3-8
他にもいくつか話をしたあと、夕月と一輝は解散した。
「ありがとね。部長にも伝えておくよ。」
一輝はこのあと用事があるため、帰りは反対方向に歩いていった。住宅街を歩き、麻陽家に辿り着く。
「ただいまー。」
おかえりの声は聞こえなかった。菜月はバイト、宇月は二階にいる。夕月は家の鍵を内側から閉めると、宇月のいる二人の部屋へと向かった。
二階では、夕月の予想通り、宇月は勉強をしていた。宇月は優秀が故に、難関校と呼ばれる高校を受験しようと考えている。
「兄さん、どこに行ってたの?」
「一輝と会いに。」
「一輝に?」
宇月にとっても、一輝とは思い出がある。逸模野公園で出会い、よく遊んでいた。一輝が中学生になると、一輝の中学校生活と宇月の中学受験が多忙になったので、全く会わなくなった。公園で走り回ったり、ブランコで遊んだり……そして、夕月の超能力で不思議な現象を起こしていた。
「聞いた話だと、一輝が超能力を手に入れたんだって。発火しかできないみたいだけど。」
「え?」
宇月は、勉強の手を止め、おもむろに立ち上がった。
「一輝が超能力を手に入れたって?」
「厳密には超能力ではないらしいけど。もしかして宇月、まだ超能力が欲しいと思ってるの?」
宇月は、否定も肯定も出来なかった。
僕達は超能力がつかえない。 三竿 @pokappoka
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