全話読了済。
世に出て働く男女の二人が結ばれて、その後どうなっていくのかを書いた物語です。
これ、二人の会話が凄く良いです。
互いの立場や譲れないもの、違う価値観がそれぞれ明示されていて、それ故の葛藤や軋轢が読んでてひしひしと伝わってきます。
大抵の恋物語は結ばれたら終わりなのですが。
この話は結ばれた後の、ハッピーエンドのその先をメインに据えて書かれており、それが実に生々しいというか、地に足がついてる。
双方の言い分が「一理あるな」とうなずけて、目の前で修羅場が繰り広げられているかのような臨場感が味わえます。
「好き」という気持ちだけで全てが上手くいくわきゃない、リアリティのある恋愛劇を好む方、是非ご一読を。
この物語の美しさは、単純なレビューでは表すことができない。よって、読んだ自分の心を表現することでレビューとしよう。印象はこうだ。「美味しいと評判のケーキ屋さんのごく普通のケーキ」。オレンジ、ピスタチオ、タルト、絢爛豪華で鮮やかなケーキはたくさんあるけれど、目にとまったのは、一色のケーキ。見た目の情報からは美味しそうに感じられない、いたってシンプルなもの。それゆえ、食した時のギャップに驚かされるのだ。淡々とした文章は飾り気がなく、まるで2人の距離感のようで。名前が代名詞であるのも、それは普遍性がある。多くの人にとって共感されやすい味なのだ。ありきたりだと感じる方は、きっとジャンクな小説ばかり食しているのだ。これを機会にオーガニックに目覚めてみてはいかがだろう?