第52話 つまり、そーゆー事。
カブのシフトダウンは ブン!ブー ブゥン!ブー
つまり、そーゆー事。
ガウウゥーーッ!!
ニンジャ特有の荒っぽいエキゾーストノートが吐き出され、前を行くクスダさんが加速していく、そこに俺のXJR、アマイさんのCBが続く。
早朝、峠、二人に挟まれて走りながら(もちろんペースは落としてもらってる)俺はある事を練習している。
それは何かというと、
ガウッ!ガウッ!ゥゥーン…
短く鋭い排気音が聞こえ、ニンジャがコーナーに侵入していく。
これ! これよ!
このシフトダウンの時にアクセルふかすやつ。
いわゆる、車で言うところのヒール&トゥなんだけど、バイクだとブリッピングシフトダウンとか言うらしい、もう名前からしてカッコいい。
何往復か走って、その間練習するんだけど中々うまくいかない。
休憩に入るとすぐにアマイさんが、
「サイトウ、シフトダウンガックンガックンしてるぞw」
「あ、やっぱり分かります?」
「後ろで見てりゃあ分かるさ」
「何よ?、ガックンガックンて」とクスダさん。
「いや〜、今ブリッピングシフトダウンの練習してるんですよ、二人がやってるの見てカッコいいなって」
「なるほど、それでガックンガックンかw」
「ブレーキをギュッて握っちゃったり、回転が合わなかったりでうまくいかないんすよ」
「まあ、最初はそうだろうなあ」
「慣れっつーか、感覚を覚えないとだしな」
「シフトダウンだけなら、それなりに出来るんですけど」
「あ〜、まあシフトダウンだけする場面も普通にあるけど、やっぱブレーキをしっかりかけた上で、出来ないとな」
「ですよねぇ、一応理屈は分かってるつもりなんですけど…」
ブリッピングシフトダウン? 何それ? という人に素人説明すると、まずブリッピングっていうのは、瞬間的にアクセルをふかす事をいいます、ブォン!てね。
次にシフトダウンについてだけど、一般的にマニュアル車でシフトダウンする方法は、ブレーキをかけて減速してから、ガチャガチャとシフトダウンします。
対してブリッピングシフトダウンは、ブレーキをかけて減速しながら(速度が高い状態のまま)シフトダウンします。
この時、ブリッピングしてエンジン回転数を上げないとスムーズにシフトダウンが出来ない。
なぜかと言えば、6速で時速60キロの時と、2速で時速60キロの時だったら2速の時の方がエンジン回転数が高いでしょ?
だから時速60キロのまま2速にシフトダウンしたいなら、エンジン回転数を上げてからじゃないとスムーズにシフトダウン出来ないって事なんだよね。
そして、ブリッピングシフトダウンは何のためにやるのかなんだけど、理由は大きく2つ。
1つ目は、高いエンジン回転数をキープ(パワーバンドをキープ)できるから、素早く加速に移れる。
2つ目は、低いギアのエンジンブレーキを使って、より短い時間、短い距離で減速できる。
言ってみればレーサーがサーキットでタイムを出すためのテクニック って事で大体合ってると思う。
以上、素人説明終わり。
いや、説明終わり。じゃなくて、そんなテクニック一般道で必要ないでしょ、誰と競争してるのよ?って考えの皆々様。
違うのよ、ブリッピングシフトダウンはカッコいいだけじゃなくて、安全運転にも繋がるのよ、いやマジで。
ちょっと想像して見て? ツーリング先の広域農道とかバイパス、制限速度が60キロの一般道。
天気が良くて、車の流れも良い、6速60キロで気持ち良い〜なんて走行中。
前方の信号がパッと赤に変わる。
急ブレーキって程じゃないけど、余裕があるわけでもない、そんなタイミング。
ブレーキを強めにぎゅうっとかけて、速度が落ちてきて、ガチャガチャと4速までシフトダウンした所で停止線でストップ。
止まった状態で1速までガチャガチャガチャとシフトダウン。
割と良くある状況でしょ?
別に問題がある訳じゃないけど、止まるまでに1速まで落とす余裕がないのはあまり良くないし、止まってる状態で1速って入りにくいよね。
こんな時、ブリッピングシフトダウンを使うとどうなるか?
6速60キロで走行中、信号がパッと赤に変わる。
ブレーキをぎゅっとかけた瞬間、4速にブリッピングシフトダウン。
4速のエンジンブレーキを使いながら減速してさらに3速にブリッピングシフトダウン。
3速のエンジンブレーキを使いながら余裕を持って減速。
2速-1速とシフトダウンして停車。
どうですか?こっちの方がスマートじゃないですか?
もちろんこの時のブリッピングも無駄にブォンブォンふかしたりしないで最小限で済ませる。
文章で表現するならこんな感じ。
ブレーキをかけてブリッピングシフトダウン。
フォフォ!オォーン… フォーン… カチャカチャ で停止。
余計分かりにくいかな?w
まあ、何が言いたいかって言うと、ただブレーキをかけるだけよりも複雑な操作が必要になるけど、ブレーキ中にブリッピングシフトダウンが確実に正確に出来れば、スムーズに、スマートに、余裕を持って安全に減速出来る場面がきっと増えるはず。
「さて、もうチョイ走る?」
「お願いします」
「行きますか〜」
また3台連なって走り出し、次第にペースが上がっていく。
まあでも、色々ごちゃごちゃ言ったけど、結局のところ…
ガウッ!ガウゥゥーン… 前を行くニンジャが減速し、その車体をバンクさせていく。
(やっぱカッケェ よし俺も…)
ヴォン!ヴォンンンーン…
(お! 今すげぇスムーズに出来た! 気持ち良い〜!)
つまり、そーゆー事。
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