第30話 GWツーリング その4

ツーリングを再開した俺達は右手に釜無川を見ながら快適に流していた

左手側は山肌が近いけど前方と右側は遠くの山まで大きく視界が開けていて空も広い

こういう開放感がある道は走っていてとても気持ちが良い 車の流れも良くて言う事なし

なんて思ったのもつかの間

甲府の市街地に入ると 道は片側2〜3車線になり車が全車線にあふれる

1車線の道に慣れている田舎者にはキツい道だ 前後左右全てに気を使わないといけない

バイクで連なって走っていると スペースが空いている様に見えるからだろうけど なかば幅寄せの様な感じでガンガン割り込まれる

俺の真横を走っていたデカい積載車が寄ってきた時にはどうしようかと思ったけど 慌ててクラクションを鳴らすと おっとバイクが居たのか って感じで元の車線に戻っていった マジ勘弁して欲しい

何かしらの運転免許を持ってる人なら分かると思うけど バックミラーは横は見えない だってミラーだからね

真横は目視じゃないと確認出来ない これは車もバイクも同じなんだけど

万一接触した時どっちがダメージがデカいかなんて言うまでもない

前にテルが「バイクがここに居るぞって 音でもアピールしないと危ねぇだろ?」って言ってたのが身を持って分かったよ

俺は車もバイクもどっちも運転するけど

車に乗ってる時は 何だよバイク チョロチョロうぜぇなあ って思うし

バイクに乗ってる時は デカい図体で邪魔なんだよ車 トロトロ走んな 寄ってくんな って思う

けど 今はバイクに乗ってるから やっぱ 車邪魔!って思っちゃうんだよなあ


強引に割り込まれたお返しって訳でもないけど信号なんかで止まったときは車の横を通ってクスダさん達に合流する 止まった位置によってはそのままスルスルと前に出て 先頭車両のドライバーに手を上げて並べば プチシグナルグランプリのスタートだ

信号が青に変わると 幾分アクセルを開け気味に加速する

ガオオオオッ!ヴオオオオッ!

(カーッコ良い〜)

加速した所でまたすぐ次の信号がくるんだけどね

そんな事を繰り返しながらR20を走る


朝方は肌寒くて だんだん暖かくなってきて 今は暑い位だ 甲府盆地は熱が溜まりやすい場所なのか 同じく盆地の諏訪よりもかなり気温が高くて 冬でもスタッドレスタイヤが必要ないし バイクにも年中乗れるんじゃないかな はっきり言ってうらやましい

今も 止まっているとジリジリと陽射しが照りつけてくるけど走り出せば走行風で丁度良い


とは言え渋滞と言っていいほど車は多いし信号で止まってばかりじゃあ嫌になってくる

疲れとイライラが溜まって来た頃 一宮御坂いちのみやみさかでR20を離れてR137から県道708へと繋がる御坂道に入ると クスダさんがコンビニに入っていった

「ふう〜 暑い」

「あちぃなあ」

装備を外しながら出てくる言葉はみんな同じだ

冷たい飲み物を買ってバイクの近くに座り込む

「あちぃし車多いし嫌んなるよ」

「GWですからねぇ」

「すり抜けしなきゃやってられんわ」

「確かに …でもすり抜けって違反じゃないですか?」

「ん?すり抜けすんなって事?」

「いや ほら 一回前の休憩ん時にトラックの追い越しが違反だ って」

「あ〜…あれは 舐めたマネさせんなって言っただけで 違反すんな何て言ってないよ」

「なるほど?」

「例えば…法定速度を1キロもオーバーした事ないなんて奴いると思う? まあ もしかしたら居るかも知れんけどオレには無理だわ だからって違反しても良い とも言わないけど」

「すり抜けは危険だからやめてくれって言うならやらないよ 安全にこした事はないしな」

「いやいいっす 無理そうだったら行かない様にするんで」

「分かった ま こっからはすり抜けも無いだろ 峠に入るしな」

「あ〜 一応言っとくけど 無理に付いてこようとするなよ?自分の限界を超えるとコケるからな? もちろんそんなに飛ばすつもりもないけど いい?」

「わかりました」


さあ こっからは楽しい峠道だ









  


 





 


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