徒手療法、運動療法
肩を安定化させるのに重要な肩甲骨には、17の筋肉がついています。肩甲骨は、下肢や体幹から手に向かう運動を仲介する(運動が筋肉、関節を介して複数の関節に連動していく運動連鎖)と考えられます。肩甲骨周りの筋肉の弱さや硬さがなく機能していることは、上肢、手の自由で機能的な運動へ影響します。
筋肉を良い状態にするには、過剰な緊張をとり、適切な血流やリンパの流れを促すこと、痛みや重だるさがなく機能的に働くことが必要です。
体をゆすって、対象になる筋肉をゆらす、筋肉が緩むように関節や骨を動かす、筋肉の停止部などに触れ深呼吸、脱力する方法は、リラクゼーションといいます。これらにより、痛覚神経線維の活動電位が抑制され痛みが軽減する、結合組織の柔軟性が改善する、筋緊張が低下し静脈やリンパの流れが改善する、気持ちがいい、楽だと感じることにより、精神的な緊張を軽減することができるなど、良い効果の循環が期待できます。
筋膜マニュピレーションは、(マッサージと違い、皮膚や血管、リンパの奥側にある筋膜に働きかける)摩擦によって筋膜の張力を改善し、神経、筋肉の機能を高める手技です。身体の動きや位置、力の入れ具合などの固有感覚の入力をスムーズにし、協調した運動を可能にすることを目的としています。筋膜モビライゼーションは、筋肉や関節を動かし、筋膜と関節周囲の組織(支帯、中隔、靭帯、)の張力を改善し、神経、筋肉、関節の動きをスムーズにするための手技です。
肩関節(肩甲上腕関節)に着目した関節モビライゼーションは、関節包や筋肉が緩んだ状態にするよう働きかけることや、肩をまわしたり屈伸するなどの関節運動を行います。関節包内の動き(関節を構成する組織の動き)の改善、靭帯、腱、筋肉などの癒着を改善することが目的です。
肩には腋窩神経があり、腕神経叢という網の目状の神経のネットワークと近位でつながり、遠位では肘や手指へ走行する神経とつながっています。肩を走行する腕神経叢は、頚神経叢、腰神経叢、仙骨神経叢という、神経繊維の集まりともつながりがあります。関節の動きを支配しているのは筋肉と神経であるため、神経の働きも関節の動きと連動します。そのため、肩に限らず、肘、手首、足首、膝、股関節など、いろいろな関節を動かす運動は、腰痛や抹消神経障害などあらゆる部位の神経、筋肉、関節が原因となる疾患や痛みの改善に役立つ可能性があります。
筋肉、関節を動かすことにより、神経への刺激も可能です。神経は、筋肉や血管とともに圧迫すること、走行する神経を引っ張るような動作を行うことで刺激することが可能です。感覚異常の起こる部位を特定し、そこの筋肉の硬さをとる手技による症状改善も考えられます。
肩には、腰部、下肢、足底など体の各所との相互作用もあります。例えば、足底の荷重方法は、下肢、骨盤の運動連鎖を介した肩甲骨外転、肩関節内旋(巻き肩)などに影響を与えます。肩の筋肉の適切な筋緊張は、手指の筋の柔軟性、手の腱鞘と腱の滑走に影響します。肩甲骨周りの筋肉の機能(適切な収縮)は、脊柱の筋肉へ影響し、筋膜性腰痛と関係します。下肢の筋肉の適切な筋緊張と、骨盤、脊柱の運動連鎖を介した姿勢の変化は、肩こりと関係します。
肩こりや痛みの治療は、多くが、肩関節が主になります。慢性的な痛みには、肩をまわし肩甲骨周りを柔らかくする運動や、ストレッチ、体操などの運動療法、整体の徒手療法を受けることが考えられます。モビライゼーションや筋膜リリースなどの徒手療法を受けると、しばらくは効果を実感できるかもしれません。しかし、筋力低下や筋緊張の不均衡を起こしやすい体の状態など、根本の原因が解決できなければ、完治は難しいと予測されます。運動療法も実施することで治していくことが推奨されます。その時に、腰部、下肢の筋肉や関節を適切な状態にするために、左右対称な姿勢で、体の前後の筋肉もバランスよく使用するようにするなど、肩以外の部位の機能改善も行うことが、運動療法の効果を最大限に引き出すと思われます。
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