第16話 初ツーリング その目的地

海岸沿いの道をバイクで走る

控え目に言って 最高だ

快晴 海風 仲間 そして海

聞こえるのは 風切り音と排気音だけ


気持ち良くない訳がない

楽しくない訳がない


日本海にぶち当たるまで山道を走ってきての このシーサイドロードだ

無駄に日本語英語に変換してしまうくらい気分が上がっている

今 この道を走っている自分の姿 周りから見たら絶対カッコいいはず と自画自賛しながら走る


ほぼ信号が無い快適な海沿いの道を

海水浴場や漁港を横目にしばらく走ると今回の目的地マリンドリーム能生に着いた

駐車場は車で一杯だ バイク用の駐車場もほぼ一杯 慎重にスペースに移動して停めるためにスタンドを出した…つもりだったけど

「うっ スタンドが 」

バイクがぐらりと傾く

とっさに左足をついたけど傾きは止まらない

「うっ くっ うお…」

ガシャ ガシャ…ン

勢いを殺すだけで精一杯だった

「おいおい カツ 何やってんのよ」

「あ〜 あ〜…」

そんな事を言いながらバイクを起こすのを手伝ってくれる

「さんきゅ …いや スタンド出したつもりが出せなくて 思ったより脚が疲れてたんだな…」

(やっちまった〜…はあ…)


「何だよ だらしねえな〜」

「俺なら耐えたな」

「速攻でキズものにされてかわいそうに」

「手が早ぇな〜責任取れよ?」

「こんな皆が見てる中でな〜」

「いや 何の話だよ!」

こんな時は心配や同情されるよりもイジってくれた方がありがたい

二人の気遣いに感謝だ

「まったく カツはヘボいな〜」

「普通スタンド出し損ねて倒すか〜?」

「バイク寝かせて何してるかと思ったわ」


「……」


「バイク支えてプルプルしてて超ウケたわ」

「教習所で教わったん?その停め方」


「いや ちょっとは慰めろよお前ら!!」


「「え? なんで?」」

「…んとに お前らは〜…」

(普通なら立ちゴケして落ち込む所だけど 逆に元気になったわ)


隣のバイクに当たらなくて良かった

XJRを見るとウィンカーやバーエンドに傷はあるけど どこも壊れては無さそうでホッとする

「大丈夫そうだな」

「ああ ちょっとキズが付いたくらいだな」

「よし じゃあメシにしようぜ ハラ減った〜」

「そうだな」

時刻はすでに13時を過ぎている 休憩を挟みながらとは言え約6時間か 疲れる訳だわ


ココ マリンドリーム能生は まあ言って見ればドライブインだ (当時は道の駅とは言わなかった気がする カニ屋横丁はあった様な無かったような)

デカい駐車場と海産物なんかの土産物屋と飲食店 ちょっとした公園もあって 建物の裏は結構広い芝生の広場になっていて 更に奥1.5m位の高さの堤防の向こうは日本海という素敵な場所だ

建物の2階にはキチンとした海鮮が食える食堂が入ってるけど 俺らは1階で どこでも食える様なラーメンをすすっていた

当時は肉ならともかく 高い金出して魚を食いたいとは思わなかった まあガキだったんだろうなあ

「ふう 食った食った」

「外行こうぜ〜」

「いいねえ」


海に面した芝生の広場を歩き 3人で堤防の上に座って海を眺める

気温が上がり陽射しが暑いくらいだけど海風のおかげで丁度いい

「あ〜 気持ちいいわ〜」

「寝れるなコレ」オレはゴロリと横になる

「本気で寝れるわ」

みんな寝っ転がる 男3人誰に気を遣う事も無い

「いやダメだろ 寝返りうったら海に落ちるわ」

「そらそうだな」

「あ〜 でも動きたくない」

「わかる」

「まあ もう少しのんびりしてからお土産見に行こうぜ」

「ああ 前に買ってきてくれたあのマズ… ウマいやつな」

「いまマズいって言ったろ!」

「いや?マズって言っただけだよ?」

「立ちゴケしたくせに」

「それは関係ね〜だろ!」


楽しいツーリングはまだまだ続く








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