第7話 恋歌あれから⑦
「恋歌あれから⑦」
週末5月の暮れのこと
君と降り立つ小倉駅
あいにく今日も雨模様
優しい雨も似合う街
見上げる空から降りてくる
小さな雨は初夏の色
街の雑踏ネオン街
懐かしい街訪ね来る
移ろい暮れる大都会
魚町京町通り抜け
人の行きかうアーケード
思い出たどる二人して
路地裏 近道通り道
二人通ったこの道を
街の景色が懐かしい
まだ憶えてる2年前
雨の匂いの日暮れ時
今は二人で歩いてる
左に曲がればあの店に
洒落た灯りの「ティオペペ」に
時折一人で訪ね来て
君への思いを確かめた
一人で飲んだブラックの
コーヒーなぜかほろ苦く
いつもの席に通されて
まったく僕には夢のよう
あの日と同じワイン色
何も変わらぬあの頃と
お酒に弱い僕の腕
お酒に強い君が組む
二人寄り添う帰り道
春の嵐が吹き荒れる
「僕はあれから何度かここにきたんだ。」
「私もあれから何度かここにきたの。」
「今日はお一人ですか?ってきかれた。」
「いつものお連れ様は?ってきかれた。」
「次はご一緒にどうぞって。」
「次回はお二人でどうぞって。」
「とても悲しかったんだ。」
「うん。悲しかった。」
僕は君を
大事に大事に包みこんで
なぜか寡黙になって
それから
幸せを何度もかみしめながら
それから
君の存在を確かめながら
「これからも一緒にいよう。」と
また言ってみたんだ。
まるで「恋の歌」みたいに。
恋歌あれから 詩川貴彦 @zougekaigan
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