第35話 入学式

 ゴーンゴーンと九時を知らせる居間の柱時計が鳴るのと、玄関の呼び鈴の音が重なった。

 約束通りマールがやって来た。

 パパもマールに負けず劣らず時間に正確な質でいつもの出社時刻なのだけれど、今日はマールに挨拶してから出勤するのだ、とわたしと一緒にマールを出迎えた。


「わざわざ申し訳ありません。サラを宜しくお願いします」

「あぁ、公爵は仕事だろう。明日からは出迎えてくれなくていい」

「承知しました」


 毎日一緒に登校する約束なんかしていない。勝手に話を進めないで頂きたい。でも、マールと一緒に登校すれば「やっぱりエリィ様の方が」的マウントの抑止力にはなるな、と打算めいた考えが浮かぶ。

 

「お早うございます」

「忘れ物はないか」

「筆記用具くらいしか持って行くものない」

「ハンカチとかあるだろ」

「女性にそういうこと言うの失礼なんだけど」


 答えるとマールは笑った。今笑う要素があったか。ちょいちょい変な所で笑うのは昔からの癖だ。今更突っ込む気は起きない。


「サラ、殿下に失礼のないようにな」


 わたし達のやり取りに、パパがなんとも言えない表情をした。どう考えてもマールが失礼だっただろうに。


「……はい。行って参ります」


 屋敷の前の道路に王家の家紋のついた箱馬車が停まっている。特別豪華ではないけど、これで登校したら絶対に目立つやつ。前まで行くとマールが手を差し出した。この辺は流石に抜け目がない。ちゃんとした婚約者に見える。なので、わたしもちゃんとエスコートを受けて馬車に乗り込んだ。進行方向に向ってわたし、向かいにマールが座る。

 屋敷から学校までは馬車で二十分弱。乗馬の授業があったりして広い敷地を要するから、割と郊外にある。整備された道を行くのでさほど揺れないが、独特の乗り心地が慣れない。毎日の通学を考えると寮に入った方が楽だったかもしれない。


「……リボン」

「え?」

「何故、緑にしたんだ?」

「友達と一緒に選んだの」

「そうか」


 何色でも自由だけど、一応学校指定は、男女とも白だ。マールも白を着けている。ヒラヒラッとしたクラバット。


「なんでそんなこと聞くの?」

「指定の色とは違ったからだ」


 答えになっているのかいないのか。よくわらない。微妙な沈黙が落ちる。

 留学していた七年間、マールは半年ごとの長期休暇には必ず帰国していた。当然、その都度会っていたが、前前世みたいに顔色を窺う態度で接したことは一度もない。「こいつは何をやっても黙っている」とか舐めた思考は抱かせてはいないはず。しかし、油断はできない。毎日会うのと、たまに会うのは話が全く異なるから。

 無言を貫いていると、

 

「友人とは上手くやっているようだな」


 マールがボソッと言った。


「お陰様で」


 自分で作った自分と気の合う友達だ。当然じゃないか。前前世では、エリィを紹介されて散々な目に遭った。今世では王妃教育を一緒に受けることがなかったから、ほぼ接点はないまま過ごした。結局、新入生代表の挨拶はエリィなんだろうか。マールはまたエリィを優遇するんだろうか。


「入試の時、エリィ様に会いました」

「そうか」

「相変わらず可愛かったです」

「そう言えば三月程前だったか、クローウェル伯爵に同行してバークレン公国に来ていたので共に会食したな」

 

 マールが今思い出しましたみたいに言った。


「そんなの聞いてないけど」

「そうだな。言っていない」

「なんで言わないの!」

「取り立てて言うほどのことでもないだろう。たまたま話題にでたから言っただけだ。大体、お前はエリィ嬢が嫌いじゃないか。わざわざ不快な話をする必要があるか?」


 だったら永遠に言うな。意味わからんし、あり得なくないか。イラッとくる。くそしょーもない手紙をしょっちゅう送り付けてくるのだから、一筆添えればいいだけの話ではないか。


「あるに決まってる。今日、エリィ様に会ってマウント取られたらどう責任取ってくれるの?」

「マウント?」


 きょとんとした顔で尋ねられて余計に腹が立った。嫌味かそうでないか絶妙なマウントを口頭で説明するのは難しい。下手したら「そんな風に捉えるなんてお前の性格が歪んでる」とかこっちが悪く思われる。特にマールみたいな女子のいざこざに鈍いタイプには。でも、黙っていたらわたしだけが不愉快な思いを強いられる。やられる前に「こういうことをされたら不快だ」と宣言しておけば、少なくともマールは手放しにエリィを擁護できなくなるんじゃないか。先手必勝。攻撃は最大の防御なり。


「エリィ様が『バークレンではお世話になりました。あのレストラン凄く美味しかったですね』とか言ってきた時に、隣でわたしが驚いた顔をしたら『この人何も知らないんだな、ふふん』って思われて、『あ、父の仕事の都合で偶然ご一緒させて頂いただけなんです。誤解なさらないでくださいね』とか言われることよ」


 言葉にしたらやっぱり大したことなく聞こえるので、もやもやする。エリィは「明らかに悪意あります」みたいな言動はしない。かといってエリィを貶めるために、誇張したり脚色して訴えるのはわたしの中のモラルに反する。ないことないこと嘯く下品な人間になりたくない。

 わたしの抗議の趣旨を理解したのかしていないのか、マールは人形みたいに無表情でいる。頭は良いのだから察しろ。行き過ぎた愚鈍は巨悪だ。マールが口を開こうとするので、


「言っておくけど『それがどうマウントなんだ?』とか馬鹿みたいなこと聞かないでよ。わからないなら恋愛指南書でも読んで勉強したら? あと『悪意に取りすぎだ』とかも絶対に言わないで。エリィ様を一言でも擁護したら、ここで馬車を下りて一人で学校に行くから。わたしが嫌だって言っているのに婚約者でもない女を庇うのは万死に値するクズのすることだからね」

 

 と先回りで言った。マールは、


「誰もそんなこと言っていないだろ」


 と心外そうに返してきた。嘘つくな、と思ったけれど、わたしの発言を全面無視してエリィを庇ってくるよりましだ。

 

「じゃあ、何を言おうとしたの?」

「お前は、年々口が悪くなるな。そんな話し方どこで覚えてくるんだ? 王妃教育はちゃんと終了したと聞いているが大丈夫なのか?」


 疑わしげな視線を向けてくる。


「そんな心配より、自分が不用意なせいでわたしが虐められかもしれない心配したら?」

「誰に虐められるんだ?」

「マール様を籠絡したい令嬢御一同よ」

「俺が籠絡されると思うのか?」


 マールが半笑いで聞いてくる。何処からくるんだその自信。


「思う」

 

 素気無く返すとマールは口を開けたまま黙った。確かに前前世ではちゃんと結婚したし、サラちゃん存命中は側妃も娶らなかったが、それはたった一月のことだ。その後のことなんてお察し案件だ。お前に対する信頼なんてゼロだ。


「……今日、新入生への祝辞を任されている」

「あっそう」


 どういう心境かは全く謎だが露骨に話題を変えてきた。そう言えば前前世でも挨拶していた気がする。マールの後に、エリィが壇上に立つような順番で。次々に蘇ってくる。学校には嫌な記憶しかない。入学式なのになんでこんなに不快にならねばならないのか。


「宣言してやろうか?」

「何を?」

「王家の正式な婚約者を侮辱したら厳罰に処するって」

「馬鹿なの? 絶対やめてよ」

「効果はあるらしいぞ」

「何情報よ」


 急にどうした。マールは冗談なんていわないが、実行する気なら普通にホラーなんだけど。卒業パーティーで婚約破棄する馬鹿王子と同じレベルじゃないか。


「公爵のこと知らないのか?」

「公爵? パパ?」

「……いや、いい」

「何? 気になるから言って」


 勝手に自分の中で消化するのは止めてもらいたい。じっと見つめていると、マールはわざとらしく咳払いして、


「そういえば、お前に入学祝いを渡していなかったな。ほら」


 と、また話題を変えて、隣に置いてある鞄から祝いの品を取り出した。差し出されたので思わず受け取る。ピンクに白い幾何学模様が施された包装紙。あまり見ない柄。恐らくバークレン公国で購入した品じゃないだろうか。


「開けてみろ」


 話が有耶無耶になったのだが、お祝いを貰った手前、糾弾しにくい。物に釣られるようで釈然としないが、促されるまま包装紙を開ける。


「バレッタ?」

「あぁ」


 半透明の黄色に濃褐色の斑点模様。その斑点を中心に白い花びらが絵付けされている。


「べっ甲?」

「よく知っているな。バークレンの名産だ」

 

 結構いい値がすると思うが貰っていいのか。両陛下からは既にブランド品の時計を貰っている。私は正式な婚約者だから、品位保持費とかいう名目で予算が出ていると聞いたことがある。これがそこから出ているのか、グラン家の資産なのかは謎。いつからか、折々の贈り物を両陛下とマールから別個に貰うようになってしまった。


「……有難うございます」


 車窓からの緩い陽光に照らされると白い花弁が銀に光る。どういう塗料が使用されているのか不思議な風合だ。


「着けてやろうか?」

「え? いいよ。セットが乱れる」


 マリアンヌにハーフアップの編み込みにしてもらった。残念ながら自分ではできない。ここで解いたら惨事になるのが目に見える。


「着けていれば、マウントとやらも取られないんじゃないか」


 自分から逸らしたくせに、マールがさっきの話題を蒸し返した。どういう了見をしているのか。


「マール様が迂闊なこと言わなければ取られない」

「わかった」


 何がわかったのかわからないのだが、マールはわたしの手の中のバレッタをじっと見てくる。貰ったプレゼントをその場で使用しないのは非常識ではないと思うが、両陛下から贈られた時計は左腕につけている。なんとなく気まずい。嫌な人間相手にでも、嫌な態度を取るというのは案外難しいものだなと思う。「あいつがあの店の常連になったから」という理由で自分のお気に入りの店に通わなくなるのは馬鹿らしいが、かといって行ったら行ったであいつがいるから苛々するみたいな感覚。


「……明日着けます」

「そうか」


 そっけない返事が返ってきたが、マールの表情は満足気に見えた。癪に障るので気づかなかったことにした。



 停車場で馬車を下りると、遠目からチラチラ視線を感じた。

 通学は馬車か徒歩。市内からは乗合馬車も運行されていて、十時スタートの入学式に合わせてで続々と生徒が登校してきている。

 中庭にクラス編成が貼り出されている、という先生の指示に従い皆がぞろぞろ同じ方へ歩いて行く。わたしもマールもその波に乗る。

 一学年約三百人で六クラス。四年制だから千二百人が活動する学び舎は広い。校舎は年代物の石造の建物で重厚感がある。学校独特の匂いが深い部分にある何かを刺激する。苦手な感じ。学校が好きだったことは一度もない。今世は上手くやりたい。


「四年生はあっちだけど?」 

「先にお前の方へ行く」

 

 中庭には既に多くの生徒がいた。学年ごとに四隅に分けて掲示板が設置されてあるらしい。一年と四年は対角線の端と端になるのに、マールがついて来ようとする。周りの目があるから、無碍にもできず一緒に一年生の掲示板まで来た。


「前まで行くか?」


 人集りができている方へ視線を向けながらマールが言った。わたしは曖昧に返事して周囲を見渡した。

 実のところ、内申点組は一組と決まっている。人数が多いと爵位順で二組に回されることもある。もしかしたらメリアナだけ違うクラスになるかもしれない不安があった。ここに来たのは皆がいると思ったからだ。

 マールの存在が目立つお陰で、メリアナ達がわたしより先にこっちに気づいたらしい。傍まで来てくれた。


「マール殿下、ご無沙汰しております」


 オリビアがマールに丁寧に挨拶し、その横でペネロープとメリアナが頭を下げる。


「あぁ、三人とも久しいな。サラと懇意にしてくれていると聞いている。感謝する」


 マールのせいで三人が萎縮しているのがわかった。


「クラス分け見た?」

「皆同じクラスでした!」


 わたしが声を掛けるとペネロープが明るく答えた。心底良かったと思うが、


「良かったな」


 とマールが横槍を入れてくるから、再び皆が他所行きの顔で笑った。王太子の前でキャッキャ騒ぐのは憚られるから。もう早くどっかに行ってくれよ、という感情しかない。


「後は友達と一緒に行きますから、マール様はもう行ってください」


 言わなきゃ気づかないタイプなので、はっきり言うと、わたしの言葉に被せるように、


「マール殿下、ご機嫌麗しゅう」


 と声が掛かった。

 聞き覚えがある。振り向くと案の定のエリィだ。後ろにアシーナ・デカルタとユミル・コールマンもいる。スクールカーストキラキラ女子達。ぐっと足に力が入る。


「久しぶりだな」

「はい。バークレン公国ではお世話になりました。まさか他国でお会いできるとは思ってもいませんでした。新学期までにはご帰国されると仰ってましたがいつ戻られたのですか?」


 エリィが仲良さ気に語りかける。想像通りすぎる。マールと一瞬目が合った。わたしが皮肉に笑ったのは分かっただろう。


「……一昨日戻った」

「そうでしたか。旅の疲れが出たりしていませんか?」

「あぁ、平気だ」


 マールとエリィのやり取りに、勝ち誇った気分が急激に萎えた。わたしはそんな気遣い一つもしなかった。マールの機嫌をとったり媚びへつらうなんて真っ平だからそれでよいのだが、エリィがマールに良い顔して、わたしだけ悪態をついたらどうなるか。前前世と同じ道をまっしぐらなのではないか。そんなのは納得できない。だからって、エリィの行動を止める権利はないし、わたしがマールに下手に出るのも嫌だ。この葛藤をどうすればいいのか。もやもやした焦燥感が胸に詰まって息苦しい。


「サラ様、同じクラスでしたよ。宜しくお願いしますね」


 マールとの会話がひと段落するとエリィが、マールに話しかけるのと同じくらい親しみを込めて言った。非常に感じがよい。流石エリィ。なのでわたしも、


「こちらこそ宜しくお願いします。アシーナ様も、ユミル様も仲良くしてください」


 混沌とした感情を呑み込んで、負けないようににこやか答える。それに合わせて後ろにいたオリビア達も挨拶に加わる。皆同じクラスだ。カースト的にわたし達はどうなんだろうか、とか考えてしまう。爵位で判断すればエリィのグループと一つに纏まってもおかしくない。一層のことエリィがマールを諦めたら、わたしも婚約破棄していい。そしたら、皆が仲良くやれる気がする。マールがいないのが一番良いように思う。


「サラ、俺はもう行くが……」


 表面的には和やかな雰囲気の中、一瞬、心を読まれたのかと疑うくらいのタイミングでマールが言った。一年の女子に囲まれているのを場違いに感じているのか、珍しくぎこちない。


「はい、わたしは友達と講堂に行くので」

「そうか。何かあったら知らせるように」


 お前がいなければ基本的に平和だ。


「はい、わかりました」


 わたしが答えると、マールは全員に「遅くなったが、皆も入学おめでとう。充実した学園生活を送ることを願っている」とどこぞの校長先生みたいな台詞を残して去って行った。

 


 マールが消えるとエリィ達も他の令嬢に呼ばれていなくなったので、わたし達は四人で講堂へ移った。

 講堂は、半年に一度ダンスパーティーが開かれるだけあって、王宮の舞踏会場並に広い。中に入ると木製のベンチが千人分ビシッと並べられていることに驚く。誰が搬入したかと言えば業者だろう。この学校は、生徒に、掃除なんかの雑務は一切やらせないから。

 学年ごと、クラスごとに場所が指定されていて、座る順は自由らしいのでメリアナ、わたし、オリビア、ペネロープの順に横一列で座った。やっと四人だけになれたけど、現在進行形で四方から視線が纏わりついてくるのを感じる。自意識過剰ではないと思う。将来の王太子妃だから有名税とはいえ、粗探しされているようで気分は良くない。マールを狙っている令嬢はエリィだけではないのが辛い。前前世で、サラちゃんではなくエリィを推す声が大きかったのも、まずは共通の敵サラちゃんを排除しようという仲間意識が芽生えていたからではないか。一夫多妻制だから、マールが他の令嬢と懇意にしていても責められないし、わたしにとって分が悪すぎる。「俺が籠絡されると思うか」とマールがさっき宣った時、念書を書かせてやればよかった。いや、今からでも遅くないか。


「ねぇ、ねぇ、義弟君はもう来てる?」


 わたしの負の感情とは裏腹にペネロープが興味津々に尋ねてくる。そういえばノエルは何組になったのか。残念ながら別のクラスであることだけは確かだ。一組は一番前側の席なので、振り向いて後ろを確認するが、皆同じ制服で動き回っているので探せる気がしない。


「ちょっとわからないね。今度ちゃんと紹介するね」

「格好いいんでしょう?」

「うん。格好いいと思うよ」


 ペネロープはめちゃくちゃ面食いで、オタク気質なところがある。推し俳優がいてしょっちゅう観劇を観に行っている。


「何組になったか掲示板確認しておけば良かった」

「後で見に行ってみる?」

「まだあるかな?」

「どうでしょうか」


 とりとめのない会話。これから毎日こんな感じが続くのか。前前世とは明らかに違う状況にちょっと落ちつく。学校って変な場所だ。否応なしに友達と毎日会うことなんて一生のうちに学生時代だけ。

 結局ノエルは見つけられずに入学式が始まった。

 学園長が祝辞を述べて、次にマールが壇上に上がる。ざわっと黄色い声で講堂が揺れた。マールの人気が高いほど、わたしの学園過ごしやす度は下降する。目立たず地味にじっとしていて欲しい。まぁ、マールは自ら進んで騒ぎ立てるタイプではないけれど。

 講演台でマールが、自分も今年からこの学園に通うので新入生みたいなもんだが歴史ある学園で学べることを喜ばしく思うむにゃむにゃ、みたいな真面目くさった話をしている間、わたしは三つ前の席に座っているエリィを見ていた。エリィは真剣にマールの話を聞いている。名前を呼ばれたら直ぐに舞台に上がれる通路側の端に座っていることが気に掛かって仕方ない。エリィがトップ合格するのはエリィの努力なのに「ミスしていて欲しい。誰か別の人が一位であって欲しい」と黒い感情が湧き上がる。エリィに首席を取られたくないなら、自分で死ぬほど努力すれば良かった。毎日幸せだったから、まだ先まだ先、とずるずる今日まできてしまった。一番じゃないからって王妃に相応しくないとか言われる筋合いあんの? と開き直っていた部分もある。わたしは自分に甘いのだ。

 マールが壇上を下りる。あーあ、あーあ、とやさぐれた気持ちが走る。エリィのことばかりじっと見ていると、


「では、次に新入生代表の挨拶。ノエル・マカリスター君」


 と司会の先生がサラッとノエルの名前を呼んだ。え? というのと、は? というのが同時にきた。再び講堂内がざわついて、皆が注目している方へ視線を流すとノエルが涼しい顔で歩いて行く。


「もしかして義弟君?」


 隣でオリビアが囁いたけど、導火線に着火したみたいにイラッとして答えられなかった。わたしが心配していたことを知っていたくせに信じられない。絶対に後で吊し上げてやる。言えよ!

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悪役令嬢は前々世で自分を冷遇した王太子が初恋を拗らせていただけと知って仕返ししたい。 榊どら @dorasakaki

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