第20話 初ツーリング その雨宿り

考えたら雨が降る中を走るのは初めてだ

メットのスクリーンについた水滴のせいで少し見づらい 加えてすでに夜と言っていい暗さだ

まだ降り始めだから路面が濡れている様には見えないけど 雨で濡れたマンホールのフタや白線は滑ると聞いているから必要以上に緊張してしまう

だんだん雨が強くなってきて ケンゴのスパーダの後輪が水しぶきを巻き上げるのが見える

このまま行くのか? と思った所でスパーダのウィンカーが点滅し 道路左側の資材置き場の様なデカい屋根の下に滑り込む

俺とテルも続いて スパーダの隣にバイクを停める



XJRを降りてグローブとメットを外す

(…ふう 結構疲れてんなぁ)

テルは俺の隣で同じようにメットを脱いだかと思うと

「ケンゴ〜! 雨じゃね〜か〜!」

と言いながらケンゴに近付いて行く

「いや オレのせいじゃねーだろ」

ケンゴが反論する

そりゃそうだ 雨がいつどこに降るのかなんて完全に予測できるハズは無いし まして雨を降らせるなんて事も出来るハズがない 甘んじて受け入れるしかない自然現象をケンゴという一個人のせいにしようとする理不尽極まりないテルのこの行動は流石さすがに黙って見てはいられない

俺はケンゴとテルの間に割って入り

「ケンゴ〜! 雨じゃねーかー!!」

「だから何でオレのせいみたいに言うんだよ!!」

3人共ニヤニヤしている いたって平常運転だ


「え〜? じゃあ誰のせいだよ~?」

「誰って そりゃあ… …」

「「ほら見ろ」」

「何がほら見ろなんだよ! 大体雨を降らせる能力なんてあったらツーリングじゃなくて 砂漠に雨を降らせに行ってるわ!」


「「行ってらっしゃい」」


「だから 能力があったら って言ってるだろ!」

「え? じゃあ降らせらんねぇの?」

「出来るわけねぇだろ!」

「分かった じゃあ取りえず砂漠のたみにあやまれ」

「そしてオレらにもあやまれ」  

「なんでそうなるんだよ!」

「さて 冗談は置いといて どうするか?」

「そうだなあ どうするか~?」

「いや!切り替え早ぇな!」

「テルどう思う?」

「ん〜 もう少し走れば雨ゾーン抜けるんじゃねぇかなあ?元々晴れ予報だったし」

「なるほど 確かに」

「じゃあさあ…」と喋ろうとするケンゴをオレはすかさずさえぎって

「じゃあとっとと動くかあ 休むにしてもココ 屋根以外なんもねーしな」

「じゃあ…」ケンゴが喋りだした瞬間今度はテルが邪魔をする

「とはいえ雨だし夜だし安全運転でな」

「ああ 了解だ」


「……」沈黙するケンゴ


テルがちらりと俺の顔を見る その顔はにやけている

「まあ こっからなら後2時間位だろうから焦らなくても良い…」

「まあ オレのスパーダなら1時間で行けるけどな!!」勢い良くケンゴが割り込む


「「行ってらっしゃい」」


「そして砂漠の民にあやまって来い」

「エンジン止まらないといいな」


「え?何?オレいじめられてる?」


「…ぷっ」

「はははっ!」

「あはははっ!!」


俺たちは少し元気になった












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