閑話2
レイスが店の奥から戻ってくるとレンカたちに声をかけてきた。
「あ、レンカちゃん。メルティ会長が部屋までどうぞだって!上がって上がって!お友達も一緒にどうぞ。」
「了解です。お邪魔させていただきます。」
「お、お邪魔します…。」
部屋に移動していると、レイスがそっとレンカの腕を取ってきた。
「…レイスさん?」
「ん?なぁに?」
「少々歩きにくいのですが…。」
「…いや?」
「いいえ、キレイな女性に密着されるのは嬉しいですが、緊張してしましますね。」
「ふふん。じゃあ問題ないわね~。それにそういうセリフをサラッと言える人はこんなことで緊張なんてしません。」
軽口を叩きながら奥へ進んでいくと、ちょっと豪華な扉の前でレイスがノックをした。
「会長、レンカ君をお連れしました~。」
「そう、入ってもらっていいわよ。」
部屋の中から入室許可の返事が返ってくると、扉を開けてレンカとファルガが入室する。
部屋の中は、豪華ではあるが、それが嫌味でないちょうどよい雰囲気の部屋だった。
「お久しぶりです、メルティ会長。お忙しい中お時間をいただきまして感謝いたします。」
「あはは、そんな硬い口調はやめて頂戴。普通にメルティでいいわよ。用事を聞く前に、そちらのお友達を紹介してくれない?」
「はい、こちらは私の友人でファルガです。本日はこのファルガの用事で少々お時間をいただきに来ました。」
「ふぅん?ああ、立たせたままでごめんなさいね。どうぞ座って頂戴。」
部屋の中でソファーに座っていたキレイな女性と挨拶を交わすと、ソファーへ案内されたので、遠慮がちに腰掛ける。
「レンカちゃんはコーヒーでよかったわね?そちらのファルガ君は?」
「あ…、その…、お構いなく。」
「彼もコーヒーでお願いします。すみません、少し慣れない環境で緊張しているようで。」
レンカはすっかり緊張で呂律が回っていないファルガのフォローを入れながら、今回の本題を切り出すことにした。
「それにしてもレンカちゃんからお願いだなんて珍しいこともあるのねぇ。レンカちゃんのお願いなら、できる限り聞いてあげたいのだけど何かしら?」
「はい、ここではちょっとしたサービスを行っていると思いますので、空いている方にこちらの実験に付き合っていただけないかと思いまして。もちろん危険はありません。」
その話を聞いてメルティは不思議そうな顔をした。
「実験?なんか物騒な響きだけど、レンカちゃんが危険がないということはそうなのでしょうね…。それでどんな実験なの?」
「それが彼が新たに開発した眼鏡なのですが、この眼鏡には特殊な技巧が付与されていまして、その効果ですが、その…衣類が透けて見えるようなのです。」
話を聞いてポカンとした表情をしたメルティが言葉を探しながら聞き返した来た。
「それはすごい効果だと思うけれど、それってこの店じゃなくてもできるんじゃない?」
至極もっともな言い分だった。
「いえ…そうなのですが…。それが実験をする際、男の裸で試したくないとの要望でしたので。その辺の女性に試すわけにもいかず、その手のサービスを行っているこの商会のお力をお借りに来た次第です。」
とても言いにくそうに事情を説明するレンカ。ファルガも気まずそうに下を向いていた。レンカの回答を聞いたメルティはとうとう噴き出していた。
「あはははは!なるほど、そういうことね!確かにそれなら仕方がないわ。男の子なら女性に興味を持つのは当然のことだし、その実験に付き合ってあげる。」
「ありがとうございます。…しょうもない理由で申し訳ないのですが。」
「うふふ。謝らないで。せっかくだから、実験だけじゃなくておもてなしも受けていってね。サービスするわよ?」
メルティは実験に快諾すると、流し目で色香を放ちながら誘ってくる。
「あはは、実験をするのは彼ですので、サービスを受けるかは彼にお任せしますよ。」
「あら、レンカちゃんは受けていかないの?」
「はい、邪魔にならないところで待たせていただければ。」
「え~、残念ね…。レンカちゃんならお金はいいからサービス受けて欲しい子いっぱいいるわよ?…なんならわたしでもいいわよ?」
「大変魅力的なお誘いではあるのですが…、ハマってしましそうですのでご遠慮させていただきます。」
メルティはレンカの回答に不満そうな顔すると、1人分のサービスを受けれる人を探しに行った。その間、先ほどから一言も話さなかったファルガがレンカに話しかけてきた。
「ま…マジで?マジでいいの?大人の階段上っちゃっても?」
「…ああ、メルティ会長もこう言ってくれているのだし、好きにしてくれ。」
レンカは疲れたようにそう回答すると、ソファーに深く沈み込んだ。ちらりと隣のファルガを見ると、だらしない顔で興奮している。
(すごい顔だな…。普段は割と整った顔をしているのにそういうところが良くないと思うんだがな…)
「おまたせ。えっと…そう!ファルガ君。あなたのお相手する子が準備できたから、この子について言ってちょうだい。実験の話はしたから部屋に入ってからは自由にしていいわ。」
「初めまして、ファルガさん。今回のお相手をさせていただきます、ミヤビと申します。かわいがってくださいね。」
メルティがかわいらしい女性を引き連れて戻ってくると、ファルガに視線を向けてその連れてきた女性、ミヤビが挨拶をした。
「こここ…こちらこそよろしくお願いします。」
ガッチガチに緊張したファルガがその女性に手を取られて会長の部屋を出ていくと、ミヤビはファルガが居なくなって空いたレンカの隣に座った。
「…メルティ会長?」
「少しお話ししましょう?レンカちゃんあの後全然お店に来てくれないんですもの…。」
「すみません。なかなか私が入りやすいお店ではないので…。」
「うふふ、確かにうちの店は、そういった商品を買いに来る人か、サービス目的の人ですものね。気持ちはわからなくもないわ。」
「そういっていただけると…。その後、被害を受けた方々は?」
「そうね…、気持ちの整理がついてない子いるけど…。ほとんどの子が前を向いてお仕事しているわ。レイスもだし、さっきのミヤビ、…そして私も。」
「それは…よかった。助けられない人もいましたし…。もし、やあの時こうしていればと今更どうしようもないことを今だに考えてしまいます。」
「…そんな顔しないで。私たちはあなたに助けられて、今をこうして生きているわ。だから失ったものを数えてしまうのは仕方のないことだけど、救えた人がいることも忘れないで。」
メルティはレンカに体を寄せて、寄りかかると、優しい言葉で、そして強い感情がこもったお礼をレンカに告げた。
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