第2話
案の定、僕はトップの成績をとった。が、僕の頭の中はあの女性のことでいっぱいだった。寝ても覚めてもあの女性の姿がちらつく。雑念…ではない。少なくとも僕にとっては、必要な感情だった。雑念に近いが雑念からは限りなく遠い。大事な感情。胸に手を当てると、ほんのり温かい。この感情を大切にすると決めていた。初恋だから。
そんなことを考えながら、僕は眠りに落ちた。
「ここは…?」
ふわふわとしたところ。ここがどこなのか見当がつかない。上なのか下なのかすら分からない。感覚器官も役に立たない空間。ただただ漂う。漂って、漂って、どれぐらい漂ったか忘れてしまった。何も感じないし、何も考えられない。雑念がなくなった代わりに、退屈な日々を送る。今日も明日も変わらぬ日々。
「ハッ!」
ふと目を覚ます。何という夢だろう。悪夢と言うのだろうか、否、うなされてなどいないし、違うだろう。何も感じなかった。変化のない空間。もちろん、自分の外見も、年齢も、果てには寿命までも変化しない。時が止まったよう、という表現がぴったりの空間だった。今考えると恐ろしい。
喉が渇いたので、階段を降り、一階に行った。そして、冷蔵庫からジュースを取り、イッキ飲みする。大丈夫です!ビールじゃないですよ!
信じられないものを見た。会えるはずなどないと思いこんでいた。自然と鼓動が早くなる。そこには、
片方の目が異様に長い髪で隠れているところを見て確信した。ゆっくりと近づいてくる。形を持った奇跡が。緊張のあまり、体が硬直する。声が聞こえる。
『………て。』
あまりよく聞こえなかった。僕は意識を手放した。
あの日、僕は一種の病にかかった るり @k197
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。あの日、僕は一種の病にかかったの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます