番外編 : 四コマ漫画的な何か その3
10話 深淵の深淵の世界
43. 泣く
「えっ、ちょっと、なんで泣いてるのさ」
「ネ、ネム~。大変だったんだね。あんなところでずっと、ずっと一人で」
「ちょっ。近い、それに泣くなよ~」
ぐすっ、ぐすっと、彼が涙ぐむの音が聞こえる。
参ったなぁ。
あの時の事を思い出してこっちまで泣きそうだよ。
「ん?」
彼がうずくまっているので鼻水がべちゃとついてしまっていた。
「……」
10話 物語の鑑賞会 その1
44. 黒液生物 その3 偉い
ネムと車掌ちゃんとシャーフ、それにチビネムが集まってきてくれた。
「集まってくれてありがとう」
「ん?それ何?」
チビネムが何か持っていたので聞く
「オミズデス」
「ケンコウスイ」
「ユメゲンテイ」
「ノドカワイタラドウゾ」
「あ、ありがと」
「オカシモ」
「クラッカー」
といって何匹かがパーンとそれを鳴らしてくれる.
「タノシミ、タノシミー♪」
チビネムたちは盛り上げようと頑張ってくれてるんだ。
偉い!
12話 たどり着いた終着駅
45. とりとめのない話 その1
「昔私を捉えようとして軍隊が出撃したことがあってね」
「え!? 大丈夫だったの?」
ネムと僕は終着駅までずっと話を続けていた。
「私にかかれば楽勝だったよ。でも、その時珍しく車掌ちゃんが落ち込んでね」
「確かに珍しいね」
「私がかっこよく背中を押してあげたんだ」
「へー、すごいね。さすがネム」
「くしゅんっ」
車掌ちゃんはくしゃみをした。
「あー。私のうわさしてるね。でもちょっと違くない?」
46. とりとめのない話 その2
「その時、せめてきたやつがさぁ。リムニウムってやつだったんだけど」
「何その元素みたいな名前」
「そいつがさ、車掌ちゃんが偉い奴だってわかったとたんすごい顔して手のひら帰すの。ほら、こんな感じ」
ネムが幻想で顔を作る
「ぷっ、あっはっはっは」
「ね、面白いでしょ」
「はっくしょん」
誰か噂してやがるな。
リムニウムは思った。
13話 明日へ
47. ゆめのような世界での記録
別れの時が来た。
ここまで一緒に旅をしたみんなと別れのあいさつを交わす。
「これ、よかったら貰ってくれないかな」
それは創造で作った、日記とペンだった。
「これは?」
車掌ちゃんが受け取り、中身を確認する。
ネムも覗き込むようにそれを見た。
それは挿絵付きの記録だった。
車掌ちゃんとネムとの出会い、草原での夢について話したこと、
探検の思い出、そして、最後に一緒に見た朝日の事まで細かく書かれている。
「この世界でのことを創造を使って日記みたいに記してみたんだ。絵本作家志望らしくね。でも、これは現実の世界には持ち込めない。だから」
もうすっかり、夢を追いかける気満々だ。本当によくここまで成長したものだ。
こういうことがあるから、ここの車掌はやめられない。
「ありがとう。大切にするね」
車掌ちゃんはそれを受け取った。
嬉しそうにしているのが顔をみなくてもよく分かったのだった。
ユメ列車ドリーム号の中には一冊だけしか書物は置かれていない。
もともと本は置かれていなかったが、
旅の仲間から贈られたものとして大事に飾られている。
本の表紙には
タイトルにゆめのような世界での記録、
作者はしゅんと書かれており、
その下の絵には夜空を走る列車と、
その中で活躍するであろう
車掌の格好をした仮面の女性と耳の生えた少女と男の子が笑う姿があった。
今日もその記録はユメ列車の運転席に置かれている。
完
-後日談-
48. 親の心子知らず
僕は両親を大事な話があるといって呼び出した。
「父さん、母さん。話があるんだ」
「急に改まってどうしたんだ?」
「その、僕、夢があってさ。絵本作家になりたいんだ」
しばらく沈黙が流れる。
その沈黙に耐えられなくなり、僕は言葉を発した。
「その、分かってるんだ。確かに絵本作家なんて、なれるか分からない博打だし、本当は勉強もしてちゃんとした職につかないといけないってことくらい。でも、それでも、なりたくて、だから、学校の勉強もちゃんとするからせめて学生終わるまでは」
「いいじゃないか。がんばれよ」
父が言った。
「え?」
「しゅんちゃん、あなた勘違いしてるわ。そりゃ、やっぱり安定した職についてもらって、できるだけ不自由ないように生きてほしいとは思ってるわ。でもね。やっぱり、大事なのは貴方が好きなように生きていくことなの。だから、夢ができたのならそれを大事にしてほしい」
「そうだぞ。だが、ちゃんと学校の勉強もするんだぞ。それも大事だからな」
なんだ。僕だけ勝手に二人の思いを決めつけて悩んでただけだったんだなぁ。
なんかバカみたいだ。
「ふふっ。父さん今それ言うのあり?」
あっはっは
と家族みんなで笑ったのだった。
49. 新入り
ここはユメの世界を走るユメ列車ドリーム号
今日はそこに新人が研修にやってきたのだった。
「初めまして。研修生のアミー・トランクイッタスです。アミーって呼んでください。車掌志望です。よろしくお願いします!」
「よろしくねー。私がこの列車の車掌だよ。車掌ちゃんって呼んでね。あと、今寝てるけど、そこの黒い液体がネム。マヨイビトが来たら起きるから、仲良くしてあげてね」
すると、アミーはネムのもとへ一直線で向かって言った。
「えー、この方が例のバクさんですかぁ」
すると、ネムは耳を振って返事をした。
条件反射みたいなものかな?と車掌ちゃんは思う。
「わ~。お耳超かわいいです!なでなでしてもいいですかぁ?」
アミーはどこか興奮したように言った。
変わった娘だな。
「プギャン!」
だが、ネムはうっとおしかったらしく、耳でアミーをバシンとはたくのだった。
「ひどいです~」
50. 意外と受け入れられてる。
「えっと、アミーちゃん。こういっちゃなんだけど怖くないの?ネムのこと」
ネムは周りでは恐れられていると思ったため、アミーの態度は車掌ちゃんにとって
かなり意外なものだったのだ。
「あ、はい。最近私がいたエリアでネムさんから生まれた黒液生物さんたちがたくさん来たんですよ。その姿がマヨイビトさんに可愛がられましてね。その影響なんでしょうけど、うちのエリアじゃ大ブームなんですよ」
「へー、そんなことがねー」
「それに、黒液生物さんたちみんなまじめに働いてくれますから、地元の人にありがとうって伝えてくるように言われてるんですよ。なにより、ネムさん可愛いですから、あ、それと現実世界でも耳を付けた少女を愛でる文化もあるそうなんでした。だから、そのつまり、私の好みにドストレートなんです。だから怖くないです」
「…ふーん」
ずいぶんクセの強い子が来たねー。
まぁ、余計なトラブルも起きないだろうし、これはこれでよかったのかな。
51. 次のマヨイビト
さて、ここはどこなのだろうか。
半分覚醒したような状態で、私は辺りを見回す。
車掌ちゃんなる人物が私にこの世界は夢と現実のはざまだとか説明してくれたが、
結局のところ要領を掴めない。
窓の外は草原が広がっているのがかろうじてわかるが、
その背景は星も見えない真っ暗な暗闇だ。
まあいいさ。たまには休憩も悪くない。
そんなことを考えながら、くつろいでいるマヨイビトを
列車の皆が遠くから見ていた。
「あ、黒液が動いた。ネムさん起きたんですかね」
アミーが言う。
「ゴジュジンオキタ、ゴジュジンオキタ♪」
チビネムたちはなにか心躍らせるように興奮しているようだ。
「そうだよー。よく見ておいてね。これからが私たちにやり方だから」
車掌ちゃんが言う。
気づかれないように、吟味するように黒い液体のネムは
マヨイビトに近づく。
なるほどね。前回の彼のようにまっすぐ夢に向かってるというより、
何か重い悩みを抱えているタイプかな。
今までにない香りがする。これはこれですごくおいしそう。
においからネムはそんなことを読み取る。
それじゃ、試し食いと行きますか。
「いただきま~す!!」
おわり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます