第24話 冬眠の話
「冬の間バイクって どうしとけば良いんですか?」
「どうって 普通に乗ってりゃいいじゃん オレは乗らないけどw」
12月なかば 仕事の昼休み
工場の外の自販機前の休憩スペース
休憩中の話題と言えば今までは車の話やスキースノボの話 後はもちろん仕事の話が多かったけど 俺がバイクに乗り始めてからはバイクの話がメインになっていた
いつも通り俺の質問を冗談で返すクスダさん クスダさんは先輩だけど気さくに話してくれるから会話するのがとても楽しいんだ
「いやいや 俺も乗らないっすよ て言うか雪積もってたら乗れないですよね?」
今朝起きて外を見たら一面真っ白だった
朝方にかけて降ったみたいで今シーズンの初雪にしては量が多くて 会社の駐車場も社員総出で雪かきをしたところだ
車はスタッドレスに替えてあったから良かったけどバイクじゃあまともに走れるとは思えない
「乗れない事はないよ オレも昔は乗ってたし」
「マジですか?」
「チャリとバイクしか移動手段がなかったからなあ だったらバイク乗るだろ?」
「コケる未来しか見えないんですけど…」
「ははっ まあ乗らない方が良いだろうなあ で バイクの冬眠だろ?…結論から言うと ガソリン満タンにしてバッテリー外しとくか ちょこちょこエンジンかけるかのどっちかかな どっちが良いかは分からんけど」
「それだけでいいんですか?」
「ん〜…例えば 大体12月から3月位までバイクに乗らないとして 一番心配なのはバッテリーあがりなんだよ」
「あ〜 そうっすよね 寒いし」
「春になって良しバイク乗るぞって時に エンジンかかりません 充電しても復活しません バッテリー取り寄せ交換 はい2万円 はキツイじゃん だからバッテリーを保護する為に端子を外して待機電力消費を抑えるか 寒さと自然放電も考えてバッテリー外して室内保管 それかたまにエンジンかけて充電するって事」
「なるほど でもガソリン満タンってのは何でですか?」
「ああそれは タンクの中に空間があると 寒さでタンク内が結露して水分が混入したりサビの原因になったりするのを防ぐ為に なるべく空間を少なくするって事 まあホントにそうなるのか効果がどんだけあるかは分からんけど ガソリン満タンにしとく位簡単だろ?」
「確かに だったらやっとけって感じですね」
「後は細かい事言えば バッテリー外しちゃうとエンジンかけれないから冬の間にオイルが下がりきって油膜切れ起こすとか タイヤの設置面が変わらないからタイヤが変形するとか たまにエンジンかけるにしても何分位かけとけば充電の効果があるのか ミッションは動かないし走行風が当たらないからエンジンに良くないとか 単純に暖気中うるさいとか もっと長期ならキャブのガソリン抜いとくとか 気にし始めたらもっとあるだろうけど 結局はどこまでやるかだよな」
「そういう事か〜 結構気ぃ使うことあるんですねぇ」
「バイクの為を考えたら 毎日普通に乗ってるのが一番いいんだろうな だからって冬の寒いなか無理に乗り出してコケたり事故ったりしたらただのバカだしな」
「そうっすね」
「俺のニンジャはマフラー変わっててうるさいからエンジンかけないけど 雪が積もってる中でエンジンかけるの結構良いんだよな 雪に音が吸収されて反響しないで消えてく感じとか 跨がってライディングポジションとったりして ちょっと気分が上がるんだよな 春よ早く来い みたいな?」
「う〜ん 俺はどうしようかなぁ」
「あと冬の間にやる事と言えば カスタムパーツを調べて通販で買っとく んで暖かくなったら取り付け まあ大抵見るだけで終わるけど サイトウはマフラー替えたりしねぇの?」
「いや 考えてはいるんですけどどれが良いか決めれなくて どれも高いし」
「基本バイクのパーツ高いからなあ」
「そうっすよねえ」
「冬の間にバイク熱が冷めるかもしんないしな?」
「いやいや それは無いっすよ!」
「わらからんぞ〜 意外とあるからな 冬の間乗らなくて そのまま乗らなくなっちゃって5年10年と長い冬眠にはいっちゃうって事 きっと冬の寒さにやられてバイク熱が冷え切っちゃうんだろうな」
「俺はそうはならないっすよ 常に最大火力で燃えてますから!」
「いやそれは逆に迷惑だわw 燃え続けるのはしんどいしな だからなサイトウ 火は消えても熱は冷めない
─── 「…だからさ テル 燃え続けるんじゃなくて 火は消えても熱が冷めない熾火にしておけって事だよ そうすりゃあ少しの風でまたすぐ燃え上がるだろ?」
「何それ カッケェ事言うじゃん」
「だろ?」
「で? 誰の受け売りよ?」
「ん?…え〜と…会社の先輩…」
「そんな事だと思ったよ オレもどっかで使わせてもらおw」
…もしも貴方の心に まだ熾火が残っているのなら
もう一度火を点けてみませんか?
ほら丁度 春一番が吹いてきた
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