第7話 メンテナンス

今日はクスダさんとアマイさんがバイクのメンテナンスを教えてくれると言うので

会社にバイクで来ていた

バイクに乗るのはこれで2回目だ

通勤時間帯は車が多くて ビクビクしながら乗って来た

やっぱり まだちょっと怖い


「んじゃあ クラッチからやるか ちょっとまたがってみ?」

仕事終わりの会社の駐車場でXJRにまたがる

「レバーの位置が低すぎると操作しにくいんだよ 俺ならもうちょっと水平にするかな?」

「とりあえずスイッチボックスごと緩めて~」

手際よく取り付けボルトを緩めて くいっとレバーを水平にしてくれる

「あ~なるほど 確かに こっちの方がレバーが握りやすいかも」

「クスダさん サイトウにやらせないと」

「あ いけね つい」


オレはこの時 車関係の仕事をしていたので 10代の頃と違って車の整備に関する知識や技術はそれなりにあったし 先輩2人は車のプロで バイクについてもオレなんかより遥かに詳しい


「角度を決めたら ボルト締め付けて」

「はい」

「したら次はレバーの距離な 教習車にもあったろ?」

「えーと…多分」

「この数字が書いてある丸っこいのを回すと距離が変わるんだよ そう言えばサイトウ クラッチどうやって握ってる?」

「どうって こうやって ぎゅっと」

「指4本か じゃあもう一段階近くていいかもな」

「え?普通4本じゃないんですか?」

「俺は人差し指と中指の2本だよ アマイは?」

「俺も2本っすね」

「え?それだとレバーの間に指が挟まって痛くないですか?」

「いや そんなにきっちり握らんし 指先でくいって引くだけだよ」

「だから そこでクラッチが切れる様に調整すんの」

「へえ そうなんですね オレは最後までぎゅっと握って ちょっと離すと繋がる位が運転しやすいんで それだと遠すぎるかな~」

「まあ その辺は人それぞれで運転しやすい様にすればいいんだけど 指先だけでチョイと操作する方が後々いいかもよ? 操作のたびに最後まで握り込んでると疲れるだろうしな」

「そういうもんですか?」

「まあ 最初は操作のしやすさ重視でいいら」

「クラッチが繋がる位置はワイヤーの長さで調整するから 近くしたいならレバーの根元の円盤みたいな奴を緩めて 小さい方を回して 締めてくと遊びがデカくなるから切れるのが遅くなる つまり繋がるのが早くなるって事 あんまり締めすぎるとクラッチ切れなくなるからな その辺はわかるだろ?」

「はい だいじょぶっす」

「で 円盤を締め付けて終わり 遠くしたい時は逆な」

「レバーの距離を変えるとワイヤーの長さも変わっちゃうから 順番としては 角度 距離 長さ(繋がる位置)な」

「クラッチが繋がる位置はエンジンかけて実際にやってみないと分かんないけどね」とアマイさん

「そうゆう事」

「角度と距離がオッケーなら ニュートラでエンジンかけて」

「はい」

「したらバイク立てて クラッチ握って~ フロントブレーキかけて~ 1速入れて~ んでじわっとクラッチレバーを離してく」

「クラッチが繋がるとバイクが進もうとするから 分かるだろ?」

「はい」

「繋がる位置が気に入らなければ ワイヤーの長さを調整して の繰り返しな」

「なるほど~」

「この調整だけで 発進のしやすさが全然変わるからな」


「んじゃ 次はシフトペダル行くか」

「シフトペダル?」

「そうだよ 足乗っけた時につま先がペダルを踏んでるようじゃ危ないからな」

「シフトロッドのここがダブルナットみたいになってるから長さが変えれるんだよ で 長さが変わると ペダルの位置がかわる と」

「足を自然にステップに乗っけた時に当たらない位がベストかな 下げすぎるとシフトアップの時につま先が入れにくくなるしな」

「おお~ すげえ 全然違う」

「この2か所調整しただけでも だいぶ乗りやすくなるんじゃねえかな」

「あー だから納車の時… 何かおかしいと思ったんだよな~」

「いや あれはサイトウが下手くそだっただけだろ」

2人同時に突っ込まれる

「ひでぇ! いや下手くそなのは事実だけど もうちょっと言い方が…」


その後もブレーキレバーの角度と距離

アクセルの遊び

リヤブレーキペダルの位置調整 等

丁寧に教えてもらった


「バイクってちょっとした事ですげぇ変わるから 乗ってみて気になるならまた調整すればいいよ もう自分で出来るだろ?」

「はい だいじょぶっす」

「んじゃ 一服するかぁ〜」

「あ じゃあオレおごりますよ 2人共ショート缶でいいですか?」

「お いいの?」

「わりぃね〜」

ウチの会社ではダイドーブレンドコーヒーの事をショート缶と呼んでいた

オレは近くの自販機に行って ショート缶を2つ買った

「さて オレは何にしようかな」

いつもなら量が多いアメリカンコーヒーか 激甘のMコーヒーにするんだけど…

ちょっと考えて ショート缶のボタンを押した


「おまたせです」

「お さんきゅ」

「さんきゅ」

「そういやあ 納車の時も思ったけど そのショットのライダースカッコいいじゃん」

「え?コレってSchott(すこっと)じゃないんですか?」

「いやそれでショットって読むんだよ 有名なメーカーだぞ」

「え?そうなんですか?コレ テルがくれて で メットはケンゴが」

「ちなみにショウエイも一流メーカーだぞ?」

「マジすか!?今度もっとちゃんとお礼言っとこ」

「革ジャンなんかは一生モンだからな〜」

「ブーツもそうだけど革が馴染んでくると自分の形になってくんだよ ミンクオイル持ってる?」

「雨で濡れた後とかほっとくとガビガビになっちゃうし オイルが抜けるとカスカスになっちゃうからなあ」

「革製品は気ぃ使ったほうがいいよ これもメンテナンスだな」

「いや~知らない事ばっかだな~」

「だんだん覚えてけばいいだろ」

「また色々教えてください」

「俺らに分かる事ならな」


「ありがとうございました オレ ちょっと乗って来たいんで いいですか?」

「はいよ」

「ああ 気を付けてな」

「はい すんません お先です」


自分好みに調整した事がどれだけ効果があるか楽しみだ…

オレはわくわくしながら走り出した









































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