②
最近不思議で仕方ないのは、
新垣 透というホストの正体。
バス停で待つ彼の姿を確認すると、必ず誰かしらに囲まれていて。
『トールさん、車出しますよ?』
『いや、いーよ。バスで帰るから。』
『透クン、今度うちの店にも顔出してよ~?』
『ええ、近々伺いますよ。』
いつも乗車前には、
熱烈なお見送りが繰り広げられていた。
『次は×××────…。』
またひとり、乗客が減り。
終点間近になれば訪れる、ふたりきりの時間。
(っ…──────!)
…勘弁して欲しい。
こうもじっと見られては、運転中だと言うのに気を取られ業務に支障をきたしてしまう。
どうして彼が私に、ラブレターなんかを寄越したのか。
あの野菜は…餌付けか何かか?
だとしても野菜って、なんなんだ?
一番不可思議なのは、
人気のありそうなホストが、どうしてこんな山奥までバスなんかに乗っているのか。
気付けば一日中、彼の事ばかり。
餌付けの品に添えられた恋文は、
二通目になった。
─────拝啓、蓮村 真幸様
あれから如何お過ごしでしょうか?
少しは僕の事を意識してくれたようで嬉しいです。
野菜はうちで育てた新鮮な物です。
美味しいですから、是非召し上がって下さいね。
今度うちに遊びに来ませんか?
料理が得意なので、腕を振るってご馳走しますよ。
家族も紹介したいので。
良い返事をお待ちしております。
──────新垣 透
(じゃあなんで連絡先を書かないんだ…)
告白して家族とか…
奥さんでも紹介するつもりなのか?
これも彼の意図的な作戦…?
放っておけばいいのに。
気になって仕方ないから。
これじゃあまるで私が─────…
「…あの…」
振り返った彼は、どこか嬉しそうで。
「これを――…」
余りにも眩しすぎて俯きながら、
私は、白い封筒を…彼に差し出した。
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