【裏歴史 裏四神】

(裏歴史・・・・裏四神・・・・)


 叔父の口から出た言葉を調べてみたくなり、部屋に戻ると私はPCを開き検索をかけてみた。

 すると、裏歴史についての情報や考察ページは思っていた以上に沢山ヒットした。


(けっこう知られてることなのかな・・・・)


 歴史の授業自体は苦手でも嫌いでもないが、かといって自分自身で率先して色々と調べるほどの興味はなく、そんな私にとってこの検索結果は意外なものだった。

 

 もちろん歴史学者の考察から素人の都市伝説的とんでも考察まで入りじり、実際に正しいのか妄想なのか定かではないが、要は日本書紀から以降、『この国は数々のこんな出来事を経て現代に至っているんですよ』と明らかにされている歴史の裏に、明らかにはされていないもうひとつの──あるいは真実の──歴史があるという説であり、いくつか読んでみた限りでは、そうであってもおかしくはないような気はした。

 

 特に時代ごとの、いわゆる時の権力者たちには〈表の役〉と〈裏の役〉があり、つまり世の中側に出る看板役とその裏で実質的に政治などを動かす指南役がいるという話は、たとえフィクションであっても読み物としては面白いと思った。


 ただ、それらはあくまでも現実的な人間たちの話であって、1番知りたいこの松埜まつの家の謎である〈おのろし様〉の存在のような事柄について記載をしてあるページは見当たらなかった。


 さらに叔父が言った〈裏四神うらししん〉については検索をしてもヒットしなかった。


 が──


(あれ?)


 言葉の並びなどを変え、何度か検索をしているうちに〔四方位の神々と謎の真中神まなかしん〕というタイトルと、その下に見覚えのある名前があるのが目に入った。


 三国川龍介みくにがわりゅうすけ


 民俗学の特別授業のため来校したあの大学教授、その人だった。


(あの先生ブログやってるんだ・・・・)


 見てみるとかなりの数の記事が並んでいる。

 10年ほどは続けているようでアクセス数もそこそこある。

〔四方位の神々と謎の真中神〕というタイトルの記事は半年ほど前に掲載されたもので、コメントもいくつか付いている。


 読んでみると、例の玄武~白虎までの四方位を守りつかさどるとされる存在についてが中国の歴史と絡め綿密に書かれてあり、方位を重んじて京のみやこが作られた背景なども含めてとても読みやすい記事となっている。


(え・・・・これって・・・・)


 そしてさらに読み進めた時、ある一文に私の目がピタリと留まった。


『そして歴史的立証のされていない謎の存在として四神の中心に座す真中神まなかしんは、密かな説として驚愕や恐怖を意味する〈おどろし〉と呼ぶ地域もかつてはあったと──』


(似てる・・・・)


 おどろし──おのろし。

 偶然だろうか?

 にしては語感と響きがかなり似通っている。


(まさか・・・・)


 もし、三国川教授が調べたこの真中神まなかしん=とある地域的呼称の〈おどろし〉という存在がこの松埜まつの家の〈おのろし様〉と同一であるとしたら、一族以外には決して知られてはならないはずの秘密を教授が知っていることになる。

 もちろん似ているだけで別の、まったく何の関係もない可能性もある。

 むしろ今のところはそちらの可能性の方が高いかもしれない。


 けれど、気になる。


 松埜まつの家のことを伏せた上で、どうにか上手くこの真中神=おどろし、についてを三国川教授に聞いてみることは出来ないだろうか──

 掟に触れる禁忌なこととは思いながら、私はうちから知りたい衝動が沸き上がってくるのを感じていた。

 

 

 


 


 



 

 



 

 

 


 

 

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