第18話 初ツーリング その折り返し

「カツ それ買うのはいいけど どうやって持って帰るつもりよ?」

「どうやってって…」

オレはテルの方に向き直りながら

「あ… そういやバイクだった」

新潟産コシヒカリを使用したせんべいの箱はそれなりにデカい

オレのポケットには大きすぎらぁ って感じだ

「テル〜 何で教えちゃうんだよ 買ってから言ってやろうと思ってたのに〜」

「いや 分かってた分かってた ツッコミ待ちだったから」

「絶対うそだね〜」

「まあ一応テルには礼を言っとこう」

「ケンゴには鳥フンが落ちる呪いを掛けておこう」

と言って手のひらをケンゴに向けて呪いの波動を送る

「おい やめろよ」


建物の外から土産物みやげもの屋に移動して来ていた


…さてそうすると かさ張る物はダメ 形が崩れそうな物もダメ もとより高価たかい物はダメ とは言え新潟・海がらみの物は欲しい…

自然 例のビン入りコーナーに目が行く

1000円以下で 海産物で ポケットに入る

なるほど理にかなっている

「「な?そうなるだろ?」」二人の顔にそう書いてあった

すんなり買うのは面白くなかったけど あまり時間もかけていられない

時刻はすでに15時近い 海の見える堤防の上や公園の芝生でぐでぐでしながら

ここまでのツーリング中の事なんかを話していたら思いのほか時間がたっていた

帰りも6時間位かかるとすれば21時着ってところか


結局みんなして同じ物を買った


「さって そろそろ行くかぁ〜」伸びをしながらケンゴが言う

外に出ると気温が下がる気配を感じた

「ちょっと冷えてきたか?」

「寒くなったらカッパ着りゃあいいじゃん 持ってねぇけど」

「じゃあダメじゃん テルは?」

「俺も持ってない 晴れ予報だったしなぁ」

「だよなぁ」

「まあカッパが無くても 上着の下に新聞紙入れるとすげぇあったけぇよ 昔テルと二人で実証したから なあ テル?」

「ははっ そんな事もあったなぁ」

「でも今日は持って無いんだろ?」

「無い!」

「だと思ったよ」

「じゃあさあ 帰りは違う道で帰らん? 上越の方まわってさあ」

「何が じゃあ なんだよ? まあ オレは良くわからんから2人にまかせるよ」

「上越まわりだとかなり距離が伸びるだろ?」

「そうだけど同じ道帰っても面白くねぇじゃん 長野の辺からちょっと混むかもしれんけど だいじょうだいじょう」


「「良し 来た道を帰ろう」」 俺とテルの声がハモる


「何でだよ!」

「ケンゴの大丈夫ほどあてにならない物は無いからな」

「その通り」

オレとテルは うんうんとうなずき合った

「分かったよ まあ 初ツーリングのカツも居るしな 普通に帰るか」


バイクに戻り 暖気をしながらメットとグローブを着ける

「良し 行こう」

マリンドリーム能生のうを出て 今度は海を右手に見ながら走り出す

来た時は光り輝いて見えたけど 陽が傾き始めた日本海は波も穏やかで落ち着いて見える

時間帯のせいなのか帰路と言う気持ちのせいなのか 少しさみしく感じた

日本海に沈みゆく夕陽は美しく 一見の価値ありと聞くけど流石にまだ時間が早い

そんな事を考えながら走っていると だんだんと体がバイクに馴染んでくる

休憩中に忘れていたXJRの感覚を思い出す

しばらく海沿いの道を走り左折

(バイバイ日本海 また来るよ)

心の中でお別れして気持ちを切り替える ここからは山越えだ


「良し 行くぞ!」 俺は声に出して気合いを入れた






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