下
『……あれ、いつの間にか寝ちゃってたみたいですね』
僕の視線の前、少女はゆっくりと目を開いた。
『えっと、ちゃんと解除できましたか?』
「ああ、成功だよ!」
『そうですか! よかったです! ……本当に』
少女は安心した様子で、無邪気に
『本当に私……普通の女の子に……なれたんだ…………』
水晶のように輝く雫を落としながら、少女は夢にまで見た世界をその目で見まわす。
『幽霊さん……私、
「僕も嬉しいよ。今までで一番骨が折れる作業だったし。ま、
少女はきっとこれから、素敵な人生を歩むことだろう。
『幽霊さん。約束、覚えていますか?』
「…………もちろん! 人目に
僕たちは
「さてと、僕はそろそろ次の現場に行かなくちゃ」
ベテランのように振舞い
『一つ気になっていたので、幽霊さんに質問したいです』
思わず触感のない脚を止めて、瞳を輝かせた少女に向き直る。涙はすでに
『幽霊さんはどうして、爆弾解除をしようと思ったのですか?』
純粋な質問を向ける少女の姿はまるで、ヒーローインタビューをするリポーターだ。
僕らはたった今心が
「実はね……僕は生前、爆弾処理班の一人だったんだ。だけど、ある任務で失敗した際に肉体も周囲も吹き飛んでしまってね。こうして死んだ後も解除を続けているのはさ、『あの時、失敗さえしなければ』っていう未練からだろうね」
出来るだけ空気を重くしないよう
しばらく、風だけが通りすぎる時間が流れる。それから少女はゆっくりと、しかし
「でも、幽霊さんは今日、私の胸の中の爆弾を解除してくれました! 私を爆弾から、普通の女の子にしてくれました! 私の夢を叶えてくれました!
だからどんなに生きていた時代に失敗したとしても、私は幽霊さんに、返しきれないありがとうの気持ちがあります!」
ない心がきゅっと
僕はこの子に今まで
『そう言えば、幽霊さんはどこかの爆弾解除に向かう途中でしたっけ』
「いいよ。幽霊はいつでも
そして僕たちは気心の知れた親友のように、ほぼ同時に笑みを交わした。
「それじゃあ、またいつか会おうね。親愛なる普通の少女さん」
少女は太陽のような笑顔で一言「はい!」と返すと、世界に開けた自分の新たな道を進むように、見えなくなるまで僕に手を振りながら、
僕も軽く手を振り返し、仕事に戻る。
今度こそ、爆弾解除の仕事に。
〈了〉
幽霊と普通の少女の話 私誰 待文 @Tsugomori3-0
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