第6話

~ガレスチーム~

物資を運搬しつつ、ガレスたちも中継拠点を目指して移動していた。

現在E地区に到達し、本日はE地区の中間まで移動する予定だ。

「今回は神兵とのエンゲージは無し、か。今のところ順調だな。」

今回は運がいいのか、ガレスたちは神兵との戦闘がないまま進行していた。

「そうっすね。消耗が無いんでありがたいといやありがたいっすけど…、今回作成した機工の性能試してみたいんで少数なら歓迎なんですが。」

ファルガはガレスがこぼした言葉に反応して、そう返した。

「D地区に入れば嫌でも試せる機会はあるわよ。消耗が無いのは歓迎なんだから、敵との遭遇なんて望まないでよ。」

ファルガが不満げに言った言葉に、ハオリが言い返した。

「ハオリの言うとおりだな。だが、E地区とはいえ中域に到達すれば遭遇0は考えにくい。レンカのように高速移動していれば別ではあるがな。各自警戒は怠るなよ。」

「「はい。」」


ピピッ

本日の目標到達地点まであと少しといったところで、各自装備している小型探索機から反応が返ってきた。小型探索機は今から10年前にプロトタイプが発明され、人類は現在まで精度や範囲の向上などの改良を重ねてきた。神兵が発する特殊な電波を感知し、探索域内に入った神兵がいれば警告音を発して知らせてくれる機械機工装置だ。

「神兵か…。もう少しで今日の目的到着点だったのだがな。…2体か、獣タイプだな。2人とも戦闘準備しろ!」

「「了解!」」


身を隠しつつ神兵の反応があった地点まで移動する。すると、2体の4足歩行型の神兵を目視できた。その姿は犬に近く、大きさは一般男性の腰くらいまであるだろうか。

「狼型だな。まず俺が2体の注意を引く。その間にハオリは拘束用の魔術を練り上げろ。拘束がすんだらファルガと俺で接近し、とどめを刺す。まだ、初日だ。危険がない限り消耗のある武器の使用は避けろ。」

「「はい」」

「では、行動を開始する。」

ガレスとファルガは身体強化魔術を発動し、戦闘準備を行い、ハオリは拘束用魔術の準備に入った。

ガレスはサイドバックから小型ナイフ(レンカお手製の振動ナイフ形魔道具)を2本取り出すと魔術を起動し、2体の神兵に向かって投げつけた。

「「ギイッ!?」」

不意を突かれた神兵はナイフを避けれずに胴体に命中し、声を上げた。

「ハオリッ!」

「発動します!事象変換、アースバインド!」

ハオリが魔術を発動させると、神兵が立っている地面が沼のような形状になり、神兵の足が沈み込む。

「「ギッ!」」

神兵は足を地面から引き抜こうとするが、足が沈んだ後にすぐに普通の地面に戻ったのでなかなか抜け出すことができない。

「ファルガ!1体任せるぞ!」

「任されたぜ!」

その隙にファルガとガレスは神兵に接近すると、ガレスは振動型魔道具の手甲を装備した腕を振り上げ、ファルガは腕に装備した手甲に杭が装着された機工武器を繰り出す。

「ふんっ!」

ガレスが神兵の頭に拳を振り落とすと、殴られた箇所が陥没しダメージを与える。

「まだまだぁ!」

降り下ろした拳とは逆の拳で神兵の頭を顎下からかち上げ、再度逆の拳を振り下ろす。

5回ほど殴りつけると神兵は動かなくなった。

一方ファルガのほうは、

「これが!漢の!パイルバンカー!!」

機工を装着した腕で神兵を殴りつけた。

拳が神兵の頭にヒットすると、その衝撃を感知した機工が杭を前方に射出する。

杭が神兵の頭に衝突すると、あまりの衝撃に神兵の頭が弾け飛んだ。

「っしゃあ!一撃!」

「うわっ!エッグ…」

ファルガは新しい機工の威力に満足して笑顔だが、それを見ていたハオリからドン引きされていた。

「…周囲に神兵の反応なし。戦闘終了。」

ガレスがそういうと、2人とも緊張を緩めていく。

「よくやった、2人とも。ハオリは魔術発動のタイミングが完璧だったぞ。ファルガも連携がうまくなったな。新たな機工の威力も十分だった。だが、うるさかったぞ。」

「ありがとうございます、ガレスさん。この魔術は変換ロスも少なくて使い勝手がいいです。」

「でしょ!?ありがとうございm…うえぇ!?」

ハオリは褒められたことにお礼を言い、ファルガは褒められていたが、最後注意を受けたのでちょっと反省した。

「とりあえず戦闘は終了だ。本日の移動はここまでとする。近くに簡易拠点を作るぞ。」

投げナイフを回収しながらガレスは2人にそう言った。


簡易拠点が完成し、一息つくと通信に反応があった。

「こちらガレスだ。レンカか?」

『はい、レンカです。お疲れ様です。』

「お疲れ。何かあったか?それとも定期報告か?」

『定期報告のほうです。こちらはD地点中域まで到達しました。日も落ちそうですので、本日はここまでにしようと思い、その報告を。現在、神兵や周りの状況に特に変化や注意する点は見当たりません。』

「もうD地点中域か…。了解した。特に注意点がないならば何よりだ。現在E地区の中域に到着した。こちらも特に前回から大きな変化はないな。神兵との戦闘はあったか?」

『はい。E地区では出口付近で11体の翼人型低級神兵と戦闘し殲滅、D地区では中域までの移動中に地上獣型低級4体、少し移動して地上昆虫型低級3体、少し離れたところに地上ヒト型低級2体、いずれも撃破しました。大きな損耗もありません。』

レンカからの通信にガレスたちは呆れたように反応した。

「…戦闘しすぎだ。それを単独で行えるのだから相変わらずの戦闘能力の高さだ。だが、翼人型低級が11体だと?お前なら確かに単独撃破可能だろうが…E地区でそれは運がなかったな。」

『まあ…、もともと運は無いほうですので、諦めています。そちらは?』

「こちらは地上獣型2体だ、殲滅も完了している。損耗無しだ。」

『2体ですか…ついてますね。損耗が無くて何よりです。以上で報告は終了です。』

「了解した、そちらも警戒しつつ損耗分の回復に努めろ。」

『了解しました。では通信終了し』

「ちょっと待って!」

『うわっ!びっくりした。ハオリか?何か報告があったかい?』

「…報告じゃなければ話しちゃいけないの?」

『いやいや!そんなことはないよ。言い方が悪かったな、ごめん。』

レンカはとても不機嫌そうなハオリの声を聴いて、フォローに回った。

「…まあ、許してあげる。それでね…」


その後ハオリとレンカは他愛ない話をしてから、通信を終了した。

ハオリは上機嫌だったが、レンカのほうは戦闘より疲れた顔をしていたのはおそらく気のせいである。


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