第50話 夏のバイクは最悪?
乗鞍ツーリングから一週間、今日は一人でソロプチツーリングだ
(いや一人でソロってw)
一人ボケ&ソロツッコミをしつつジーンズをはいて革ジャンを
ブーツを履いて玄関を出ようとした所で
「あっ キーがねぇ…」
ブーツのまま取り行っちゃおうかな なんて考えて
「あ〜もう、めんどくせぇなぁ」
今履いたばかりのブーツを脱いで、ドタドタと二階の自分の部屋に戻ってキー持ってくる
キーを忘れた自分がいけないんだけど、こういう出掛けのちょっとした事ってやたらとイラつくのは俺だけだろうか
(暑っつ 汗出てきたわ、やっぱ革ジャンいらんかなぁ… でも山行くしなぁ…)
そんなことを考えながら外に出ると、カッと輝く太陽が一瞬視界を白く染める
「うおー めっちゃいい天気じゃん!」
空が高い
陽光を浴びた緑の草木がやたらと自己主張して、ジリジリと太陽が照りつけ革ジャン越しに肌を焼く
「こりゃとっとと走り出さねーとヤバいな」
グローブとメットを身につけて暖気もそこそこに走り出す
走り出せば、ヘルメットのベンチレーション、革ジャンの胸元や袖口から風が入って涼しくなる
と思ったら大間違い
知らない人の為に言っておこう、夏のバイク乗りは暑さと戦っている
「夏は暑いけど、バイクで飛ばすと涼しくて気持ちよさそうだよねぇ」
「いや全然!クソ暑いから!直射日光、エンジンの熱、アスファルトからの照り返し、そして熱風!」
なんて、テンプレの会話を持ち出すまでもない程に世間に知れ渡っている事だとは思うけど、もしあなたが真夏にバイクに乗ったことがないのなら伝えておきたい
あなたの想像の2倍は暑いから!いやマジで
確かに走行風はメット内や革ジャンの内側を通り抜けているけど、それ言ってみればヒーターの暖房だから、しかもMAXHOTの
まあ、かく言う俺もバイク乗り1年生、初体験、夏、なんだけどね
アオコくさい諏訪湖(夏の諏訪湖はくさいんだよ コレ諏訪湖周辺に住む者のジョーシキね)の湖周道路から上川バイパスへ、この道は信号がないから止まることなく走っていられる、つまり走行風を常に浴びていられるのだ
両側を緑色の夏草に挟まれた川沿いの道、川にかかる橋をくぐって上って、リバーサイドジェットコースターだ
風があるだけマシだけどやっぱり暑い、
おっとそうそう、今日の行き先は上川バイパスからあけぼのトンネルを抜けて白樺湖へ、つまりケンゴとテルと3人で走った極寒夜走りのルート、プラスさらに足を伸ばして車山、霧ヶ峰まで行こうと思っている
いわゆるビーナスラインなんだけど今まで走った事ないんだよなぁ
何でかって? だってそんなトコに用があるわけじゃなし、高原っつーか、山行って何すんの? とか思ってた去年までの俺を張り倒してこう言ってやりたい
バイクで走りに行くんだよ!バイクで走る事が目的なんだよ!バイクで夏の山を走ってみ?超気持ち良いから!!
バイパスを降りてあけぼのトンネル、通称100円道路に向かう道は予想通り渋滞していた
予想外だったのは、この暑さだ
バイクが止まったとたん、嘘のように暑さが増した
「暑ぅ…」
全身から汗が吹き出し、たまらずメットのシールドを上げて革ジャンのジッパーを全開にする、が、効果は無い
(マジかよこの暑さ、この前来たときは寒くて震えてたってのに、どうなってんだよ日本の気候は…)
暑さに耐えながら、ジワジワと進む車たちに続いてトンネル前の料金所に辿り着く
100円玉を叩きつける様に支払いたい衝動をぐっと
知らない人の為に言っておこう、バイク乗りはやせ我慢する生き物なのだ
(
前後を車に挟まれ、牛歩戦術をくらいながらジワジワ進む
半クラを繰り返す左手のスジがすでに痛くなってきた
(握力鍛えに来たんじゃねーぞこんにゃろう… あ〜暑い…とにかく暑い…何℃あんだこれ…)
ここが海なら大歓迎だ、間違い無く海パンいっちょになって海に飛び込んでる
なのに今の俺の格好ときたら
革ジャンにジーンズ、フルフェイスのメットにグローブとブーツのフル装備だ 暑いに決まってる
日差しを遮る物は無い
走行風もない
股の下には熱いエンジン
顔から、背中から、脇から、汗がダラダラ流れる
やたらとブレーキを踏む前の車が不快指数を跳ね上げてくれる
(ぬあ〜… あっ…ちいぞ〜…)
やせ我慢にも限界がある
なんで俺はこのクソ暑い中バイクなんか乗ってんだろう…
夏のバイク? 最悪だよ最悪…
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