こちらの私訳シリーズはいつも美しき読書体験と心地良さとを喚起させてくれます。現代語訳に訳されてようやく僅かばかり理解するに至る私のような読者にも、桜梅草子への扉を開いてくださる。訳してもらえなければ一端も知りえなかったはずです。
「一定度の潤色を施した」とあります通り、原書を参照したとて得られない体験がここにあるのだと感じました。過去の美しい言葉が工藤さんの現代語訳により、令和の我々にも把握できる形で届けていただけることを貴重に思います。
情景や描写が美しく、胸の内が清く澄み、桜吹雪のなかを往くような心地に浸れました。