高校最後の夏、甲子園を目指す 殺戮オランウータン編

@dolphinzero

最後の夏

甲子園。それは高校球児なら誰もが望む舞台。そんな中僕———蛇川寿人が所属する京都三高校野球部は決勝まであと1勝まで迫っていた。

 決勝戦はシーソーゲームとなり、9回表が終了した時点で3対4のビハインド。打順は9番から。僕は6番に座っているので回ってこない可能性が高いんだろうな、と思った。

「おい、お前ら!俺に回せーー。俺に回せば必ず打ってやるー」

 しかし、ベンチからの必死の声援もむなしくツーアウト。もうここまでか……しかし、ここから2番長嶋、3番王が連打でつなぎ、4番原がフォアボール。なんと2アウト満塁。運命の女神はどちらに転ぶのか全く分からない展開となった。

 そして5番、猫田。

 ここで向こうの監督が出できた。ピッチャー交代だろう。

「投手交代。ピッチャーオラン」

 そして背番号18をつけたピッチャーオランが出てきた。しかし、どう見ても人間の顔をしていないのだ。人間とは違ったおぞましい生き物。そういう風に俺には見えた。

「よし、俺がこの試合を決めてきてやるにゃ。87浪して身に付けた打撃センスを見せてやるにゃ!」

 猫田もここにきてのビックチャンスにテンションが上がっているのだろう。意気揚々とバッターボックスに向かっていた。

「いや待て、猫田っ」

俺が叫ぶもむなしくピッチャーの投げた球は猫田の胸部を貫通していた。

「うにゃ―――」

「大丈夫か猫田っ」

 もう駄目だということは医学に詳しくない俺でもすぐに分かった。

「おい、蛇野……聞いてくれ、俺はデッドボールで出塁したぜ……ガクッ……」

「猫田――――」

 だが泣いてばかりはいられない。俺はバッターボックスから猫田を蹴り出し、バッターボックスに入った。

「ウォォォォォ」

 向こうが振りかぶって球を投じる。俺は猫田の分まで打たなくちゃいけないんだ!

「もらった———」



 試合は5対4でサヨナラデッドボールで京都三高校が甲子園大会出場の切符を手に入れ、2人がこの大会において尊い犠牲となったのだった。


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