第31話 GWツーリング その5
やっぱり峠は楽しい!
バイクの一番の特徴はバイクの車体を倒して曲がるって事だと思うんだ
そして それが楽しい!
先を行くクスダさんとアマイさんは 前に車が居れば その後ろをおとなしく走るけど 前が空いたり2車線になるとスピードを上げる 「そんなに飛ばすつもりはない」って言ってたけどそのスピードは多分ケンゴよりも速い
なのに安心してついて行ける
直線は「
この峠のカーブ全部暗記してんの?って言うくらいカーブに合わせたブレーキとスピードで走っていく 速いはずなのに余裕がある みたいな
R20を走ってる時も思ったけど それは峠でも変わらない
二人の真似をして走れば安全な速度で安心して走れるって感じで とにかく楽しい 気持ち良い
バックミラーをチラリと見るとケンゴとテルもピタリと付いてくる 流石だね
河口湖の手前まで車の流れも良くて 飛ばしたり 車の後ろで一息ついたりを繰り返しながら峠を楽しむ
2人に引っ張られてるだけだけど バイクが一気に上手くなった気がする
色んなカーブを ここはこうやって走るんだって教えてくれてるみたいだ
おっ 今のカーブはうまく曲がれた とか 今のはスピードを落としすぎたな とか ちょっと後ろに座ってみよう とか 色々考えて試しながら走るのが楽しくてしょうがない
バイクで峠を走る事を 他の事で例えるなら
スキーやスノボが近いと思う
滑る事が楽しくて 色々考えながら試しながら 転んだりしながら 何度もリフトに乗ってしまうあの感じ
たっぷり峠を堪能してトンネルを抜ける 抜けた先は河口湖だ
湖畔の駐車場にバイクを停めて 自販機で買った冷たい飲み物で喉を潤す
「いや〜 峠楽しいっすねえ〜」
「お んじゃあ帰りはもう少しペース上げるか?」
クスダさんの返事に俺は慌てて
「いや! 同じ位でお願いします!」
「ん そっか まあ今日はのんびり行くかぁ」
「え? あれでのんびりですか?」
「ん〜? 速かったか? まあ直線は瞬間的に70とか出てたかも知れんけど コーナーは大分ゆっくり走ったつもりだぞ?」
俺はちょっとびっくりして
「え?そうですか?結構速かったような…」
「いや〜? スピード出してないのなんてXJRの
「
「タイヤの接地面の両端が色が変わってるだろ?2cm位あるんじゃね?」
XJRのリヤタイヤを見ると
「あ〜 ありますね」
「そこはバイクを倒した時に使ってない 余ってる部分って事だろ? だから余リング 要するにタイヤを端まで使う必要がある様なスピードを出して無いって事だよ」
「余リング!w」
「タイヤ ワンサイズ細くていいじゃん」
すかさずケンゴとテルから突っ込みが入る
俺はムッとして
「じゃお前らはどうなんだよ!」
スパーダとサベージのリヤタイヤ見ると 余リングは5mm位だった
「サベージはタイヤ使う前にステップかブーツ擦っちゃうからなあ」
「マジか!?」
ニンジャとCBはキレイに端まで使ってあった
「まだ免許取ったばっかりだからそんなもんだろ?余リング=安全マージンだしな」アマイさんがフォローしてくれる
「まあ 普通に走ってる車よりは速いペースだったよ」とクスダさん
「うわ〜 じゃあ速いと思って気分良く走ってたのって俺だけって事じゃん…」
「頑張りたまえよ初心者くん」
「まあまあ 楽しいならいいじゃん」
「すぐ上手くなるよ」
「だからって無理にスピード出すなよ コケるぞ」
それぞれにフォローの様な茶化す様な言葉をくれる
(はあ〜 マジか〜ヘコむわ〜…)
「お兄さん達 ツーリング?」
ニコニコしながらおじさんが話しかけてきた
「そうだよ〜」
アマイさんが適当に答えると
「どう?モーターボート乗らない?楽しいよ〜」営業スマイルだ
「モーターボートだってさ どうする?」クスダさんがコッチを振り返る
「へえ?モーターボート?」
「楽しそうじゃん」
テルとケンゴの反応におじさんの目がキラリと光り二人をロックオンする
「そう モーターボート 風切って気持ち良いよ〜」おじさんの声がデカくなる
「ははっ風を切るのはバイクで間に合ってるよ」テルがいなす
「いやいや バイクとは全然違うから」おじさんが食い下がる
「そっか〜 所でおじさんこの辺でオススメのごはん屋さん知らない?」テルがガラリと話題を変える
「え? …ん〜そうだなあ ご飯ではないけど この道を少し戻った右側にある店のほうとうがオススメかな」
「へえ ほうとうかあ」
「それよりモーターボートどう?」おじさんは諦めない
「ん〜 やっぱ今日はやめとくわ ありがとうおじさん」テルが笑顔でキッパリと拒否する
「え? あ…そう じゃあ次来たときは乗ってよ?」
おじさんは次の客を捜す為に歩いていった
「楽しそうとか言っといて乗らないなんて あ〜あ おじさんかわいそうに」クスダさんが笑いながら言う
「いやいや 楽しそうだとは思ったっすよ?乗る気はなかったけどw」
テル対おじさんは テルの圧勝だった
「せっかくだし そのほうとう屋行ってみるか」
「そうっすね〜」
それぞれに立ち上がりバイクにむかう
装備を身に着けてエンジン始動
キュカカカッ ガウウーン!
ニンジャのエンジンがかかると 周りにいた何人かが 「おっバイクじゃん」という感じで振り返る
(へへ〜 ニンジャ格好いいだろう?)
自分のバイクでもないのに嬉しくなる
ゆっくり駐車場を抜けて クスダさんを先頭に道路に出る
5台連なって五重奏を奏でながら走り出す
(余リングかあ〜 ダセェなぁ…帰りはもうちょっとバイク倒してみるかな…)
河口湖からの帰りは来た道をそのまま辿り 今朝集合したおぎのやで解散となり
楽しかったGWツーリングは終わりを迎えた
「ふう〜…」
俺は布団の中で峠を思い出す
(結構倒してるつもりだったのになあ… もっともっとバイクが上手くなりてぇなぁ…)
―― 帰り道頑張ったお陰で 余リングは少しだけ細くなった気がするけど 気のせいかも知れない…
―─ おじさんオススメのほうとうはピリ辛でメチャウマだった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます