2

「ようやく終わった。」


そう呟いて私は手に執っていた万年筆を置く。

書くことが出来ても完成させられない実情にピリオドを打てた。これでまた一歩前進できただろうか。


そう。ベランダにいた彼女はそういう風に淡々と生きている。

妙に整った「物語」という文章せかいで私に描かれる者として生きている。

彼女のようにのほほんと生きられる人なんて早々いない。

それが彼女が描かれる者である証拠だ。

そして今描いている私も。

描く側である私も、描かれているかもしれないと考えなければと少し思った。

なんてことない。

ただの夕暮れの現実逃避かもな。

そして私は一人、私を可笑しいと笑った。

夕暮れの日の光が一瞬、炭酸のように見えた。

もしかしたら

西日も私と共に私を

「可笑しい」

と笑っているのかもしれない。

そう思ったら何だか一人じゃないような気がして楽しいなと思った。

そんな今日のどこか可笑しくて楽しげで病んでいる私がいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ここは妙に整った世界、そんな気がただしている 雨空 凪 @n35

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ