてきた。

 今はお誕生日会の途中だった。

 私の口にはケーキのクリームばベッタリとついている、それを見たルシャがハンカチでそれを拭い、綺麗になったよと笑うのを見て、心がキュンとなる。

 主人公に心開き懐くロリッ娘も好きだけど世話焼きで一途で家庭的な幼馴染というキャラも好き。

 この作品にハマったのは、夫からお前の好きそうなキャラが居るとルシャを紹介され、アニメを見始めたのが切っ掛け。

 その後、妹分枠で私の好みに合致するロリッ娘が出てきて、ハマり、アニメ終了後は出ていた[[rb:原作 > ラノベ]]を全部買い、二期が来ることを待ち望んでいた。

 でも、アニメ監督が捕まって(薬物に手を出してたらしい)二期が望めなくなっちゃったけどね。悲しかったな~。


 そう昔の事を思い出しながら、ケーキをムシャムシャしていた私は、あの事をすっかり忘れていた。

 この後、メインヒロインのクリスと出会うことを。


 翌日、両親が管理する花畑へと兄に手を繋がれやってきていた。

 花の収穫を手伝うためだ。

 主人公、ここで言う私達が暮らす村はエディブル・フラワー、格好良く言ったけど食用花の生産地として美を好む貴族達の間では有名な村で、自然豊かな場所でもあるから貴族の別荘地としても人気が高い村でもある。

 そう貴族の別荘地として人気が高い。

 これが意味するのは。


「あっ・・・・・・」


 花畑に着いたら、白い帽子を被り、一目で高級だと解る白いワンピースを着たふんわりとしたハニーブラウンのロングヘアーの私と同い年ぐらいの少女が居た。

 少女はじっと花畑を見ていたと思ったら、私達に気がつくとそそくさと走り去ってしまった。

 あの子は・・・・・・。


「あれは貴族の子だね」


「そういえば、昨日、とある貴族の奥様が遊びに来ているって聞いたわ」


「それじゃあ、その貴族の娘さんかな?」


 両親の会話で私は先程の少女の正体に気付いてしまった。

 あの少女こそ、この物語のメインヒロイン、クリスことクリスティーナ・アルフォードだと!!

 主人公が五歳になった翌日に出会うのをすっかり忘れてた!! 迷子になっていた所を主人公が助けたのが切っ掛けで仲良くなり、別れの時に結婚の約束をする展開だったはず。

 私は二次元美少女は好きだけど、苦手なタイプもいるわけで。

 最も苦手なタイプがツンデレ、そうクリスはツンデレだ。

 普段はツンツンしてるけど、デレた時の破壊力が魅力なのは解る、ツンツン時のキツい言葉とか、あと、たまに理不尽な理由で主人公に暴力を振るうツンデレキャラも居るから、それが原因で苦手に。

 でも、クリスの場合は主人公であるレンが五歳の時の出会いをすっかり忘れてしまったのが原因でツンデレに、それでも苦手なのは苦手なのだ。

 これから、マジでどうしよう。

 い、いや、五歳の時のクリスは大人しい女の子だった!! それに今は同性だし、覚えてなくても大丈夫だよね・・・・・・?

 いや、本当にどうしよう。


「なに、ボ~としてるんだ。ほら、早く手伝うぞ」


「う、うん、お兄ちゃん、ゴメン」


 立ち止まってたら、兄に急かされたので私は考えるのを止めた。


 次の日。

 今度は一人で散歩をしていたら出会った。


 お隣が管理する花畑で、ピンク色の花をじっと見ている。


 熱心に見ているから思わず声をかけてしまった。


「あの!」


「あっ、えっと、あの、その」


「ピンクの花を見てるけど、欲しいの?」


「え・・・・・・、う、うん、お母様が好きな色の花だからお見舞いの品に欲しくて」


 クリスは帽子で顔を隠しながら話してくれた。

 二日前に病気の母親と共に此処に来たこと。

 だけど、病気が酷くて余り顔を見れないこと。

 せめて、お見舞いの品に母親が好きな色の花をあげようと考えていたこと。

 でも、恥ずかしくって言い出せないことを話してくれた。


 それを聞いた私はメッチャ良い子じゃん!! と感動していた。

 ツンデレが苦手すぎてクリスの事を避けていた過去の自分をぶん殴りたい!!

 主人公に対してキツい言動や態度はするけど、主人公以外には本来の素直な性格で接する子だった事を思い出した。

 これは何とかしなくては!!


「この花畑、お隣さん一家のなの。知り合いだから話してあげようか?」


「本当!?」


「うん。お隣のおばさん、すっごく良い人だから、きっと大丈夫だよ」


「嬉しい!! ありがとう!!」


 クリスの花のような笑顔にニヤける。

 この笑顔プライスレス。


 これが切っ掛けになり、私とクリスは仲良くなった。

 そして・・・・・・。


「え? 明日、王都に?」


「うん。母様の病気、一向に良くならないから父様の知り合いが名医を紹介してくれる事になって、それで・・・・・・」


「そうか、寂しくなるね・・・・・・」


 どうも、クリスの母親の病気は悪化するばかりで一向に良くならない為、王都の医者に診せる為に帰る事になったという。

 表向きは遊びに来ているという事になっていたけど、本来は母親の療養の為だったらしい。

 原作でも確か、そういう理由だった気がするけど、あやふやだ。

 キャラや世界観は覚えてても、内容はあまり覚えてないっていうか、推しが絡む話しかハッキリと覚えてない。

 クリス、ごめん!!


「そ、それで、レンにお願いがあるの!」


「お願い?」


「もし、もしだよ? また会えたら結婚して下さい!!」


「え・・・・・・?」


 お願いの内容に思わずビックリしてクリスを見る。

 クリスの顔は真っ赤だけど、真剣に私を見ていた。

 この世界の貴族は繁栄のために子供を作る事を最重要視している、それで同性同士の結婚は快く思われてない、一部の国では貴族の同性同士の交際、結婚を禁止しているほどだ。

 でも、今の私達は五歳だ、だから。


「うん、解った。また会えたら結婚する」


 小さい頃の思い出として私は結婚の申し出を了承するとクリスはあの時と同じ花のような笑顔で笑った。


 クリスとの約束から十年が過ぎた。


 15歳になった私は鑑の前で、入学が決まった魔術学園の制服を着て、ちゃんと自分に合っているか確認している。

 白を基調とした可愛らしい制服は、きっと二次元美少女なら似合うだろうと思いながら見ていると。

 近くに居る母さんが似合ってるわよ! と言ってくれた。ありがとう、母さん。


 15歳になったら、この世界では神眼しんがんの儀を受ける。

 簡単に言うと、どんなスキルを所持してるか確認するのだ。

 この世界において、スキルは非常に重要なものになっている。例えば、栽培系スキルを持っていたら栽培者として活躍出来るし、加工系スキルは様々な加工職人の道を行ける。

 つまり、スキルによって未来がほぼ確定すると言っても良い。


 両親が二人とも栽培系スキルを持っている私は、この村にやってきた神官から魔術スキル、魔術師の素質を見出された。

 私だけでなく、幼馴染のルシャもだ。

 当然、両親だけでなく村中は大騒ぎになり、お祭り騒ぎになった。


 ルシャは戸惑ってたけど、私は原作通りだな~と思いながら、ルシャの隣でご馳走を食べていた。

 そして、神官が手配した魔術学園にルシャと共に入学することになり、村から離れ寮生活に送ることが決まると流石に寂しくなって両親と兄に抱きついた。


 迎えに来た魔導車、魔術で動かす車に乗り、一時間かけて学園に着いた。

 千年以上の歴史がある、この国、唯一の魔術学園に。


 そして、ルシャと共に門をくぐり抜けたとき。


「レン!? レンなのかい!?」


 見知らぬ美少年に声をかけられ、冒頭に戻る。


「まって、クリスって女の子だったはずじゃ・・・・・・?」


「ああ、あの格好のこと? 彼奴、姉さんに着せられてたんだ。彼奴、妹が欲しかったからってね。ただ、それだけだ。

 それはそうと、僕の事を覚えてくれてるんだね!! 嬉しいよ!!」


 一瞬だけ怖いほど昏い目をしたけど、すぐにキラキラとした目に戻り、私を見つめる。

 なんか、嫌な予感。


「それだったら、約束も覚えてるよね?」


 ニッコリと綺麗に笑うクリスを見て、私は覚えてないと言えず、小さな声ではいと答えた。

 無理、否定できない、無理。


「改めて言わせてほしい。このクリストファー・エドワーズの妻になってくれませんか?」


 手を取られ、手の甲にキスを落されると周りの人達からキャ~♡ という歓声が上がった。


 待って、本当に待って!!

 展開についていけない!!


 誰か助けて!!!!!!

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ハーレム系ラブコメ主人公♂に転生したら性別が転生前♀な上にメインヒロインの性別が反転してるんですが!? うにどん @mhky

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