第46話 夏ツーリング 先を先を見る

クスダさんの言葉通りクネクネ道が続いた

山間のクネクネ道を走り

硫黄くさい川沿いのクネクネ道を走り

白樺の林の間を縫うように走り

水がビチャビチャ垂れてくる暗いトンネルを走り

デカいダムの横を走る

もうずっとクネクネしっぱなしだ

つまり… 超楽しい! 何だこの道!



クスダさんとクマガヤさんの2人は結構飛ばしてるけど アマイさんは後ろの俺の事を気にしてくれてそれほどスピードを出してはいない だから前との間隔が開いていく 

2人の前に車が居るとペースが落ちて追いつくんだけど 道を譲ってくれたり追い抜いたりでまた2人が先行して また車が居て追いついて その繰り返しって感じで山道を走っていく

アマイさんには物足りないかも知れないけど俺にとっては十分に早いペースだ アマイさんと同じラインを出来るだけ同じペースで走る それがすげぇ楽しい

上手い人の後ろだと安心して走れるし自分も上手くなった気になれる 実際ツーリングに行くたびに上達しているんじゃないかな

ケンゴとテルも当然の様に付いて来てるけどサベージで普通に付いてくるテルはおかしいと思うw

多分俺ら3人の中で一番バイクの運転が上手いのはテルなんだろうな

アマイさんに付いて走ってるだけでどこをどう走っているのかまるで分かっていなかったけど どうやら軽く迷っていたみたいだw ツーリングマップルで確認する為に小休止となった



「サイトウ きっちり付いて来てたじゃん」

「はい アマイさんのおかげで結構いい感じでいけてます」

「1回対向車線にはみ出しそうになってたけどなw」

速攻でケンゴから茶々がはいる

「やっぱ見られてた? でも1回だけだろ はみ出しそうになっただけではみ出してねぇし」

「その1回が命取りだろ? まあ言ってもオレも今まで あぶねっ!って思う場面は何回かあったけどさ」

「長く乗ってりゃあそういう場面は必ずあるよ 1度もないなんて奴はいないんじゃねぇかな」

とアマイさんがフォローしてくれる

「つっても車線はみ出すのはまずいけどな」

「そうなんですけど… こう 自分の予想よりキツイカーブだと やべっ!と思って体が固まっちゃって大回りになっちゃうんですよね」

「ん~ 今走って来た位のペースならスピード出しすぎって事はないから そうだな… 視線が近すぎるとかない?」

「視線ですか?」

「そう 前について走ってると前のバイクばっか見ちゃったり すぐ近くの地面を見ちゃったりしがちだと思うんだよ オレの動きで先を探るのはいいんだけど 視線はカーブの先に向けなきゃダメだぜ?それって出来てる?」

「そう言われると自信ないっす アマイさんのバイクばっかり見ちゃってるかも…」

「それじゃ絶対曲がれんよ? きついカーブほど首をグリンって曲げて先を先を見る様にしないと なんなら体ごと向ける感じでいいわ よくバイクは見た方に進むって言うけどあれってホントの事なんだぜ?」

「そっか 視線かぁ…」

「これって超大事な事だからな? まあ 試してみ? 先を先を見る様にさ そうするとバイクがくるんって曲がる様になるから」

「分かりました ちょっと意識してみます」



アマイさんの後ろについて走りながら自分がどこを見ているか確認すると 指摘された通り俺はすぐそこら辺を見て運転していた

特に上りのきつい左カーブの時なんかひどい物で XJRの前輪の辺りを見ながら走っていた

(全然ダメじゃん俺… 結構いい感じとかよく言えたな 恥ずかしいわ)

道路の先の状況も確認しないでただただ目の前のアマイさんのバイクだけ見て真似をして走ってたって事だ

(そういえば 行きたい方を見ろって教習所でも言われてた気がする… て事は教習所に通ってた頃から成長してないって事じゃん 基本中の基本が出来てないって事?)

「マジか~ へこむわ~」思わず声にでる

(よし 切り替えて行こう 先を先を見る)

アマイさんや足元を視界の端に入れつつ 視線は先へ先へ

この先は緩いカーブ この左は結構きつい ここはS字 カーブの先は結構長いストレート…

意識してやってみてわかったけど 先を見てるつもりが気が付くとすぐその辺に視線が来てしまう でもそれは当然の事で だってバイクで走ってんだから 先を見てもその見た場所がすぐ近付いて来る だから  なんだ

先の状況が分かるとその為の体勢が作れる 余裕が生まれて体から力が抜ける

今まで見ていた足元が見れないのはまだ少し怖いけど 先を見た方が間違いなくバイクが安定する

首をグリッと曲げてきついカーブの先を先を見る と

くるん バイクの向きが変わった

(お! 今のすげぇ良い感じだった)

感覚を忘れないように何度も練習する

(先を 先を …で)

くるん

(この感じだ! でアクセル!)

ヴォォーン!

(さっきまでより全然楽に付いて行ける 先を先を走法 すげえ!)



しばらく練習しながら走っていると 路肩にクスダさんとクマガヤさんが停まっていたから俺達も並んで止まった

「どうしたんすか?」

「いや こっから先は頂上まで1本道のはずだから それぞれのペースで走ろうかと思ってさ つまり飛ばしたい奴は飛ばして のんびり走りたい奴はのんびり走るって事」

「なるほど わかりました」

「サイトウ 無理に付いてくんなよ?w」

「うっ… 分かってます 自分の限界を超えるな ですよね?」

「分かってりゃいいよ」

「 … ケンゴ先行く?」

「弱気になってるしw まあいいけどブっちぎっちゃうぜ~?」

「それはどうかな?ついさっき新たな走りに目覚めたからな」

「何だか分からんけどホントに無理すんなよ? もし分岐があればちゃんと待っててやるから」

「分かりました」

「よーっし じゃあ行こう」







 















  

 

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