第2話 ギルドの受付って美少女しかいないのはなんで
「何事もね、プラスに考えないといけないと思うの。だからこれもきっと神様の思し召しよ。」
一通り怒って文句を言えるだけ言って俺はもう疲れた。それでもまだ元気が残ってるこいつはやっぱ人間じゃないんだろうな。
「神なんているのか? ならこのクソみたいな状況をどうにかしてもらおうぜ。」
「……神なんていないし、もうこっちから天界に連絡する手段が残ってないのよ。非常事態のために1回だけ天使の権能が使えるようにしてもらってたんだし。」
その1回を居酒屋の支払いに充てたとは恐るべきアホだな。
「じゃあお前はお前の仕事を終わらせるまで天界には帰れないし、俺は何もできないお荷物を押し付けられたってことか?」
「それは甘いわね。私は大天使。天使の権能が使えないといっても当然下界の民とはステージが違うのよ。当然準備もぬかりないわ。」
胸元から金色のバッジを取り出す。冒険者の最高ランク、SSランクを表すバッジ。これは期待できるのか? 評価してるステージは同じだけど。
「まずギルドに行きましょう。高難易度の依頼をこなすのがお金を稼ぐコツだってのは知ってるわ。」
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「この依頼なんかいいんじゃないかしら?」
冒険者ギルドの一角。目の前には様々な難易度の依頼が張り出されている。
「これって難易度SSランクの『伝説の古龍』討伐クエストじゃないか!!」
これが達成できるなら間違いなく豪邸が買える。東京ドーム〇個分であらわされるレベルの豪邸。地方住みだったから東京ドームの大きさは知らないが。
「なによ、私を疑うってわけ? 私が誰だか分かってものを言ってるの?」
いや何も言うまい。もう俺は勝ち組なんだ。今まで俺をパーティー追放した奴らを札束で殴ることだってできるんだ。な〇う読者もドン引きするようなありえないシチュエーションで……
「すみませーん。私、この依頼を受けたいんですけど。」
「この依頼は……!! 失礼ですがあなたの等級はいくつですか?」
「等級? ああ、冒険者のランクね。これを見なさい!!」
輝く金色のバッジ。感嘆の声を上げる受付嬢。くう、転生者より転生者してるじゃねぇか。
「では今からIDを読み取らせていただきます。」
そう言いバッジを水晶へ。水晶に冒険者情報が浮かび上がるってのが見慣れた光景だ。
だが水晶は何も反応しない。
「あの……申し訳ないんですが、これでは依頼は受けられません。」
「な、なによ!!なんか文句でもあるっていうの!!」
「このバッジは冒険者登録されていません。いわばただの金色に塗られただけのただのバッジです。」
「なによ!!そんな話私聞いてない!!ねぇそんなこと言わずにわ……」
「やめないか!! 受付のお姉さんが困っているだろう!!」
知っていた。こいつがポンコツなのは、始めから。ならクレーマーになった異常者から受付嬢を守ってフラグを立てるのが最善だ。
「うるさい!! 大体あんたが教えてくれなかったのが悪いんでしょう!!」
「もしかして……この方とお知り合いなんですか?」
「いえ、全然。今日初めて会いましたよ。」
天使様からの目が痛い。だが嘘は何一つ言っていない。上手な嘘のつき方は嘘の中に真実を混ぜることだって偉い人が言ってたが、始めから嘘をつかなければいいとも聞いた。
「またパーティー追放されたんですってね。災難続きですね。」
「いえいえ、英雄というのは試練を乗り越えるものですからね。これくらい何も問題ありません。」
「……そ、そうですね。頑張ってください。」
「を、いう人は薬草採集の依頼を持ってきたりはしないよねっていう。」
くっ、このダメ天使は余計なこと言いやがって。
「いい、私は天界第6位の大天使、ミカエル。本気を出せばあなたたちなんて一瞬で木っ端みじんにできちゃうのよ!!」
「て、天使……??」
「そうそう天使。分かったならさっさと手続きしてちょうだい。」
尋常じゃない怯え方。npcが異常行動を始めたらそれはイベント発生の合図!!
「今天使って声が聞こえたか!?」
奥からギルドマスターが出てくる。なんかよく分からない強そうな二つ名とすごそうな経歴を持ってて、昔は冒険者だったっていうアレ。
「そうよ、私が大天使、ミカエルよ。分かったら早く私に従いなさい。」
「おまえ……天使教の手先か……?」
「ちょっと、何の話?」
「しらばっくれるな!! この俺の目が黒いうちはてめえらには好き勝手させねえ!!」
ミカエルめがけてまっすぐ振り下ろされるこん棒。すんでのところでそれをかわす。
「いきなり何よ!! この人頭おかしいんだけど!? 」
「うるせぇ! 天使教徒は全員抹殺だ!!」
周りの冒険者たちも立ち上がりミカエルを見る。一部の冒険者は既に武器を構えている。
「私、この人についてきただけなんです!! ほんとに何にも知らないんです!!」
「おまえ勝手に人を巻き込むんじゃねぇ!!」
「そうなのか、タクト。お前も天使教だったのか?」
「違います!! そもそも天使教って何ですか??」
「天使教……それは天使を崇拝する狂信者の集団。大罪の名を冠していたりいなかったりする7人の幹部が天使からもらったという権能を使うとの噂よ。」
「なるほど……ところであなたは誰ですか?」
「私は……序盤で意味深なことを言って伏線を張ったりキーパーソンになりがちなミステリアスな美少女。ちなみに私は今後登場しません。」
えぇ……それってただの頭のおかしい人じゃ……
「とにかくそんなわけで天使教に関連するやつは皆殺しだ!! お前ら関係者か?」
「俺は違います。」
後ろに隠れたミカエルからの反応がない。
「あの……ミカエルさん……?」
「関係はあるが、それは関係があるということだ!!」
その構文ではフォローになってないのでは……
「こいつらだ!!やれ!!殺せ!!」
一斉に襲い掛かる冒険者たち。どちらが悪役か分からない状況。やっぱり進化の先に法治国家があるんだなって。
「てあれ? ここは?」
「うむ、異世界追放ものは主人公は1話以外では敗北してはいけないからな。なんやかんやあってうまく逃げ出せた。」
分かるような分からないような説明。
「それで天使教との関連っていうのは……?」
「それは私が間違えて下界に能力を落としてしまったやつだな。それの回収が与えられた仕事の半分だ。」
つまり俺のパラメーターを間違え、さらにドジも踏んでて、その後始末ってことか。
「納得できるわけないだろ!!」
「まぁそう怒るな。本物の天使がいれば偽物なんかに負けるはずなんてないんだから。」
それもそうか。まだ古龍を討伐して億万長者計画が破綻したわけじゃない。まだ焦る状況ではないってことか。
「それにしてもなんで福音が増えてないのよ? あなた幸福を感じなかったの? これあなたの感性に問題があるんじゃない?」
我慢だ。戦場での上官の死因NO.1は背中からの銃撃なんだから。
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