最終話 管理人のこれから

 学園襲撃事件から半年が経った。


ブリングたちをけしかけた【深海の太陽】のリーダー・ステイトンは事件後すぐに身柄を拘束され、パーティーは解散。積み重ねてきた栄光の日々は一瞬にして灰と化した。

さらに黒幕と目されていた者たちも芋づる式に発覚し、中には王家の人間もかかわっていたと発覚。国中が大きく揺れる事態となったが、


 その後、俺たちは国王陛下から勲章を贈られる。

 学園の危機を救った六人の学生たちと――なぜかただの学生寮管理人である俺まで受け取る流れに。

サラは「欲しがってもらえる物でもないし、今後いろいろと役立つわよ」とアドバイスをくれたが、俺としてはあまり実感が湧かなかったりする。一番活躍していたのはリゲルやミアンたちだったからな。


 ――ただ、この勲章は俺に新しい目標をくれた。



「ふぅ……朝の勉強はこれくらいにしておくか」


 早朝の王立学園。

 朝霧が立ち込める時間帯から起床した俺は管理人小屋でひとり勉強に励む。そこへいつものように使い魔のラドルフがやってきた。


「そろそろ朝ご飯にするにゃ」

「ああ、そうするか」


 現在、学園は春休みの真っ最中。

 多くの学生は故郷へと里帰りしており、校舎はしんと静まり返っていた。一部の学生は残って自主鍛錬などに汗を流しているが、本当に限られた数だな。


「朝飯は……パンでいいか」

「それだけにゃ? たまにはもっといい物を食べるべきにゃ」

「いいんだよ、俺はこれで」

「明らかに栄養不足にゃ! 料理の勉強をするか料理上手な嫁をもらうにゃ! サラとかどうにゃ?」

「私のこと呼んだ?」

「「うわっ!?」」


 まるでタイミングを見計らったようにサラが入ってきたので俺もラドルフも飛び退くほどに驚いた。


「な、何よ、その反応は……人をバケモノか何かみたいに」

「そ、そういうわけじゃないよ。ちょっとタイミングが良すぎて」

「タイミング? 何のことかサッパリ分からないけど、とりあえず勉強の方は順調なようね」

「えっ? あ、ああ」


 サラの視線の先にあったのは俺が勉強に使っている教本だ。


 三日後、俺はこの学園で教員としての採用試験を受けるつもりでいる。


 本来はもっといろいろと手順を踏み、三次試験くらいまで受けなくちゃいけないんだけど、そこはキュセロ学園長とスミス副学園長からの推薦でパスできた。

 なので、俺がクリアしなければいけないのは最終試験のみとなっている。


 サラは学園襲撃の件もあるから合格確実と太鼓判を押してくれたけど、だからと言って何もせずに挑むわけにはいかない。まあ、結果が出たとしても採用自体は来年度ってことになるらしいから、それまでは管理人としての仕事をしっかりやらないとな。


 暖かな春風が吹く中、俺はこれからの未来へ思いを馳せる。

 戻ってきたミアン、リゲル、フィナ、アデレート、ニコール、レオンたちへいい報告ができるよう、頑張らないとな。

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魔剣学園寮の管理人は【育成スキル】持ち ~仲間たちからの裏切りにあって追いだされた俺は、再就職先で未来の英雄たちからめちゃくちゃ頼られる~ 鈴木竜一 @ddd777

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