姿勢反射、姿勢制御

 立ち直り反応とは、中脳を中枢とする姿勢反射のひとつです。

・体に働く頸からの立ち直り反応(寝た状態で頭を一方に向けると、体も同じ方向へ剥く)

 ・頭に働く体からの立ち直り反応(体の一部が支持面に接触すると頭部の位置を修正)

 ・体に働く体からの立ち直り反応(体のねじれを修正する)

 乳児期に発達し、次第に修正され、平衡反応や随意運動に統合されていきます。

 

 随意運動とともに、正常相反神経支配も発達していきます。

・抹消部の選択的可動のための近位部の共同固定

 例︰両手で顔をあらうとき、肩関節を安定させ遠  位の肘を動かす

・姿勢変換のための筋の自律的適応

 例︰座ったまま横にずれるときの進行方向の体幹側屈筋と、反対側の体幹側屈筋の収縮

・運動のタイミングや方向性のため協同して主動作筋と拮抗筋の必要に応じた収縮

 例︰食べ物を口に運ぶとき、上腕二頭筋を主動作筋として、スムーズに肘を曲げる


 中枢神経疾患により、姿勢反射低下、運動麻痺や筋緊張異常が起きた場合は、体幹、肩甲帯の筋肉や肩関節、運動と感覚の治療を行い、姿勢反射、姿勢制御を再学習し目的動作能力を再構築していくという考え方があります。具体的には、頸の立ち直りパターンの応用、体の立ち直りパターンの応用により、骨盤から寝返り動作を誘導する運動方法です。

 

 骨盤をキーとする寝返り動作の誘導では、骨盤の回旋に伴って後方に残った肩と、前方になった骨盤との間でねじれを修正するように、また頭も重力に逆らって立ち直り反応が起こるようにします。やや腹臥位方向(頭と体が下を向く)に誘導すれば股関節伸展、頸部進展、体幹伸展が誘導され、やや背臥位方向(頭と体が上向き)に誘導すれば股関節屈曲と体幹屈曲、頸部屈曲が誘導されます。この寝返り動作の練習を繰り返すうちに体幹筋が安定します。

 背臥位(上向き)から側臥位(横向き)になるところで下になる下肢を股関節外旋させ、骨盤を回旋させ、さらに肩甲帯、頭部を回旋させます。

 側臥位での下肢のスイング(振り出す動作)の促通は、骨盤からの誘導で体幹側屈筋群が高められれば床から下肢が浮きやすく、体幹全面の筋群が高められれば下肢のスイングが誘導しやすくなります。

 骨盤帯を利用した介助による同側性歩行、対側性歩行の誘導につなげていきます。


 頭頸部をキーとした誘導では、背臥位で頸部屈曲から促し、頭頸部、体幹、下肢の好重力屈曲の促通を行います。 側臥位て、頭頸部の側屈を促し体幹側屈筋群を高めると下肢が床より浮きやすくなります。


 肩甲帯からの動きの誘導では、背臥位で左上肢の上腕か前腕を床面に圧迫するに置き、顔面を左に向かせ、右肩か浮き上がって来るように誘導します。その際右の上肢も床面に置き、体幹前面の筋群の緊張を高め寝返りを誘導します。その後に頭頸部も立ち直り反応が起こるようにします。

 

 肩は複合関節でおり 肩関節の過剰な負担を減らすには体の他の部位の適切な機能や、肩を構成する各関節の機能が必要です。

 肩の動作には、先行して下肢の筋活動、体幹を安定させる筋活動、それぞれが機能して動作が成り立ちます。

 体幹の安心、安全により、肩甲骨、上肢の動きが得られます。しかし、恐怖から過剰に安定した姿勢が習慣になっていると、過剰な防衛反応、努力的動作が痛みの原因になります。

 肩関節の運動には、各構成関節の適切な機能、かつ体幹の安定性が深く関わります。そして下肢の運動は骨盤を介して体幹、肩関節に影響し、足部から骨盤、脊柱、肩への運動連鎖が考えられます(前後左右の体幹、下肢の重心移動による肩甲骨の挙上や下制などの変化)。運動連鎖の影響により脊柱アライメント不良が起こると、胸椎後弯、横隔膜前方下垂、肩甲骨の上方回旋低下、肩の関節可動域低下が起こります。

 姿勢反射にともなう原始的な体の動き(重力に抗する姿勢制御)から、本来人間がもっている姿勢制御能力を活かし、「安全に」「最小限の努力で」目的動作を行うことで体の痛みを克服することは、中枢神経疾患に関わらず、有効なのかもしれません。

 

 

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