第32話 秘密特訓

河口湖ツーリングであまリングを指摘された俺は 自分の運転技術の未熟さに気付いた と言うか

(俺って バイクの才能あるかも?)

とか本気で思っていたのがマジで恥ずかしい

バイクの免許を取ってからコッチ それなりにバイク歴の長いケンゴやテル 更に経験豊富なクスダさんとアマイさん そんな人達に囲まれて くっついて走っていたせいで錯覚してしまっていた 自分も上手くなった様な気になっていた そんな訳はないのに


楽しく走れればいいじゃん?

とか思わなくもないけど どうせなら上手くなりたいし 速く走れるようになりたい 何より ケンゴとテル あの二人に余リングの幅が負けてるのが気に入らなかった 初心者だからとかは関係ない

そう ガキみたいだけど それがものすごく悔しかったんだ!


だから俺は バイクを傾けて走るって事を意識して GW の残りや休日に峠に走りに行く事にした

見てろよ ケンゴ! テル!

秘密特訓だ!

前にも言った気がするけど諏訪周辺には峠が多い

近い所だけでも 遠嶺 勝弦 有賀 和田 杖突 そしてビーナスライン

とは言え 今までの俺は 遠嶺を流すだけで満足していた

そう 今までの俺は

だけど今日からは違う! ガンガン走って余リングを消してやる!

と 意気込んでは見たものの そう上手くは行かなかった


バイクレーサーみたいにバイクを大きく傾ける為にはスピードを出さなきゃいけない

例えばだけど 歩くようなスピードでバイクを大きく傾けようとすれば そのままバタリと倒れてしまうだろう やった事は無いけど多分

スピードに合わせて傾きも大きく出来る ハズ

じゃあスピードを出せばいいじゃん と思うかも知れないけど 速くなればなるほどバイクは傾けにくくなる

これは 車体を直立にしようとする力 真っ直ぐ進もうとする力が大きくなるからだと思う

バイクを傾ける為にはスピードを出さなきゃいけないけど スピードを出すと傾けにくくなる

で 合ってるはず?


だから少しずつスビードを上げて 少しずつ傾きを大きくしてみる これが中々難しい

なぜって スピードを出すと

曲がり切れなかったらどうしよう? とか

傾けた時にタイヤが滑ったらどうしよう?

とか考えてしまうんだ

つまり… 全然出来なかった…

でも考えてみたら教習所の教官は8の字やスラロームでバイクをすごい倒してたよな?

あれ? て事はスビードは速くなくてもいい?

そんな事を考え始めたらどうすればいいのか良く分からなくなってきた…

考えすぎるのは俺の悪いクセだ

俺はクスダさんに聞いてみる事にした


仕事の昼休み

「クスダさん バイクってどうやって傾ければ良いんですか?」

「どうやってって グイッと傾ければ良いじゃんw」

「いや そのグイッとのやり方が分からないんですよ」

「ははっ 冗談だよ でも説明しにくいんだよなあ 正直自分がやりやすい様にやるのが1番だと思うよ? 確かに ハンドルに力入れんなとか ニーグリップしろとか ステップの踏み方がどうとか 荷重のかけ方がどうとか聞くけど それがどんなタイミングでどんくらいの強さでやってるのか そもそもちゃんと出来てるのかなんて本人にしか分からないだろ?」

「まあ…そうっすね」

「それに 人によって乗り方って全然違うんだよ 基本通りにやっても上手く乗れないやつは乗れないし すげぇ乗り方なのに訳分からん位速いやつとかな だから言ってみれば 教習所で教わったのが基本で 後は皆んな自己流なんじゃねぇのかな」

「自分で色々やってみるしかないって事かぁ…」

「オレも最初は全然乗れなかったけど バイク乗り換えたら急に膝すり出来るようになったんだよなぁ だからバイクが合う合わないってのもあると思うしな」

「え? クスダさん膝すりできるんですか?」

「ん? ああ昔の話な 免許取ってすぐの頃は 毎晩ってくらい峠に通ってさぁ 週末なんかは人もバイクもすげぇ集まって ギャラリーコーナーが出来たりしてさぁ」

「へぇ〜! そんな時があったんすね」

「そうそう で 皆んな膝すりに必死になってて 膝に潰した空き缶付けてガリガリ擦って 友達と二人して鬼バンクとか言われたりしてなw  懐かしいわ〜」

「マジっすか? すげぇ!いいな〜 俺も峠走ってみたいっす!」

「いや 走ってみたいって言われてもなぁ」

そこへアマイさんもやって来て

「何の話っすか?」と話に混ざり

「いや サイトウがさ…」


そこからは3人で峠の話で盛り上がり

じゃあ次の休み 峠に行ってみるか という話になった

「うお〜 超楽しみ!」

「でも言っとくけど ツナギ着て目ぇ三角にしてコーナー攻めるとかはやんないからな?」

「いや いいっす 充分っす あ〜 頼むから晴れてくれよ〜」


こうして俺は初めて 早朝の峠に走りに行く事になったんだ













 



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