第12話 初ツーリング その出発

「よし そろそろ行こうぜ」

おにぎりを食べ終わったケンゴが言う


「あ タバコ火ぃけちった」


「何だよテル~ じゃ俺も一服するか」


「あのなあ お前らいつまでここに居るつもりだよ」

ちなみにオレはタバコは吸わない

むせるし 目ぇ痛いし タバコを吸う意味が分からない


「いや テルが火ぃ点けるから…」


「俺のせいかよ」


「まあいいや しょんべんしてくるわ」


やっぱコーヒーと冷えは近くなるよなあ…

用をたして戻ると2人はバイクに跨って待っていた


「遅ぇーぞカツ 早く行くぞ」


「はいはい わかったわかった」

お前が言うな!という突っ込みを待っている顔だったのであえて言わない

オレはXJRに跨りメットとグローブを身に着ける


「オッケー」


「んじゃ 俺でカツでテルな とりあえず塩嶺えんれい越えて 後ずっと国道だから」


「はいよ~」

ようやくの出発だ


まずケンゴが走り出し 続いて道路に出ようするとテルが先に出て

走ってくる車の進路をふさぐ形で止まり オレが道路に出る時間を稼いでくれた

テルは後続の車に手を上げ礼をしてから追いついて来る

(こういうトコだよな…)


街中まちなかや車間距離が近い時は千鳥ちどり走行が基本だ

互い違いに並んで走る事で視界が広くなり車間距離も確保できるし

信号待ち等では2列縦隊となり車列も短くできる 誰が考えたか知らないけど

頭のいい奴はいるもんだ


塩嶺越え 塩尻峠に向かって走る

免許を取ってからこっち 1人で何回かバイクで走ったが今日は3人だ

ケンゴについて走る 後ろにはテルが居る

ただ3台つらなってバイクで走っているだけ

それだけなのに


楽しい!


何も特別な事はしていない

交差点を曲がり 信号で停まり 道交法を守って ただただ普通に走っているだけ

車と違って走行中に会話も出来ない

音楽やラジオも聴けない

気の置けない仲間とのツーリングとは言え 運転中は完全に一人だ


なのに何故 こんなにも楽しいのか!


Vツインのスポーツバイク ホンダ スパーダ

インライン4のネイキッド ヤマハ XJR

シングルのアメリカン スズキ サベージ


カテゴリーもメーカーも車種も見事にバラバラだ


ブルルルルルルルーン!

ブウウゥゥゥーン!

ダッダッダダダタッ!


三車三様の排気音で三台のバイクが走る


オレはふと小さい頃の事を思い出す

自転車に乗れるようになったばかりのあの頃

自転車に乗っているだけで楽しくて 同じアパートに住む友達と

アパートの周りをぐるぐると走り続けた

1号2号3号と順番を決めて 次はボクが1号ね と順番を入れ替えながら

飽きもせずぐるぐると走り続けた


「成長しねぇなあ オレ」


街中を抜けて塩尻峠に入る 千鳥は解除だ

ケンゴの走行ラインをトレースして 付いて行く

車速が上がり 右に左に弧を描く

ケンゴ オレ テル 3台で連なって走る


「やべぇ 楽しいわコレ」


成長してない? ガキで上等!


バイク位 楽しく乗ろうぜ!


























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