オマケ:とある絵本のものがたり


とある少女が家族で旅館に遊びに来ていた。


その旅館には読書ルームがついており、様々な本が置かれていた。


くつろぐためにお母さんと二人で来ていたのだが、

お母さんはすでに本見つけて読んでいた。


私も何か見つけて読まないと。


まだ幼い少女は自分が読めそうな絵本を探した。


その中で一冊の絵本に目が留まる。


ページの表紙には「ほしのこころの一日りょこう」

と書かれていた。


少女はその絵本にまるでこの世界ではないどこかで生み出されたような

何とも言えない不思議な魅力を感じた。


「おもしろそうかも」

気になって少女はその本手に取り、ページをめくった。


はじまるよ

と一ページ目には吹き出しで車掌の格好をした女の子が言っている

挿絵が書かれていた。


ほしのこころの一日りょこう


ちきゅうからずっとはなれたうちゅうに人がすんでいるほしがありました。


ですが、なんとそのほしは地球とちがってこころを持っていたのです。


「ああ、たいくつだわ」

おほしさんは、すでにみあきてしまったよぞらをみながら一人そうつぶやきました。


そんなあるひ、ひとりのおとこのこがほしのこころにはなしかけてきました。


「おほしさん。おほしさん。そんなところでなにしているの?」

「ほしぞらをみているの。もうあきたけど」

「なんであきたのにみているの?」

「それは、それしかすることがないからよ」

「こんなにきれいなのに。じゃあさ、ぼくといっしょに別のけしきをみにいかない?」

「あなただれ?」

「ぼくはアル。このほしのじゅうにんさ」


そうして、アルはりょこうけんと書かれたチケットをくれました。


つぎの日


ほしのこころはりょこうけんにかかれた場所でまっていました。

すると、

「おーい、おまたせ」


なんと、空にうかぶ大きなれっしゃがはしってきたのです。


「す、すごいわ。これはなに?」

「これはそらとぶ魔法のれっしゃだよ。きょうのためによういしたんだ」

うんてんせきから、おんなのしゃしょうさんがでてきました。


「ほしのいしさん。きょうはよろしくおねがいします。きっぷをわたしてくださいね」


きっぷってなんのことかしら。

そうおもったとき、アルにもらったりょこう券はフワッと光をはなち消えていきます。


そして、その光はひとのかたちになり、ほしのこころはそのひかりにのりうつった

のです。


ほしのこころはたちまちひとりのおんなのこになりました。

「これでいっしょにたびができますね。これは魔法のきっぷです。さあ、しゅっぱつしますよ」

おんなのしゃしょうさんがいいます。


「さあ、いこう。でもそのまえに、きみのほんとのなまえをおしえてくれないかな」

あるがたずねました。

「わたしのなまえは、カペラ」

「カペラ。いっしょにぼうけんにいこう」


そうして、そらとぶれっしゃはしゅっぱつしたのでした。



れっしゃはさっそくひとつめのえきにつきました。


そこには、多くのひとが行き交い、みなが笑顔で

とてもにぎわった街があったのでした。


わたしたちはそのまちからりょこうをはじめます。


まちのちゅうしんにはおおきな高台がありました。


「うわぁ。いいながめ」

「どう?ここからのけしきはさいこうなんだ」

その街のてんぼうだいからのけしきはこうだいで、カペラははじめて

じぶんのほしの、いつもとちがったけしきをみたのでした。



れっしゃはふたつめのえきにつきました


そこは、たべものの街。


そこらじゅうにおいしそうなにおいがたちこめる、しょくよくをかきたてる

まちでした。


「すごいおいしそう」


「ここのりょうりはすごくおいしいんだ」

アルがつれてきてくれたお店のりょうりのかいせつをしてくれます。

「おねえさんはすごくかわいいからサービスしてあげる」

料理長はそういってスイーツをごちそうしてくれました。


「おいしかった。ごちそうさまでした」


ほしのこころ、カペラはその日はじめておいしいということをたいけんしたのでした。



次のえきに魔法のれっしゃはたどりつきました。


アルが言うにはそこは、しぜんゆたかな街で、そこらじゅうにみどりや湖があるようでした。


「かんこうの街へようこそ。ここでは、この街にはいろんな自然のけしきがあります。わたしたちガイドがごあんないしますのでぜひたのしんでいってくださいね」


そして、私たちはとてもおおきなたきや、ひかりかがやく谷底、

きれいなみどりの庭のひろばなどさまざまなかんこうちをたのしみました。


そろそろ夕日がでてきます。



さいごの街はそこらじゅうできれいな音色がきこえるおんがく

のまちでした。


私たちはクラシックのおんがくをききながらその街でゆうしょくをたべます。

「きれいなうた」


「ちょっといいですか」


わたしがゆうしょくをたべおわったあと、

そういって、アルはまえにでました。


すると、れっしゃのしゃしょうさん。2つめの街のりょうりちょう、3つめのガイドさん、

そして、いままでえんそうをきかせてくれたひとが


まえにでてきました。


「きいてください。ほしのこころ、カペラさん。これがいつもこのすばらしいほしにすまわしてもらっているわたしたちの気持ちです」


そして、みんなでとてもこころにしみわたるようなバラードをえんそうしてくれたのでした。


バラバラなのにいったいかんがあって、みんな楽しんでえんそうしてくるのがつたわってくる音楽でした。


「ありがとう。みんな」

カペラはそのすばらしいえんそうにはくしゅをおくりました。



そうして、りょこうはついにおわりをむかえたのです。




あたりはすっかりくらいよるになりました。


れっしゃはカペラをもといたばしょにおくってきました。


「どうだった?」

アルがたずねます。


「すごいたのしかった。ぜったいまたいきたい」


わたしはすなおなきもちでこたえます。

アルはそのことばにうれしそうにするのでした。


「あっ、カペラ。ふりかえってごらん」


そこには、いつもみてきた、こうだいな夜空がありました。

ふしぎです。とうにあきたはずのけしきなのになぜか美しく、楽しさをかんじます。


そのとき、カペラは気分が高揚しているのを感じました。


きっとアルといっしょにみているからたのしいんだ。


そっか。ひとりじゃないってこんなかんじなのか。


このとき、アルとカペラはともだちになったのです。


「みて、おおきなながれぼし」

「うわぁ、すごい。きれい」


ふたりはいつまでもきれいな夜空のけしきをともにたのしむのでした。


おわり


*****



少女は最後のページをめくった。


ページをめくった先にはあとがき、と書かれたページがあった。

今まで大半はひらがなでかかれていたのに、そこには漢字がいくつも使われた

文が書かれている。


おそらく、親に向けて書かれたページなのだろう。


ほとんどは、漢字で読めなかったが、分かる部分だけを読んでいく。


その一説に、インタビューのような形式で書かれている部分をみつけた。


「この“ほしのこころの一日りょこう”ですが、なぜ列車の旅行にしたのですか?」


「うーん。それなんですけどね。僕にもいまいちわからないんですよ(笑)」

「えっと、どういうことですか?」


「うーん、何とも言えないんですけど、この作品だけはこう書かないといけない気がして。他はそんなことないんですけどね。ふとした思い付きですし、天からアイディアが降ってきたのかもしれませんね」




最後まで本を読み終え、少女は本を閉じた。




11話 物語の鑑賞会 その2


45. カペラとアルの物語 


終わり。




————————

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。


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