第57話 秋ツーリング その2

久しぶりのフルメンバーでのツーリングは、やっぱ楽しい。

ソロツーも良いけどマスツーも良い。

どっちも楽しいんだけど楽しさの種類がちがうんだな。なんて言うか、ツーリングは楽しい、これを前提として、マスツーは輪をかけて楽しい、より楽しい。ソロツーはより自由に、より開放的に、って感じかな。

どっちが良い、どっちが楽しいじゃなくて、どっちも楽しくてどっちも良いって事なんだと思う。

まあ、マスツーって言っても総勢5人だから、まだソロに近い感覚なのかな。

たまに何十台と連なるアメリカンや旧車の集団に出くわす事があるけど、あそこまでいったらどうなんだろう、いつか俺もそういうツーリングに参加することがあるのかな。


「さって、そろそろ動くかあ」

「行きますか~」

コンビニでの昼食後、いつも通りクスダさんの一声で動き出す。とは言え、すぐに走り出す訳じゃない。

「あ、じゃあトイレ」 とか

「ごみ捨ててくる」 とか

「ルートどうする?」 みたいな事が始まる。

このだらだら感もマスツーの楽しいトコだよな。

ちなみにこの5人のツーリングだと、クスダさんとアマイさんがルートを決めてくれる。ケンゴ、テル、俺の3人は付いて行くだけだから超楽チン、頭も気も使わずに只々楽しく走るだけ、いつもありがとうございますw。

まあたまに、「あれ? これ道違くねえ?」 「いいよ、行こう行こう」

みたいな会話を信号待ちでしていたり、

「あ~、これ全然方向ちがうわ、UターンUターン」

みたいな事もあるけど、それすらも楽しい、トラブルもなんもかんも全部ひっくるめて楽しいんだ。


という訳で、今回もルートは良くわからないw。大雑把に言えば、富士山を左に見ながら沼津に来て、同じく富士山を左に見ながら帰っている途中だ、多分これから須走すばしりとかそこら辺に行くんじゃなかろうか。

だんだん車が多くなってきたなあと思ったら渋滞にはまった。渋滞はきらいだ、しかもこの道は緩やかな上り坂で、半クラが下手くそな俺はアクセルを余計に開けないとエンストしそうになる。シュウマイで有名な崎陽軒のある道だ。こう言うピンポイントの記憶っていつまでも残るけど、いつとか、どこ行った時、とかは忘れちゃうんだよなw

なんて考えていたら、 ドドンッ!ドッドッドッ… ドドンッ!ドドドドッ!と

いきなりデカい音が聞こえて来た。

見ると、コンビニの駐車場でアメリカン軍団が出発しようとしていた。

(ハーレーか、でけえ音だな) 

タカタッ タカタッ タカタッと特徴的なアイドリング音も聞こえる。

と見ていると、1台のビンテージハーレーがガシャン!とひっくり返りライダーが放り出され。周りの仲間があわてて助けに入っていた。多分だけど、ハンドルロックしたまま走り出そうとしてコケたっぽい。

(ハーレーはイグニッションとハンドルロックが別々なんだな、ハーレーに乗る時は気を付けよう) まあ、持ってないけどw、買う予定もないけどw。


渋滞を抜けて、高速に乗る事になった。

そこそこ時間を食ったってのもあるけど、それよりなにより急激に冷えてきたから、とっとと帰ろうとなった訳だ。

最寄りのインターから高速に乗り走り出すと、指先と体が寒さでキュッと固まる。

(おいおい、さっきまでの暖かさはどこ行ったんだよ)

冷風と戦いながら走る。静岡を離れて山梨県に入るとジワリと暖かくなった。双葉SAで一旦休憩。

「は~、あったけえ」

「寒かったり暖かかったり忙しいなあ」

「心配すんな、この後またちゃんと寒くなるからw」

「いや、そんなちゃんとはいらないっすw」

そんな会話をしてからまた走り出す。

このままさらにかっ飛ばして諏訪まで行っても良いんだけど、韮崎で降りて下道へ。

ここから先は比較的車の流れが良いし高速代の節約にもなる、走行風も弱まるし。


しばらくおとなしく国道を走る、バイクでこの道を走るのも慣れた感があるなあ。

特に楽しい道ってわけじゃないけど信号が少なくて走りやすい、距離を稼ぐための道って感じかな。そして長野県に入る頃にはちゃんと寒くなってきたw。おなじみ富士見茅野ゾーンだ。

まだ休憩後からたいして走ってはいないけど、たまらずといった感じで先頭のクスダさんがコンビニに飛び込む。

「寒っ!」

「なんだこの寒さは!」

「さみ~!」

メットを脱ぐなり口々に寒い寒いと言葉が飛び出す。

「いやマジ寒い、何コレ、何ココ?」

「沼津に帰ろう」

「せめて甲府に帰ろう」

「いや、甲府を持ってきてくれ」

「持ってくるはムリw」

こういう時ってやたらと口数が増える。

「手がヤバい!」

テルのグローブは相変わらず指切りタイプだ。

「そら寒いだろ!」

「寒いに決まってるわ!」

ソッコーで俺とケンゴから突っ込みが入る。

「え? 何で普通のグローブしないの?」

「呪いの指切りグローブなん? 装備解除出来ないの?」

安定の指切りグローブネタ、水戸黄門の印籠くらい安定している。

もしかしたらテルはこの一連の会話の為に指切りグローブをしているのか?とチラリと考える。まさかと思うけどテルならおおいにありうる。


みんなしてホットドリンクを買って、手をあっためながら駐車場に戻る。

「は~、あったけえ」

「なんか今日、寒いと暖かいしか言ってない気がするw」

「たしかにw」

「こう寒くちゃ、もう今シーズンのツーリングも終わりかな」

クスダさんがそんな事を言った。

「いやいや!11月も行けますよ!ってか行きましょう!」

「そうは言ってもなあサイトウ、震えながら乗っても楽しくねえじゃん」

「まあ、そうですけど…」

「寒いと体が固まるし、タイヤもグリップしなくなるからなあ」

アマイさんもクスダさんの意見に賛成みたいだ。

「暖かいのは昼間だけだからなあ」

「これからどんどん寒くなるしなあ」

ケンゴとテルも乗り気じゃなさそうだ。

「そっかあ… そうだよなあ…」

(今シーズンみんなでのツーリングはこれが最後かあ…)

楽しい時間が終わる、楽しい祭りが終わる、みたいなちょっと寂しい気持ちになる。

そんな気持ちが表情に出てしまったのか、見かねたクスダさんが、

「まあ乗るなら9時~3時ってとこだな」

「いや、10時~2時でw」すかさずアマイさんが訂正して、2人が俺を見てニッと笑う。つられて俺もニカッと笑って、

「そうっすよね、昼間だけのプチツーもありっすよね?」

「そうだな」

「それならアリだな」

ケンゴとテルも賛同して、クスダさんを見る。

「そうは言っても11月入るとホントに朝晩寒いからなあ、冬季閉鎖の道も出てくるだろうし…」

クスダさんはそこで言葉を区切ってみんなの顔を見てから一言。


「で?いつ行く?」

最高。


















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