第19話 初ツーリング そのトラブルメイカー

まだ日没まではもう少し時間があるはずだけど すでに隧道は暗かった

俺の前をケンゴが走っているお蔭で道の先の状況がある程度は分かる

直線が続くのか きついカーブなのか ケンゴの動きから予想出来るからだ

(自分1人だったらこのペースで走れる自信はまだ無いなあ…)

そんな事を考えながら走っていると ケンゴがウィンカーを左に出して

非常駐車帯みたいな所にバイクを停めた

俺とテルも続いて停めてバイクを降りる

「どうした?」

「何よ こんな所で」

「いや 何かバイクが調子悪くてさ」

ブ…ル・ルゥーン!ブウーン!

アクセルを開けると 確かにフケが悪い ガス欠寸前みたいな 一発死んでるみたいな

ブ…ル・ルゥーン! ブ…ウーン! ストン…

「あ 止まった」

「おいおい…」

キュルキュルキュルッ… キュルキュルキュルッ…

「やべ… かんねーし」

「おいおい! マジやべーぞ!」


停まった経験がある人は少ないと思うけど すでに暗くなった隧道は結構

いやかなり…怖い ここに比べたら普通のトンネルの方がまだマシだと思う

 

キュルキュルキュルッ… キュルキュルキュルッ…

「待て待て バッテリーが終わったらめんどくせー事になる」

「確かに」

「ガスはみんな入れたからガス欠はねーだろ?」

「あの止まり方は電気系じゃねーかな?」

「プラグコード?イグナイター?良く分からんけどハーネスぐいぐい動かして

リレーっぽいトコ ガンガンぶっ叩いてみ?」


XJRのエンジンを掛けてライトの灯りを向ける

外から見えるハーネスを動かし それっぽい所をぶっ叩く


「頼む 掛かれ」

キュルキュルキュルッ… キュルキュルキュルッ… 

エンジンは掛からない

「うおー マジか…」

「こりゃあ スパーダはここに置いて2ケツか?」

「て事は… サベージに2人か」

「え~ テルの後ろかよ~」

「オレだって乗せたくねぇわ」

「じゃオレがXJRに乗ってカツが後ろで…」

「絶対やだ」

「何だよ我儘わがまま言うなよ~」


「「いや お前だろ!」」 俺とテルが同時にツッコむ


会話が途切れると静寂が訪れる

車も通らず 外には夜が降りてきている

何となく3人共顔を見合わせる


「いや 真面目にどうするよ?」

「ん~ もう一回試して 駄目ならホントに2ケツか?」

「そうだな…」

さっきと同じ様にいじくりまわして 最後にケンゴが

シートを思い切りぶっ叩いてセルを回す

「掛かれ!」

キュルキュルキュルッ… キュルキュルキュルッ… ブゥーン!

「掛かった!」

「よっしゃーっ!」

ブルルーン! ブルルーン!

「よし!フケる!」

「あぶねー!」

「マジ焦ったわ!」

「よしよし 今のうちにとっとと行こうぜ!これ以上のトラブルは御免だわ」


3台連なって再び隧道を走り出す

でもこの時 俺は何となく嫌な予感がしていたんだ

きっとテルもそうだと思う


ケンゴはトラブルを引き寄せる


隧道地帯を抜けると 天気予報をくつがえして 雨が降って来た…


「そう来たか… ほんとスゲーなケンゴは」


俺はメットの中で苦笑した

 














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