第48話 夏ツーリング 乗鞍スカイライン

「さって そろそろ行くか〜」

いつの間にか隣に来ていたクスダさんの声に少し驚いて振り向くと クマガヤさんも近くに居て景色を見ていた

二人とも無事にたどり着いたみたいだ

「登って来れたんすね バイク大丈夫ですか?」

「いや 全然ダメw なあクマガヤ」

「ああ 燃料オーバーフローしちゃってダメだ まいったよ」

「ニンジャは電動ファン回りっぱなし 完全にオーバーヒートだわ 気圧が低すぎるんだろうなぁ もう水温も下がってるだろうし行けると思うけど クマガヤの方はどうよ?」

「ん〜 キャブから燃料抜いたから多分行けると思う 山降りれば元に戻るだろうしな」

「置いてかれても困るし オレとクマガヤ前で様子見させて」

「りょーかいっす」


それぞれに装備を整えて 満車の駐車場と上り車線の渋滞を横目に見ながら走り出す

先行するクスダさん達 バイクの調子が悪い組もなんとか走れているみたいだ

登ってきた時に見た景色を今度は見下ろしながらのダウンヒル

徐々にペースが上がって来ると爽やかな風が吹き抜けて快適そのものだ


頭上からは真夏の陽射しが降りそそぎ 視界に入る物全てを輝かせ

遥か先まで広がった真っ青な夏空が 巨大な入道雲の白さを際立たせる

生命力に溢れる山々の草木は 陽光を浴びて鮮やかな緑の濃淡を描き出し

道路脇に転がる巨石が真っ黒な影を落として存在を主張する


愛機XJR400をあやつり 右に左にバンクさせて乗鞍を駆け下りる

BGMはバイクが奏でるメカノイズとエキゾーストノート

季節は夏 天気は上々

極上の景色と胸躍るワインディングロード

前を行くは頼れる先輩 後ろには気心の知れた友達ダチが続く


そんなの 楽しくない訳がない

そんなの 気持ち良くない訳がない


最っっ高だ。




〜あとがき〜

私は過去に2度乗鞍ツーリングに行ったことがあります それぞれ長野県側からと岐阜県側から登っているはずだけど すでに記憶が曖昧でごちゃまぜになっている自覚がある 昔は乗鞍サンラインとか言ってなかった様な気がするなあ とか 料金所があった様ななかった様な… とかそんな具合である とはいえ鮮烈に覚えている景色があるし 記憶に残っている出来事もある そんな断片的な記憶を繋ぎ合わせてこのお話はできています そこの所をご理解いただければ幸いに存じますです はい

そして当時は気にも留めていなかったけど どうやら乗鞍スカイラインの頂上はマイカーで到達できる日本最高所らしい 

つまりある意味日本一のヒルクライム 日本一のダウンヒルだった訳だ

なるほどそう言われてみれば別格の景色だったしキャブ車の調子が悪くなる訳だ と納得できる

2022年11月現在 乗鞍、上高地周辺はマイカー規制がかけられている

おそらく もう二度と自分のバイクで走れる機会が訪れる事は無いのだろう

私は あの夏仲間と一緒に走った乗鞍の景色を 感じた事を いつまで覚えていられるだろうか


乗鞍スカイライン


今は昔

雲上のスカイロード


幻のツーリングロード


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