第3話 大げさに褒めすぎるのはもはや煽りだよねって
「やっぱり、こういうのってまず成果を上げるのが肝心だと思うの。そしたらギルドの人たちも私たちのいうことを信じてくれるかも。」
「確かにそれは間違ってないな。」
こういうのはまず『隠し持た力で』『圧倒的な結果を出して』『周りの人間を驚かせる』。これがセオリーだ。
「そうなのよ、ちゃんと話が分かるじゃない。」
ミカエルはポケットから丸めた紙を取り出す。どうやら依頼書をどさくさに紛れて持ってきたらしい。
「なので、私たちはこれから古龍討伐に行きます。」
古龍討伐……100年間誰も依頼を成し遂げることができなかった文句なしのSSSランクの依頼だ。
「本当に勝てるんだろうな?」
「愚問ね。私は大天使なのよ。」
「でも、おまえさっきギルドマスターに勝てそうなそぶりを見せてなかったけど……?」
「う、うるさいわね!! 何事も相性ってものがあるのよ!! エースだって赤犬には勝てなかったじゃない!!」
「フィクションと現実を一緒にするのは危険な兆候だぞ?」
「とにかく、私は天使!! だから歌声に浄化効果があるわけ。 数百年生きてる古龍なんて半分アンデッド化してるからいちころって話よ。」
なるほど、それなら話に整合性がある。もうギルドには戻れないし一発逆転を狙うのが正解か。
「分かった。古龍討伐クエストをやろう。」
「足だけは引っ張らないでよね。」
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依頼書の地図通りに古龍目指して進んでいるわけだが……
「ねぇ、ちょっと遠すぎない? 私もう歩けないんだけど?」
ミカエルは手ごろな枝を拾って杖代わりにして歩いている。いや、歩いているというのか這っているというのか……
「おい、街を出てまだ1キロも歩いてないぞ?」
「1キロって……あなたそんなに長距離歩けるの??」
違う。俺が望んでいた転生はそういう賞賛のされ方じゃない。
「私もう無理よ。ちょっと休憩しましょうよ。ちょうどいい感じのぼろ家があるし。」
この軟弱ものめ。でもこいつがいないと古龍討伐できないのもまた事実……
「分かった。少し休憩しよう。でも少しだけだぞ。」
ってあれ? 後ろにいたはずのミカエルの姿がないぞ?
「ちょっと何してるのよ? ここ、なんか食べ物もあるわよ~!!」
返事聞く前に一人で行動するなよ。はぁ、疲れる。
「これすごくない? おいしそうな燻製じゃない? なんの肉かは分からないけど。」
想像以上にきれいな内装だ。ぼろ家なのは見かけだけってことか。というかこれ、普通に人が住んでいるのでは?
「なかなかおいしいわね。いくらでも食べられるわ。」
「ちょ、勝手に食べるなって。」
「いいじゃない。ちょっとくらい。それにもう不法侵入してるんだから今更関係ないわよ。」
干してある燻製肉を端から順に口に運ぶミカエル。その時ふすまの奥からポン、ポンと音がする。
「何の音よ、これ?」
「鼓、ってやつか……?」
俺自身も本物を聞いたことはない。だがこの状況にはかすかに覚えがある。
「私、これ読んだことあるわよ。確か、鼓を叩くといろんな部屋に飛ばされるのよね。」
「おまえ、なんでそんなこと知ってるんだよ。」
「私部屋にひきこ……、天界は暇だからいろんな世界の娯楽を集めたりしてるのよ。」
こいつ、どうりですぐ疲れるわけだ。俺も人のことを言える立場にはないが、転生してからの3年間は引きこもっていない。俺の勝ちだな。
「鬼って、浄化効くのかしら……?」
震え声で問うミカエル。
俺もこの3年間、手ごろなパーティーと組んでそこそこのモンスターを狩っていただけだ。鬼なんてものがいるのかなんて一切知識がない。
心なしか鼓の鳴る間隔が短くなっている。
「私の記憶が正しければ、特別な刀で首を切らないといけなかったと思うんだけど……?」
ふすまが少しづつ開いていく。向こうの部屋には……
「キャー、鬼よ鬼!!」
ふと隣をみると既にミカエルの姿はない。
「ちょ、おいていくなよ!!」
急いで後を追いかける。本当に鬼だったかどうかまでは確認できなかった。命が残っているだけ良しとするか。
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異世界転生と堕天使~パーティー追放された俺の前に現れた天使は無能でした 創紀 @soki-123
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